正しく数字を分析することで見えてくる「本当の日本の未来」とは(2)

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 統計学を駆使し、未来の日本を予測する『未来思考 10年先を読む「統計力」』(朝日新聞出版)。本書は「少子化」「都市化と労働問題」「大地震」など様々な社会問題を題材として、その問題の本質を解き明かす一冊だ。
 そんな『未来思考 10年先を読む「統計力」』の著者である神永正博さんへのロングインタビュー第2回となる今回は、今話題の「ベーシック・インカム」の議論や「大地震が起こる確率」、そして民主党の目玉政策である「子ども手当」てなど、気になるトピックについて聞いてみた。 (→インタビュー第一回はこちらから!
(新刊JP編集部/山田洋介)


◇  ◇  ◇


■「ベーシック・インカムは労働問題に有効」

―この本では「少子化」「都市化と労働問題」「大地震」などを、統計学をベースに、人口学、経済学、地震学等の知識情報を用いながら、日本の問題点を追及する形式になっています。執筆を進められていて、特に“これは世論と違う”と思われたのはどういう点でしょうか?

神永「一番意外だったのは、地震の確率です。私は、東京一極集中の最大のリスクは、関東大震災級の地震が近いうちにくることだと思っていました。
都市化の話を書いた後に、地震で東京が壊滅するのではないか、と予想し、論文を調べ始めたわけです。
そうしているうちに瀬野さんの論文に行き当たり、昔勉強した地震学の教科書を引っ張り出して、論文と突き合わせてみました。僕が勉強した地震学の知識はだいぶ古くなっていて、最先端の地震学の結果を勉強しなおす必要があったのです。そこでだんだんわかってきたのは、どうも僕が思っているほど、ここ20年程度の東京壊滅のリスクは高くないぞ、ということです。そこが一番びっくりしましたね。」

―「少子化」の項で、過去にルーマニアがとった人口増大政策を一例として挙げていますが、現在民主党が提案している「子ども手当」は、少子化対策に効果があると思いますか?

神永「一時的なものであれば、効果はほとんどないのではないでしょうか。金額にもよるでしょうが、数十年単位で継続するのであれば、若干の効果はあると思います。
本書では、東西ドイツの例を挙げていますが、重要なのは『安定性』で、いつ終わるかわからないような不安定な制度ではだめだろうと思いますね。
ただ、これは個人的な見解ですけれども、政府が子どもを何人持つかというような個人の生き方に、そういう形で介入するのは、あまりよいことではないように思います。」

―「労働問題」の項で、非正規雇用の増加とその経緯、そして労働格差に関して言及していますが、前作にもある通り、小泉改革が格差を拡大させたわけではありません。しかし、非正規雇用は確実に増加しています。この解決策の一つとしてベーシック・インカムを導入すべきとの声もあがっていますが、これに関して、どのようにお考えでしょうか?

神永「非正規雇用の話もそうですが、今のまま進むと、日本が立ち行かなくなるのはほぼ時間の問題だと思います。今後、仕事を求める人の多くに仕事が与えられなくなる可能性は予想以上に高く、思い切った解決策が必要になるのではないかと推測されます。
そんな中、ベーシック・インカムは有力な解決策の一つだと思います。ベーシック・インカムというのは、誰でも一律に生活可能なだけのお金がもらえる制度ですね。生きているだけでいい。子どもが生まれたらその分増える。子ども手当とは違いますが、ここでは同様の効果が得られるでしょう。少子化も解消されるかもしれません。
誰でも一律ですから、給付の条件などを審査する必要がなく、行政的な負担は非常に小さなものになります。ここはとても重要なポイントです。
ただ、これで人間が皆幸せになるかというと、これはまた別問題ですね。
本書でも、“相対的はく奪”(※編注:人並みの生活ができない状態を示す概念のこと)の話が出てきますけれども、ようするに人間は『人並みの暮らしがしたい』という欲求を根源的に持っていて、社会全体が豊かになっても、やはり苦痛を感じる人はある割合で存在し、しかも彼らの苦痛は、途上国ですごく貧しい状態で感じる苦痛と大差ないのかもしれないのです。
価値観の大転換を迫られますから、ほとんどの人はすぐに納得できないでしょう。その摩擦がどの程度なのかも未知数です。このような気持ちの問題は、長い時間をかけて考える必要があります。ベーシック・インカムは、最も議論の価値あるアイデアのひとつですが、私自身、じっくり考えてみたいと思っています。」

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