リヨンがチャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦でレアル・マドリーを退け、準々決勝にコマを進めた。

 7シーズン連続で決勝T進出を果たしているCL“常連”のリヨンだが、ここ3シーズンは1回戦の壁を破れずにいた。過去2シーズンの1回戦の相手は、マンチェスター・ユナイテッドとバルセロナで、いずれもその年の優勝チーム。今季も抽選で“新銀河系”を引き当て、またしてもクジ運の悪さを見せた。

 しかし、レアルが相手と決まったときのリヨンの反応はそこまで深刻ではなかった。過去の対戦成績が2勝2引き分けと相性がよかったこともあり、主将のクリスも「勝算はある」と語っていた。もちろんグループリーグでの対戦と決勝Tでは異なるのも承知のうえだ。

 ファーストレグはホームで1―0と最少スコアながら先勝した。ただし、昨シーズンの1回戦で、バルセロナを相手にホームでのファーストレグを1―1で引き分けたものの、セカンドレグでは5―2と叩きのめされた苦い記憶がある。

 スペインではこの記憶が楽観に結びつき、報道陣、そしてマドリーの選手たち自身も、セカンドレグで“格下”のリヨンに圧倒的な力の差を見せつけてベスト8進出、というシナリオを描いていた。

 しかしファーストレグで手応えをつかんでいたリヨンの選手たちは、相手が“格上”という意識はあったにせよ、チャンスがあることを信じていた。翌日のレキップ紙に載った選手たちの談話からそれがうかがえる。リヨンの選手たちは、口々に「〜ことはわかっていた」という話し方で試合を振り返っている。

 まずレアルが序盤に先制し、圧倒的にボールを試合した前半について。「相手が立ち上がりから猛攻を仕掛けて来るのはわかっていた。でも、90分間それが続けられるわけではないこともわかっていた」(マクーン)。

 「試合前から、先に1点とられても、パニックにならずに自分たちのプレーをしよう、と話し合っていた」(ゴヴ)という。というのもリヨン側には“アウェーゴール”というアドバンテージがあったからだ。「たとえ0―2にされても、1点返せば突破できることはわかっていた」(マクーン)。

 リヨンは前半のレアルの猛攻を何とか耐えた。26分にGKロリスがイグアインに抜かれた決定的なピンチは、シュートがポストに当たるという幸運が救ってくれた。このときリヨンの選手たちは「試合はまだ動く」(レヴェイエール)と感じていた。

 後半からピッチに入ったシェルストレームは、「前半を0―1で終えられたのが、この試合のポイントだった」と振り返る。セビージャを相手に接戦を演じたばかりのレアルが「後半バテてくるのはわかっていた」(マクーン)こともあり、「こっちが1点入れさえすれば、相手は2点返さなくてはならなくなる。チャンスは必ず来るとわかっていた」(レヴェイエール)と冷静に後半を迎えた。そして思惑通り、試合の展開をがらりと変えることに成功した。

 リヨンがこれまで1回戦を突破できたのは、2004年〜2006年の3シーズンのみ。その相手は、レアル・ソシエダ、ブレーメン、PSVアイントホーフェンで、決勝Tでレアル・マドリーほどのビッグクラブを破ったのは初めてだ。リヨンにとってはまさに歴史的な勝利となったが、この殊勲の陰には、試合の流れを読んだ選手たちの冷静さがあった。