難病の母を背負い毎日出勤&商談、周囲のサポートで「業務に支障なし」。

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“親孝行”は子どもにとって永遠のテーマ。「亡くなってからでは遅い。今のうちに親孝行をしておくように」とはよく言われるが、だからといって「どのような孝行をすれば良いのかわからない」というのが、多くの子どもたちの本音かもしれない。先日、中国では、河南省に暮らすある男性の“親孝行”が話題となった。少し変わった“親孝行”の仕方に賛否は分かれているが、当の本人たちは幸せな生活を送っているという。

中国紙鄭州晩報によると、李平恒さんは不動産会社を経営する39歳の男性。毎朝6階の自宅から母親を背負って出勤するのが日課だ。自宅マンションにエレベーターはなく、階下までは休みを挟みながら階段を下りている。

李さんのこうした生活が始まったのは今から5〜6年前のこと。母親は今年で75歳になるが、1994年にパーキンソン病を患い、不自由な生活を強いられるようになってしまった。夫に先立たれた後、母親の症状はさらに悪化し、ほとんど身動きができない状態に。そして、そんな母親を不憫に思った息子の李さんが思い付いたのが、母親を連れて出勤することだった。

李さんはいつも病気で横たわっている母親を見て「身体に良くない」と判断。母親を連れて出勤するだけでなく、会社の顧客と会いに行くときも母親を背負って出向くという。李さんは当初、顧客がこんな自分たちを受け入れてくれるか心配していたそうだが、幸いにも支持してくれる人が多く、これまで問題なく業務をこなしている。社員も李さんと母親をさまざまな面でサポートしてくれるそうだ。

こうした一連の行動について李さんの姉は「兄弟の中で彼が一番親孝行ですよ」と語る。かつて母親は兄弟の家を順番に回って過ごしていたが、李さんと過ごすときが一番心地良かったようで、今は李さんの家が中心に生活。夜中に母親が呼べば、李さんはすぐに目を覚ますそうだ。

ある社員は「最初は皆驚きましたよ」と、やはり戸惑った時期もあるらしい。しかし、理由を知った社員は納得。毎朝8時に出勤するだけでなく、退社時間後に母親を一度家に連れ帰り、その後、また会社に戻って残業する李さんの姿に、敬服しているという。こうした生活に不平不満を一切こぼさない李さんは、社員にとっても尊敬できる頼もしいリーダーであるようだ。

この“親孝行”の話題が中国メディアで伝えられるや否や、多くの中国人から激励の声や、称賛する声が各所で上がった。しかし同時に「なぜ家政婦を雇わないのか」「母親にとってこうした生活は辛いのではないか」とその対応に疑問の声も。これに対し李さんは「このようなやり方が母親にとって一番良いと思う」と、自らの行動を変える気はない意向を示し、外に連れ出すことは「母親の願いでもあった」ことも明かしている。

また、家政婦については「身体の面倒は見てくれる。けれども心のケアはしてくれないかもしれない」。李さんの経済力ならば3人の家政婦を雇えるそうだが、周囲の助けを得ながら、今後も李さんなりの形で“親孝行”をしていくつもりだ。