3日の国際Aマッチデーに行なわれたスペイン戦で0―2といいところなく敗れたフランス。翌日の地元レキップ紙は一面に「別世界」との見出しを掲げ、W杯開幕100日前で絶好の仕上がりぶりを見せるスペインと、いっこうに調子の上がらないフランスの明暗を強調した。

 同紙はこの試合のフランスを「才能も、意欲も、チームとしての一体感もなかった」と酷評している。唯一MFのグルキュフ(ボルドー)に意欲と工夫が感じられたとしているが、凡ミスが多く、超一級のレベルとは言いがたい。

 中でも不振が深刻だったのがアンリ。バルセロナでも1月末から控えに回っているが、アイルランド戦(昨年11月、W杯予選プレーオフ)のハンドで世界的に叩かれた精神的ショックが「じわじわと影響をおよぼしている」(レキップ紙)のか、あまりに精彩を欠いた。試合前日の記者会見で「やはりセンターがいい」と語り、この時期になって左サイドというポジションに違和感を表すなど、迷いが感じられる。

 その左サイドには、リベリ(バイエルン・ミュンヘン)がこだわりを見せる。監督に直談判までしたと言われるが、この日も最初は右サイドでの起用。両サイドとも自分のポジションに納得できないままプレーしているとしたら、結果につながらないのも当然だ。

 皮肉にも、試合の終盤、アンリをゴヴ(リヨン)に、リベリをマルダ(チェルシー)に、アネルカ(チェルシー)をシセ(パナシナイコス)に、と攻撃陣を入れ替えたところで、ようやくチャンスが生み出せた。大幅な刷新には時間がないが、選手起用や陣形に柔軟性をもたせるのが唯一の解決策だろう。

 またつねに結果が悪いにもかかわらずドメネク監督が起用するエスキュデ(セビージャ)が、またしても失点の直接の原因となった。初代表のシアニ(ボルドー)をこの時期にスタメンで起用したのも、センターバックの人材不足というフランスの弱点を表している。たとえばドメネク監督がメクセス(ASローマ)のような人材を辛抱強く起用して育てていかなかったのは、自らが招いた災いと言えないだろうか。

 ドメネク監督は試合後、この試合で得た教訓を問われると「スペインがW杯の真の本命だということを確認できた」と他人事のようなコメントを残している。敗戦は相手が強すぎたのだから仕方ない、とでも言わんばかりだ。スタッド・ド・フランスには、この日も「ドメネク辞任!」のコールが鳴り響いた。

 フランスサッカー連盟(FFF)のエスカレット会長もドメネク監督について、「ブーイングはもはや恒例。しかし結果が出ない。それが問題だ」と顔をしかめる。現在FFFはW杯後の後任監督探しに忙しく、大会前には指名すると公言している。サポーターも協会も“W杯後”に期待しているような状況では、選手に覇気がなくなるのも無理はない。