帝国データバンクは、2010年度の雇用に関する企業の意識について調査を取りまとめ発表した。調査期間は2010年2月17日〜28日、全国2万1,750社を対象に実施し、有効回答企業数は1万624社(回答率48.8%)だった。同調査は2005年2月、2006年2月、2007年2月、2008年3月、2009年2月に続き6回目となる。

採用意欲が高い業界は、内需関連業界と復調の製造

 2010年度(2010年4月〜2011年3月入社)の正社員(新卒・中途入社)の採用状況についてきいたところ、「増加する(見込み含む)」と回答した企業は1万624社中1,519社(14.3%)で全体の1割強にとどまった。ただし、2009年度見込み(2009年2月調査)の11.2%と比べると3.1ポイント増加している。
 業界別では、『農・林・水産』(同25.6%、10社)や『小売』(同16.7%、73社)、『建設』(同15.9%、242社)といった内需関連業界とともに、外需を中心に景況感が復調している『製造』(同15.5%、464社)が全体を上回り、正社員の採用意欲が高い。
採用予定企業半数に














 正社員雇用を増加させる企業からは、「最近はレベルの高い人材が応募してくるようになり、今がチャンスなので採用を増やしたい」(ねん糸製造、石川県)、「40年ぶりに新卒を採用。中小企業にはこのような時しか新卒で優秀な学生は来てくれないため、今年と来年で将来の中核になる社員を採用する予定」(鉄鋼・同加工品卸売、千葉県)といった積極的意見も多い。
 これまで新卒や優秀な人材の採用が困難だった企業では、この時期に人材を確保したいと考えている様子がうかがえる。

 また、「製造、生産技術、研究開発の中核を担う技術者が高齢化し、即戦力化を期待する中途採用と将来の技術担保のための新卒採用を今後数年間は積極的に継続する」(鉄鋼・非鉄・鉱業、東京都)といった、高齢化や団塊の世代の退職増加をにらんで、将来の会社を担う人材の確保や職人の技術の継承を挙げる企業も多い。

「採用予定なし」企業が多い不動産、卸売業界
 一方、「採用予定なし」は同47.5%(5,050社)と5割に迫っており、厳しい経営環境のなかで、企業の採用意欲は深刻な状況が続いている。過去5回の調査では、雇用環境の改善が続いていた2005年度が21.2%、2006年度が25.5%、2007年度が25.2%であった。サブプライム問題が拡大していた2008年度には30.4%と増加、世界同時不況の影響を受けた2009年度は45.9%へと急激に悪化、2010年度は前年度をさらに1.6ポイント上回り、調査開始以来最悪の47.5%となった。

 業界別では、『不動産』(同62.0%、170社)や『卸売』(同55.7%、1,862社)などが5割を超えた。とりわけ、『不動産』は10業界中4年連続で最も高くなっており(『その他』を除く)、正社員採用の厳しさが際立っていた。

 企業からは、「景気回復の見通しがはっきりしないなか、新規採用は望めない」(運輸・倉庫、福岡県)や「今の仕事量では採用を増やすことは考えられない」(印刷、香川県)、「現在の雇用を守るので精一杯」(化学品製造、鳥取県)など、仕事量が依然として少なく、景気の先行きが見えないことで採用を抑制しているという声が多く挙がった。

「正社員の過剰感、派遣問題で手控えなど、非正社員雇用の「採用予定なし」が6割に迫る
 2010年度の非正社員(派遣社員、パート・アルバイトなど)の採用状況について尋ねたところ、「増加する(見込み含む)」と回答した企業は1万624社中657社、構成比6.2%となった。一方、「採用予定はない」は同57.0%(6,056社)と2年連続で6割近くにのぼり、非正社員の採用状況は依然として厳しい。

 企業からは、「景気の見通しがはっきりするまで、できるかぎり非正社員で対応」(電子部品製造、東京都)といった景気の先行き不透明感によりまずは非正社員での雇用確保を考える企業は多い。しかし、「正社員の過剰感が無くならないかぎり、非正社員の雇用は控える」(ソフト受託開発、東京都)や「仕事が増えれば残業でこなす」(化学品製造、富山県)など、仕事量が減少するなか現在いる社員の雇用確保を優先し、残業などで対応するとの声も。一方、「製造派遣の問題があり、直接雇用の契約社員を検討」(機械製造、長野県)など、法的な環境変化への対応を考えている様子もうかがえる。

正社員比率、「上昇する」企業は11.7%
 こうした状況下、2010年度の正社員比率は、「小売」「運輸・倉庫」で低下、一方、大企業では上昇気味だ。2009年度と比べて「低下する(見込み含む)」と回答した企業は1万624社中1,358社(12.8%)で、「上昇する(見込み含む)」(同11.7%、1,244社)をわずかに上回った。

 「低下する(見込み含む)」と回答した割合を業界別にみると、『小売』(同16.5%、72社)や『運輸・倉庫』(同14.8%、58社)が高かった。
 「上昇する(見込み含む)」を規模別でみると、『大企業』(同13.0%、332社)が『中小企業』(同11.3%、912社)よりも高く、業界別では『農・林・水産』(同17.9%、7社)や『製造』(同14.0%、420社)が高かった。

正社員比率の上昇要因、「業容拡大への対応」が42.0%で最多、「業績低迷による非正社員の削減」は21.5%へ減少
 2010年度の正社員比率が「上昇する(見込み含む)」と回答した企業に対して、その大きな要因を聞いたところ、「業容拡大への対応」が1,244社中522社(42.0%、複数回答、以下同)で最多となり、2009年度見込み(31.6%)から10.4ポイントの大幅増加となった。一方で、「業績低迷による非正社員の削減」(同21.5%、268社)は第2位に挙げられているものの、2009年度見込み(36.5%)より15.0ポイントの大幅減少となっている。実体経済が依然として厳しい状況にあるなか、正社員比率の上昇要因としては“非正社員の削減”から“正社員の採用増加”へと変わりつつある。

 正社員比率が上昇する背景としては、「優秀な人材が採用できるときには正社員として積極的に採用する」(飲食料品製造、東京都)など、現在の雇用環境だからこそ優秀な人材を正社員として採用するという声が多く聞かれた。また、「新規事業として太陽光発電設備に取り組んでいるため、今後の展開も含めて正社員を募集する」(建設、愛知県)といった新規事業への参入や業容の拡大による正社員採用の増加を指摘する企業も多かったほか、製造業派遣について「派遣法改正にともない製造派遣を正社員として受け入れる」(電気機械製造、大分県)などの声も挙がった。

 前年まで多数を占めていた「売上高の減少により非正社員の削減を行った結果」(鉄鋼・非鉄・鉱業、福岡県)といった、業績悪化にともない非正社員を削減するために相対的に正社員比率が上昇するという声は減少した。ただ、「仕事がある程度みえてこないと零細企業は正社員を雇用しない」(電気機械製造、群馬県)など、企業に正社員を増やす余地が少なく、臨時の非正社員に頼らざるを得ないという声も挙がっている。

雇用調整、「すでに実施した」企業は22.1%、「今後検討する」企業も12.2%に
 リーマン・ショック後の景気後退を背景とした雇用調整の実施状況について聞いたところ、1万624社中2,349社(22.1%)の企業が「すでに実施した」(複数回答、以下同)と回答し、2割超の企業がすでに雇用調整を実施していた。また、「現在、実施している」は同14.7%(1,567社)となり、3割以上の企業が現在までになんらかの雇用調整を実施していた。
さらに、「現在は実施していないが、今後検討する」と回答した企業も依然として同12.2%(1,293社)あり、今後も雇用調整を実施する企業が拡大することが懸念される。「実施する予定はない」は同43.9%(4,663社)となった。

 「すでに実施した」を業界別でみると、『製造』(同32.2%、966社)や『不動産』(同24.1%、66社)、『運輸・倉庫』(同23.5%、92社)が高い。「現在、実施している」は、『製造』(同20.0%、599社)と『サービス』(同15.4%、225社)が全体を上回っている。「現在は実施していないが、今後実施を検討する」は、『建設』(同16.4%、249社)や『運輸・倉庫』(同14.0%、55社)、『サービス』(同13.8%、202社)、『小売』(同12.8%、56社)など、内需関連の業界で今後の雇用調整の実施が検討されている。

雇用調整方法、「中途採用」「新卒者採用」の削減・中止が1位と2位
 雇用調整を「すでに実施した」「現在、実施している」「現在は実施していないが、今後実施を検討する」のいずれかを回答した企業に雇用調整の方法について聞いたところ、「中途採用の削減・中止」が4,883社中1,793社(36.7%、複数回答、以下同)、「新卒者採用の削減・中止」(同35.7%、1,741社)、時間外労働時間の削減などの「残業規制」(同33.3%、1,627社)となった。さらに、「非正社員の再契約中止・更新拒否・雇い止め」(同27.0%、1,318社)や「正社員の解雇」(同18.8%、919社)が続いている。

 雇用調整の実施状況別にみると、順位は異なるものの4位までは同じ項目であったが、「現在、実施している」企業では「休日の増加」が第5位。また、「現在は実施していないが、今後実施を検討する」企業では、今後の雇用調整の方法として「配置転換・出向」や「所定労働時間の短縮」が高くなっており、間接的にマンパワーの削減を実施する企業が徐々に高まる可能性がある。

雇用調整助成金、現在までに18.6%の企業が利用、今後は14.2%が検討
 雇用調整助成金の利用状況は、1万624社中1,430社(13.5%)が「(現在)利用している」と回答した。「(過去)利用していた」(同5.1%、540社)と合わせると同18.6%の企業がこれまでに雇用調整助成金を利用していた。また、「(今後の)利用を検討している」は同14.2%(1,510社)となり、雇用調整助成金の利用がさらに拡大することが予想される。

 業界別にみると、「(過去)利用していた」「(現在)利用している」ともに『製造』が最も多く(それぞれ同12.5%(376社)、同23.6%(708社))、合わせて同36.1%の企業が現在までに利用していた。「(今後の)利用を検討している」は『建設』(同20.7%、314社)が最多となっている。

雇用環境の改善時期、2011年度以降を見込む企業が50.8%
 自社の属する地域・業界の雇用環境が改善する時期はいつ頃になるかという質問では、「2011年度」と回答した企業が1万624社中2,420社(22.8%)で最多となった。次いで、「長期的に改善する見込みはない」(同22.6%、2,401社)、「2012年度」(同18.8%、1,999社)、「2013年度以降」(同9.3%、983社)が続いている。雇用環境の改善が見込める時期は2011年度以降になるとしている企業は合わせて同50.8 %(5,402社)と過半数に上った。

 規模別にみると、『大企業』では「2012年度」(同20.6%、525社)、『中小企業』では「長期的に改善する見込みはない」(同23.8%、1,920社)が最多となった。特に、『小規模企業』は「長期的に改善する見込みはない」が同29.6%(656社)と3割近くに達している。
 業界別では、改善時期が2011年度以降になるという見方は『不動産』(同60.9%、167社)が6割超と高い。『建設』は3社に1社が「長期的に改善する見込みはない」(同34.5%、524社)とみており、今後の雇用環境について悲観的な考えが支配的だ。

 調査結果について同社では、「雇用環境は依然として厳しい状況が続いているものの、地方圏や中小企業などこれまで採用が困難だった企業では、このような時にこそ優秀な人材を確保するチャンスと捉えている傾向が強い。さらに、雇用環境の改善には景気回復が最大要因であると考えている企業も多い。そのため、政府は実効性のあるマクロ経済政策とともに、労働市場におけるミスマッチの解消をはかる施策を間断なく実行していくことが肝要である」とまとめている。

大学生の内定率が過去最低の73.1%、前年比7.4ポイント減
1月の完全失業率4.9%、4%台は10カ月ぶり 有効求人倍率は0.03ポイント改善の0.46倍

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