商品の安全性を検証した『買ってはいけない』がベストセラーになり、消費者の意識に一石を投じてから早十年。その後も「週刊金曜日」誌上をはじめ、危険な商品を告発し続けている科学ジャーナリストの渡辺雄二さんの最新刊が発売された。不必要な化学物質に囲まれている現代人に、警告しつづける渡辺氏に話を伺った。
――最新刊のタイトルは、ずばり『ファブリーズはいらない』。衝撃的なタイトルです。
渡辺雄二氏(以下渡辺) これは私の著書『ヤマザキパンはなぜカビないか』『花王「アタック」はシャツを白く染める』(緑風出版)に続く、企業批判シリーズ第三弾です。今回はファブリーズだけでなく、殺虫剤やくん煙剤、入浴剤などを取り上げています。どれも、TVで大量にCMを流していますが、これらは本当に必要なものなのだろうかという疑問がありました。必要ないどころか、むしろ害のあるものなんじゃないかと。だって化学物質を大量に含んでいるわけですから。表題にもなっているファブリーズは、その象徴たる存在です。
――確かに、今まではファブリーズの安全性を考えずに、購入していたように思います。
渡辺 ファブリーズが対象としている「におい」は、汚れがついたり菌が発生したりすることによって発生するもの。だから、衣類や布製品なら洗えば落ちるし、布団類は干せばいいんです。ですが、ファブリーズでは汚れは落ちないので、根本的な解決にはなっていないのです。除菌効果を謳っていますが、そもそも自然界にはあらゆる菌が存在し、人間の体内だって菌だらけなわけですから、菌を完全に排除するのは不可能。また除菌作用があるのに、人体に害がないなんてことはあり得ないでしょう。
――具体的にファブリーズはどんな危険性があるのでしょうか。
渡辺 ファブリーズを使っていると、目が痛くなることがあるという声を耳にしました。除菌成分として入っている第四級アンモニウム塩という化学物質が目に入ってしみているのです。第四級アンモニウム塩を含む床用洗浄液を使った後で、アレルギー性ぜんそくが発症するに至った例も。
――宣伝ではいいところしかアピールされず、消費者は害の部分をなかなか知ることができません。
渡辺 もちろんそれもありますが、さらに危惧すべきは、成分表示がちゃんとされていないことです。ファブリーズはCMで『トウモロコシ由来消臭成分』配合と謳っていますが、実際に除菌作用をしているのは、天然成分ではなく、化学物質です。また除菌・消臭スプレーは、家庭用品品質表示法の対象外なので、洗濯用洗剤や台所洗剤のように詳細に成分を表示する必要はありません。だから「除菌成分(有機系)」などという曖昧な表示で、第四級アンモニウム塩などの危険な成分が入っていることが多いのです。
でも、それを国の機関も把握していないのが問題でしょう。成分に関してはメーカーの報告を鵜呑みにしているのが現状です。これまでは業者を統括する立場にある厚生労働省が管轄省庁だったのでさもありなんでしたが、昨年、消費者を守る消費者庁に管轄が移行したので、基準などの改正で消費者のための、正確な表示がされることが期待されます。
――成分表示がされていないということと同様に、自分を含めた消費者がそれを無意識に購入していることにも怖さを感じます。
渡辺 現在の消費者は、あまりにも多くの化学物質に囲まれて生活しているので、感覚が麻痺しているのでしょう。お風呂用、台所用、床用と成分はほどんど変わらないのに、次から次へと商品が発売され、CMにより無意識のうちに手にしている人が多いのではないでしょうか。しかし、化学物質は確実に現代人を蝕んでいるのです。
例えば、現代病の一つである花粉症は、花粉と化学物質が相乗的に作用して、アレルギーを引き起こしていると言われています。なので、アレルギーを防ごうとして除菌剤で消毒しているつもりでも、その化学物質でアレルギーを悪化させている、というケースも起こりうるんです。
――消費者意識が高まっていくのはもちろんですが、作っているメーカーは今後どうなっていくべきなんでしょう?
渡辺 企業は物を売って利益を上げることを目的とするのは当然でしょうが、だからといって、不必要なものを買わせたり、害になるものを平気で売ったりするのはどうでしょうか? お金をとって売るからには最低限、顧客に利益をもたらすものを売るべきだと思うんです。生活用品メーカーの中には『あったらいいな』という発想から、隙間的なニーズの商品を開発するのを得意なところもあります。でも、よく考えてみたら、『あったらいいもの=なくてもかまわないもの』なわけです。不必要な物を買わせるために、大量のCMを流して、これは必要だ、便利だと消費者を洗脳しているのだから恐ろしいことです。
もちろん、今回『ファブリーズはいらない』の中で取り上げたメーカーの中にも、最近、表向きには環境に配慮を始めている企業もあります。車だってハイブリッド仕様や電気自動車が注目をされてきているように、生活用品も環境に配慮したものが選ばれるようになる時代は遠くないかもしれません。誰も買わないものは淘汰されます。だからこそ、安全性を確認した上で、それが本当に必要なものかを見極め、不要なものは買わないことで、これらの有害な商品たちに対抗していくしかないでしょう。
渡辺雄二(わたなべ・ゆうじ)
科学ジャーナリスト。1954年生まれ、栃木県出身。千葉大学工学部合成化学科卒。消費生活問題専門紙の記者を経て、82年よりフリーの科学ジャーナリストに。以後、食品、環境、医療、バイオテクノロジーなどの問題を「朝日ジャーナル」「週刊金曜日」「中央公論」「世界」などに寄稿。特に、合成洗剤、食品添加物、ダイオキシンなどの化学物質の毒性の問題に詳しく、講演なども多数。著書に『買ってはいけない』(共著、金曜日)、『食卓の化学毒物事典』(三一書房)、『食品添加物の毒性判定事典』(メタモル出版)、『あぶない抗菌・防虫グッズ』(青木書店)、『ヤマザキパンはなぜカビないか』『花王「アタック」はシャツを白く染める』(緑風書房)などがある。
※画像は『ファブリーズはいらない』/緑風出版
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