お医者さんの世界には「ムンテラ」という言葉があります。ドイツ語で"口先で患者をごまかしてしまおう"という治療法なんだとか。

 「大丈夫、あなたは病気なんかじゃありませんよ」
 「アハハ、あなたは100歳まで生きますよ」
 「腫瘍は腫瘍でも良性ですから、問題ありませんよ」

 などと励まし、勇気づけるのです。優秀な医者であればあるほど、このテクニックに秀でているそうです。お医者さんはどこか誠実でマジメなイメージがありますが、ごまかし上手でなければやっていられない職業なのです。

 いや、医者の世界にかぎらず、どの分野においても「ごまかし上手」でなければ、生き残っていけないのが実情ではないでしょうか。自分のホンネや感情に素直にしたがって仕事をすることは大変危険です。やりたくない仕事をふられた時に「そんなこと、私の仕事じゃありません」とつっぱねるのは、大人気ないこと、このうえないからです。

 ごまかしのテクニックとして次のような話があります。

 不動産のセールスマンは、自分が不利になるような欠点を、わざとお客に申告することがあります。なぜ、そのようなことをするかというと、その他のより大きな欠点について目くらましするためです。

 「間取りが広くて、いい物件なんですけど、駅から少し遠いですよ」と告げてその物件を紹介すると、お客は「少し遠い気がするけど、たいしたことじゃない」と安心するのです。このようにして、例えば日当たりが悪いことや、夏場は夜に暴走族が走り回るといった欠点をごまかすことができるのです。

 これは心理学的に「両面呈示法」と呼ばれる説得技法。説得者にとって都合の悪い情報を1、2個入れておくことで、相手を安心させるテクニックです。

 南カリフォルニア大学のマイケル・カミンズ助教授は、学生にボールペンの広告を読ませる時に、「書きやすく、インクも出やすく、持ちやすくて、品質もいい」といったポジティブなことばかりが書かれた広告と、「プラスチック製だが、書きやすくて、値段もてごろ」といった欠点を含んだ広告を作りました。

 その結果、欠点も申告されている広告は、約6倍もの好意的な評価がくだされました。私たちは、欠点をきちんと申告されると、その人のことを信用してしまうようです。

 このデータからわかるとおり、大きな欠点を目くらましするためには、あえて小さな欠点を自分から申告してしまった方がいいのです。ビジネスの世界でも使いたいテクニックですね。



『上司やクライアントの見る目が変わる ごまかしの心理術』
 著者:内藤 誼人
 出版社:ダイヤモンド社
 価格:1500円
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