予約殺到で数ヶ月先まで予約がとれない飲食店があるかと思えば、毎日ほとんどお客の姿を見ることができない飲食店もある。おいしい店ばかりならわかるけど、なぜ、値段と味が比例しない店がこんなに存在するのだろうか。また、なぜ20代の料理人の店が次から次へとメディアに取り上げられるのだろうか...。

 「飲食業界の実情」について、我々一般客は知らないことがたくさんある。この「飲食店の常識・非常識」を分析し、解明した覆面料理評論家の友里征耶氏は、自著『グルメの嘘』でグルメ業界の"不都合な真実"についてまとめている。

 友里氏は2003年に『シェフ、板長を斬る』でデビューし、その超辛口の店評価が評判となり、注目を集めるグルメライター。「自腹・覆面」の取材スタイルで、正直なグルメ批評を励行するがゆえに、業界内で目の敵となることもあるという。

 「なぜメディアに盛んに露出している店がおいしくないのか」

 これは一般読者が根本的なところで勘違いしていると友里氏は話す。実は、本当においしい店だけが雑誌などのメディアに取り上げられているのではなく、メディアに取り上げてもらいたいという意志の強い店が、雑誌に載っているだけなのである。
 
 料理専門誌の記者や、店紹介をしている雑誌の編集者はどのように取材しているのだろうか。ちゃんと料理を食べて、ちゃんと食事した分の支払いをしているのだろうか。

 答えは、ノーである。多くの場合、撮影用の料理は味のついてないものが出される。実際に口にすることもなく、シェフの口上を聞いただけで記事を書くライターが多いためだ。たとえ味をつけてまともに作ったとしても、写真撮影が終わるころには冷めきってしまっていて、とても食べられたものではない。

 つまり、取材用に見せかけだけの料理を作り、ライターたちは営業時間外に訪問するのが一般的。なかには雑誌に掲載するための条件として宣伝ページを用意し、半端でない宣伝費を要求する出版社もあるくらいだという。
 
 このような実態を知れば、コストパフォーマンスが良く、おいしい料理を出して先客万来な店が、わざわざ取材のために無償で料理を提供し、時間を割くことは普通じゃないことがわかってくる。また、そのような客足が絶えない店が、宣伝費として何十万円も出版社に支払うだろうか。雑誌に掲載されている店がすべてマズいとは言わないが、本当においしい店やお客が殺到する店だったら、普通に考えれば掲載を望まないことぐらい想像できるというものだ。

 メディアに出ている店がおいしくないのではなく、集客に必死な店や自己顕示欲旺盛な料理人が主にメディアに出ているのだと、友里征耶氏は『グルメの嘘』のなかで語っている。



『グルメの嘘』
 著者:友里 征耶
 出版社:新潮社
 価格:735円
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