恥の多い生涯を送ってきました。
 自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。(『人間失格』)

 ご存知の方も多いはず、これは『人間失格』の「第一の手記」の書き出し部分。09年が太宰治の生誕100周年だったこともあり、昨年から今年にかけて太宰治がブームとなっています。

 太宰と言えば、冒頭の『人間失格』『斜陽』『走れメロス』と言った数々の名作を残したことはもちろんですが、4度の自殺未遂に加え女性にモテまくったことでも有名。でも女にだらしなくて、薬や酒におぼれて、自分を慕う女性の日記を書き写した小説まで出すようなダメ男なのに、どうして女性にこんなにモテるのでしょうか。そのヒントは「鉄子」を攻略することにあるようです。

 「鉄子」とは鉄道ファンの女性ではなく、鉄面皮な女性のこと。平気で真っ赤な嘘をつく「鉄子」は人生に大きな目的をもっており、どうしてもそれを達成しないと気が済まないのだとか。目的のために嘘をつかざるをえない。しかもそういう女性に限って綺麗で本当の意味で頭が良いのだとか。そんな女性に心当たりのある男性もいるのでは?

 太宰が初めて「鉄子」と出会ったのは21歳の時。二人は出会って数日で一気に燃え上がり、その勢いで心中を決意。しかし「鉄子」が死ぬ間際に叫んだ名前は、太宰とは別の男性だったのだそう。これにショックを受けた太宰は、2人を繋いでいた手首の紐を断ち切り自分だけ生き残ったのです。しかも太宰はその後『虚構の春』という小説で「地獄の女性より。」と「鉄子」からともとれるような手紙を載せています。

 「それを小説に書いたということは、太宰治は開き直ったのではないだろうか」とは『太宰治の女たち』の著者・山川健一さん。「鉄子」を攻略した(痛い目にあった?)あとの「開き直った男というのもまたあなどれない」と話します。確かにこれだけ痛い目にあったのに、懲りることなく太宰は"命がけ"で女の尻を追い駆け、懲りない男に女もまた"命がけ"ではまっていきます。

 太宰作品を読むと何だか暗くなってしまうという方も多いようですが、女という不可解なものをどうやって扱えばいいのか、太宰を恋愛の師と仰いで小説を読むのも、太宰作品の一つの楽しみ方かもしれません。



『太宰治の女たち 』
 著者:山川 健一
 出版社:幻冬舎
 価格:840円
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