「やっぱり私の思ったとおりだ。だから最初から無理だっていったじゃないか。この責任は君にとってもらうからね」

 仕事上のトラブルが発生すると、自分には責任がないと主張して逃げようとする人がいます。こう主張すると、周囲も「彼には責任がない」と認めてくれると考えているかのようです。でも、この主張は正反対の結果を招きやすいものです。
 
 すぐに「自分には責任がない」と言い張る人の心の中には、「本当の責任は自分にある」という心理が隠されていると、東海大学医学部教授(精神医学)の保坂隆氏は説明します。責任を他人に転換せずにその心理を公にしてしまったら、信頼を失い、ボーナスが減給されるなど、デメリットが生まれるので、相手から責任を追及される前に先制攻撃をしかけるのだそうです。

 しかし、相手にも自己防衛本能があることを忘れてはなりません。不要な攻撃をしていると相手は反撃にでます。今まで一度も口答えをしなかった気の弱そうな後輩に、「おかしいですよ。私は何度も『この方法で進めていいんですね』と確認したはずです。そもそも、別の方法をすべて切り捨てたのは、あなたじゃないですか」と、理路整然と指摘され、かえって窮地に立たされることも。
 
 自分の保身や心を納得させるためだけに、責任を回避したり、他人を責めていたりすると、かえって自分の心をかき乱す結果となってしまい、ひいては人望を失ってしまいます。自己防衛本能は、人間が太古の昔から、自らを守るために身につけた本能といえるので、これ自体は決して悪い行為ではありません。しかし、自分自身も守り、チームとして仕事やプレーを円滑に進めていく際には、その表現方法をいく通りも用意しておく必要があります。

 たとえば、冒頭のようにいきなり相手に責任をおしつけるようにするのではなく、「最初からこうなる運命だったんだ。巡り合わせだった」と伝えるとどうでしょう。責任の所在を話題にするよりもストレスは少なくてすみます。しかし、これでは問題は放置されたままなので、まずこう考えて平常心を取り戻したら、素直に現状を受け止めるべきです。
 
 非は非として「申し訳なかった、私がもう少し冷静に判断すればよかったんだ」「君の提案を考えなかった私の責任だ」と先に謝れば、意外な結果が生じます。相手も「反論」や「反撃」ではなく、「すべて彼の責任にしていいのか?」という譲歩の姿勢にかわり、「いや、私ももう少し強く進言すればよかったんです」という言葉が飛び出すはずです。

 どうしても責任の所在を明らかにしなければならないケースでは、「規制が厳しすぎたんだ。そんな規制を作った人間が悪い」というように、直接その仕事にかかわらない遠い存在を持ち出すのが、問題をこじらせない方法です。これだけで、心は静かに保たれ、その後の対処もスムーズに運ぶのではないでしょうか。



『平常心の鍛え方』
 著者:保坂 隆
 出版社:ベースボールマガジン社
 価格:840円
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