香港戦。特に前半がひどかった。

選手たちは自分たちがピッチにどんな絵を描いているのが分かっているのだろうか。特に中盤から前の選手4人。今日、始まった話ではないが、ポジション移動しすぎなのだ。

そこに留まると言うことを知らないかのように、常に動いている。常に移動している。4人がグルグル入り乱れながら、中央付近をローテーションしている。「流動的サッカー」と言えば聞こえが良い。「走るサッカー」と言えば聞こえが良い。「ムービングフットボール」と言えば、さらに恰好いい。しかし、サッカーの本質から大きく逸脱している。

外が使えないので、ボールが収まらない。「陣」が取れないのだ。常に動いているのでメリハリがない。静から動への変化がない。一本調子とはこのことだ。そしてその中に、シュートのイメージが何もない。ゴールを奪うという最大の目的が忘れ去られている。ゴールを逆算して考える思考回路がまるで働いていない。

で、効果がない割に難度が高い。パスを受けても、その瞬間、みんな移動しているので、誰がどこにいるか分かりにくい。けっして広くないスペースの中をグルグル動いているので、パスコースも見いだしにくい。
満足に受ける体勢もできていない。少しもサッカーが面白く見えない。

相手はゾーンをカバーしていれば、それでオッケーになる。いやらしさはゼロだ。

いままで、僕はいろんなサッカーを見てきたつもりだが、こんなサッカーは見たことがない。効果がないのに難しいサッカーを。

「日本人の俊敏性を活かしたサッカー」のつもりなのだろうが、あまりに独自すぎて、その結果、サッカーの本質から逸脱してしまっている。

「落ち着きがない人たちみたい」
「サッカーって、こういうスポーツでしたっけ?」
「なにか変だよね」
「動いていないと、死んでしまう動物みたい」
「走っていることが、頑張っていることのアピールなんだよ」
「動きを止めると、身体に電流が流れる仕組みになっているのかも(笑)」

これは、ハーフタイムに周囲のライターとかわした会話だが、岡田ジャパンの特異性は、データにもハッキリ表れている。昨年の3月に行われたバーレーン戦で、彼らが走ったトータルの距離は120キロだった。片や欧州の列強は100キロ強。2割も多く走っているわけだ。

実際、外国人の多くは、日本のサッカーを見た感想をこう漏らす。
「日本の選手は、いつもせわしなく動いている」

だが、日本代表のサッカーに見慣れると、そうは感じない。最近はいつもこの調子だ。岡田サンに至っては、もっと走ることを強要している。走ることで、強国との差を詰めようとしている。

だが、この設定のままで、これ以上走っても幸はない。メリハリのない、非サッカー的な動きで走行距離を稼いでも、効果は上がらない。むしろ症状はさらに悪化する、とは一切思っていないようだ。

で、なぜこうしたおかしなことを平気でするのか。それはポジションに対する考え方が、間違っているからだ。サッカーにポジション(定位置)はなぜあるのか。センターフォワードはなぜ、ゴールの近くで構えようとするのか。両ウイングはなぜ存在するのか。トップ下はなぜ存在するのか。

エリアをカバーする概念はゼロに近い。ボールを奪われた瞬間、誰が誰にどうプレスを掛けるのか。

ポジションなどいらないと言わんばかりの、定位置のないサッカーを好んで実践しているのが岡田ジャパンの実態だ。

新しいサッカーの発明をしているかに見える岡田サン。失敗続きの実験は、もうこれ以上見たくない。

岡田式ムービングフットボール(?)は、即刻中止すべき。岡田ジャパンは、ますますおかしな方向へ進んでいる。こうなったら、犬飼さんの決断に期待するしかない。

採点は以下の通り。

GK楢崎6 雨の中良く耐えた。
DF駒野5 相手の実力を考えれば、もっと攻撃参加しなければ。
DF闘莉王6.5 センターフォワードで使いましょう。
DF中沢5.5 もはや頼りがいのある存在には見えない。
DF内田5 駒野と感想は同じだが、攻撃参加が組織的にできないサッカーに問題を感じる。
MF今野5.5 前半で交代。岡田サンの迷いを感じる。
MF遠藤6.5 唯一、無駄走りのない選手。冷静に見えた理由だ。
MF中村憲4 持ち味が一切出ていない。ストレスが溜まっているはず。
MF大久保4 もはや彼がどんな選手か、分からなくなってしまった。
MF小笠原4.5 彼をどう使いたいのか、五里霧中。
FW玉田4 センターフォワードとして先発したようだが……

※交代選手
MF稲本5.5 無難にこなしバランスを取ったが、彼自身の良さはまったく見えず。
MF香川4.5 存在感、フレッシュ感、ともになし。
FW平山5 だったら、闘莉王の方が良い。

岡田監督 3.5

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