プライバシー保護の考え方に疑問を持ち始めたのは、数年前のある友人の一言がきっかけだった。

 酒の席で「プライバシー侵害はけしからん」というよう論調で語り始めた僕に対して、その若き友人は「どうして?」と無邪気に聞いてきた。「何かばれるとマズイことでもあるの?」「いや別にないけど・・・」「じゃあどうしてそんなにこだわるの?」。「・・・・」。
 答えが出なかった。そして今でも答えは出ない。

 その後、プライバシーの概念は近代になってから発達した、というようなことをどこかで読んだ。近代以前の村落では、基本的に情報は村民全体で共有されていた。プライバシーがない代わりに、人々の間に深いつながりがあった。
 近代になって個人主義が発達し、プライバシー保護の考えが広がった。「隣は何をする人ぞ」・・・。東京砂漠という言葉もできた。
 情報技術の発達は、いろんな側面で社会を近代以前の状況に戻そうとしているのではないか、という説がある。もちろん単純に後戻りするのではなく、近代を通過する中で失った価値あるものを、テクノロジーを使って別の形で取り戻そうとしているのだ、という考え方だ。

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