――1枚の絵を仕上げる方法は?

カントクさん:まず、絵を描くときには、おにぎりぐらいの大きさで小さく描きます。3D映像のように自由自在にイメージが浮かんでいるわけではありません。ウ〜ン、途中の部分は言葉にしにくいですね。小さな女の子だったり、お姉さんキャラだったり、描きたいテーマや意思をドンドン強くして、イメージを変換していきます。でも、鏡を見て自分でポーズを作ったりして、肩を上げて"このポーズが女の子っぽいな"と試してみることもあります。

全体的にイメージが出来たら、とりあえず片方の"目の部分"を描きます。そうすると、もう片方の目の位置とか、バランスとかが決まってくるので。イメージしたものを単純に描き下ろしいく手法のときがあったり、描き始めたものから刺激を受けて、作品になっていくボトムアップのパターンもあります。

――では、目の部分が中心ですか?

カントクさん:あ、そうだ! 人物デッサンをやるんだったら、棒状のものや全体を描いてからだと思うのですが、僕の場合は良くない方法かもしれません。まず、キャラクターの目から描き始めるのです。さっき、ポージングで吟味する場合があると説明しましたが、最初の部分ではないのです。

全体的な雰囲気やポーズが決まって、後から目を付け足すのではなく、目がスゴク重要なポイントだと思っているので、目だけしか描いていなくても、魅力的に映るキャラクターを完成させます。目の部分が決まって、それから体などの輪郭を描いていけばイイと思っています。後から書き足す場合だと目の重要度が下がってしまうと、個人的に思います。女の子の絵柄はベーシックなのですが、作り方には僕なりの良さがあると信じて、突き詰めていきたいです。

――初めて出された画集については?

カントクさん:僕みたいな年齢(24歳)で出すのは、ちょっと早いかもしれないと思いました。でも、漫画を描くことが苦手でイラストばっかり描いている僕にとって、画集は憧れの一つでした。僕の絵を知らない人にも届けるチャンス。また、雑誌の発売期間に手に入れることが出来なかった人にも見てもらえると思いました。ディスプレイ画面で表示されるイラストと比べて、同じ大きさでも印刷された絵の鮮明さや迫力は全然違うし、見開きページの迫力は気持ちがイイですね。

――個展の開催も決定したそうですが。

カントクさん:はい。1月7日より、東京・名古屋・大阪で開催します。展示する版画の仕上がりをトコトンまで追求。普通の印刷機では出ない色具合まで、調整しています。高額ですけど、1枚1枚に気持ちを込めています。

――今後については?

カントクさん:僕は、まだまだヒヨッ子のレベル。自分の絵を信じ、これまで以上の世界観が出せるように頑張ります。



インタビューの後、会場で本を購入した男性ファンのAさん(26歳、香港)にもカントクさんの絵について話が聞けた。その方は、わざわざ海外からコミックマーケットに駆けつけた一人だった。

――カントクさんの絵を知ったキッカケは?

Aさん:3年前に友達からカントクさんの絵を紹介してもらいました。いろんなサークルの新刊を見たのですが、混ざった中でも、そのときから気になっていました。また、とらのあな(同人誌を扱うショップ)でも以前に買ったことがあります。

――作品の魅力を教えてください。

Aさん:他の方と比べて柔らかいイメージ。"萌え"だけでは終わらずに、癒しの部分が強いです。

――日本語がお上手ですね。

Aさん:まぁ、少し。日本語は香港で学びました。漫画やアニメの日本語が分かります。アジアの人は、日本のサークルさんの本を欲しがっています。だけど、一部の人しか日本に来られない。だから、ダウンロードをしているようです。

――香港で盛り上がりを感じますか?

Aさん:香港だけではなく、アジア全体で盛り上がっています。日本のほかに、台湾や中国のイベントにも参加しています。今後は、ドイツやアメリカにも行ってみたい。

――日本までの飛行機代、ホテル代は高いですよね?

Aさん:でも、しょうがない。やっぱり、ここ(コミックマーケット)は宇宙一のイベントだから。他のイベント、こんなに盛り上がるところは見つかりません。


■画集/作品情報
・作品名:あしあと 〜カントク アートワークス〜
※収録作品は、描き下ろし作品6点に加え、蔵出しとなる合計170作品
・出版:廣済堂出版
・発行:メディエイション
・価格:2,940円(税込み)
・判型:AB版/カラー144P
「あしあと 〜カントク アートワークス〜」 − 美少女コンテンツ雑誌「E☆2」

■版画展示販売会/関連情報
・大阪会場【アールジュネス日本橋】1月7日〜11日
・名古屋会場【アールジュネス名古屋】1月7日〜11日
・東京会場【アールジュネス秋葉原】1月28日〜2月1日
※各会場で一日ずつ、来場イベントも予定されている
版画展示販売会「カントク初個展 − アールジュネス

■関連リンク
五年目の放課後 - (カントクさん)公式サイト