時価8000円相当のスニーカーを盗むという、何ともセコイ窃盗容疑で逮捕。そんなニュースが先日、世間を賑わせた。犯罪に大きいも小さいもないのだが、三行記事にもならないようなショボイ事件でも、ファンの前でプレーするアスリートが起こした犯罪なら話は別。JRAジョッキー・佐藤聖也騎手が、容疑者として世間に知れ渡ることとなった。

 事件の概要は、同騎手が6月8日〜10月6日、茨城県稲敷郡美浦村にある騎手寮1階倉庫からスニーカーを盗んだ疑い。これを龍ケ崎市内のリサイクルショップに売却したところ、この店へ偶然来店した被害者が発見し被害届を提出。売却契約時の身元確認から、佐藤聖騎手が特定された。

 事態を重く見たJRAは「本会所属騎手が逮捕されるという不祥事が生じ、誠に遺憾なこと。警察の捜査の推移を見守りながら、厳正に対処する」として、騎乗停止の処分を発表。騎手寮の寮長を務める金子光希騎手は、自身のブログにて「ファンの皆様そして関係者の皆様に多大なるご心配ご迷惑をお掛けしたことを、この場をお借りしまして心よりお詫び申し上げます」と、謝罪の言葉を述べている。

 佐藤聖騎手は騎手生活5年目を迎えたが、これまでの通算成績は18勝で、今年は勝ち星がなく、競馬ファンの間でも馴染みの薄いジョッキー。成績だけを見ると、それほど多くの収入が得られていたとは考えにくく、生活に困っての犯行かと筆者は考えていた。

 ところが取材を進めていくうちに、佐藤聖騎手の窃盗は常習的な犯行で、次々と“余罪”があったことが明らかになった。もともと同騎手に関しては、競馬サークル内でもいろいろと噂はあり、彼の近辺では、頻繁に物がなくなることが多かった。ただ「おそらく彼が犯人なのでは」という見当はついていたものの、決定的な証拠がなかったため憶測の領域を出ず、誰も彼を咎めることはできずにいた。

 しかし今回の事件発覚後、佐藤聖騎手の所持品の中から、ある騎手が何年も前に失くしていた私有物が出てきた。洋服や帽子、カバンなど、さほど高価なものではないが、長きに渡って窃盗を繰り返していたことが判明。何となく目星はついていたが、身内の犯行が白日の下にさらされ、外部の犯行を信じていたある騎手は「残念です」とショックの色を隠せない様子だった。

 ある関係者の話では「あまり大げさに事を荒立てたくない」として、今回の件は内々に処理を進める模様。かつては、GIも制したことがある騎手が、同様に窃盗で逮捕され、騎手免許が取り消された事例があるように、佐藤聖騎手もジョッキー生活に別れを告げる可能性もある。

 同騎手はここ数年乗り鞍も減少し、満足にレースに騎乗できない、結果を出すことができない、などのストレスがあったことは想像に難くない。もしかすると、万引きの常習犯のように、ある種の病気を患っていた可能性もある。だが、仮に騎手の道が繋がったとしても、彼をレースに乗せる馬主や調教師、また、彼の乗る馬にお金を懸けるファンは、果たしてどれくらいいるだろうか。ほんの軽い気持ちから始まった出来心が、最悪の事態を招く結果に。その代償はあまりにも大きい。