ベルトを持つことが当然といった感もあるBJ・ペン。8月には最強のチャレンジャー、ケニー・フロリアンを相手に完全防衛を果たした

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12日(土・現地時間)、2009年のUFC最終イベントがテネシー州メンフィスのフェデックス・フォーラムで開催される。UFC107「PENN vs SANCHEAZ」のメインでは、そのタイトル通り、世界ライト級選手権試合、BJ・ペン×ディエゴ・サンチェスの一戦が行なわれる。

世界王者が軒並み負傷、体調不良で戦列を離れているなか、チャンピオン以外でも、負傷が原因で対戦カードの変更、消滅が目立っているUFC。今大会でも、チアゴ・アウベスとパウロ・チアゴのウェルター級が行なわれる予定だったが、この一戦はアウベスとジョン・フィッチに変更された。理由はUFC106でフィッチと対戦予定だったヒカルド・アルメイダの負傷欠場。ウェルター級トップコンテンダー同士の対戦を組む必要があったのか、パウロ・チアゴは今大会からはじき出され、UFC106でジェイコブ・ヴォルクマンとの対戦となった(結果は判定勝ち)。

ズッファ首脳のやり繰りの苦労を知ってか知らずか、今度はアウベスがヒザの靭帯に問題があり、フィッチは結局、今大会でUFC二戦目のマイク・ピアースと対戦することになった。

また、ヘビー級でもストライクフォース&アフリクションを経て、3年10カ月ぶりにカムバックするポール・ブエンテーロも、対戦予定だったUFC史上最短試合KO勝ち男=トッド・ダフィーの負傷により、ステファン・シュトルーフに対戦相手が変更された。

無事是名馬という言葉もあるが、試合条件と対戦相手に拘るBJが1年で3試合を行なうのは、MMAデビューイヤーとなった2001年、翌年の02年、04年以来のことで、キャリア9年で通算4度目となる。デビュー戦がUFCで、ステップアップ・カテゴリーでの試合経験のないBJが、これだけコンスタントに試合をこなしてきたのは、大きなケガがなかったからともいえる。

1月のウェルター級王座挑戦こそ完敗に終わったが、その敗戦を引きずることなく、BJは8月にケン・フロをリアネイキドチョークで下している。ディエゴとの一戦が、同王座3度目の防衛戦となる彼は、天才の異名を持つ一方で、短所としてガス欠というイメージがついて回っている。

ただし、この指摘に関してBJは「ショーン・シャーク戦、ケニー・フロリアン戦を見て、どうしてスタミナ不足といわれるのか」と反論する。古くは初めてライト級王座に挑戦した02年のジェンズ・パルバー戦から、06年のマット・ヒューム戦、さらには先のGSP戦の印象が強く残っているのだろうが、BJ唯一の欠点といわれるスタミナ面では、満点の評価を受けているのが挑戦者のディエゴだ。

自らナイトメアというニックネームに関し、「対戦相手を削りに削って、ハードな時間を与える。彼らにとって、僕がナイトメアといわれる所以だ」というディエゴ。UFC成功のドアを開いたTUFシーズン1ウィナーが、4年の歳月を掛けて、ようやく掴んだ王座挑戦のチャンス。

「ライト級に階級を下げて、こここそ僕が世界でベストになれる階級だと分かった。そのためにはBJを倒さないといけない」という挑戦者の魅力は、馬力溢れるアグレッシブなファイトだ。以前はテイクダウンを塞がれると、なかなか自分のペースで戦うことができない欠点もあったが、サンディエゴの柔術ユニバーシティでサウロ・ヒベイロの教えを請うようになってから、そのグラップリング能力に磨きがかかった。

同時に組み技での完成度が上がったことで、打撃でもミスを恐れることなく積極的に攻めることができるように。そんなディエゴに関しては、「グラップリングが強くて、テイクダウンにも優れている。何も悪い印象は持っていない。不思議なことにね」とBJも高く評価している。

ある意味、肯定的に次期対戦相手を語ること自体が、余裕の表れかもしれないが、その余裕が慢心に変わることもある。BJがオクタゴンに入る際にも、余裕の表情を浮かべるようであれば、無類のスタミナを誇り、打撃でも一発KOの破壊力を持つディエゴの勝機は高まるといえるだろう。