先日行われたマイルCSは、8歳馬のカンパニーが天皇賞・秋に続き優勝。見事な勝利で引退の花道を飾ったのは記憶に新しいところだ。

 8歳馬のGI制覇は史上初ということもあり、カンパニーにはこの偉業達成のことでばかり注目が集まりがちであるが、この馬は血統も実にユニーク。父がミラクルアドマイヤというマイナーな種牡馬であることも特筆すべき点であろう。

 ミラクルアドマイヤは、通算3戦1勝と決して目立った成績を残したわけではなかったものの、ダービー馬フサイチコンコルドの半弟という血統が評価され種牡馬入り。その後、見事にカンパニーを輩出することになるわけだが、このようにGI優勝のない種牡馬の産駒によるGI勝ちは非常に例が少なく、カンパニー以前ということになると、98年のフェブラリーSを制したグルメフロンティア(父トウショウペガサス)にまで遡らなければならない。

 この他には、天皇賞馬ネーハイシーザーを出したサクラトウコウ、マイルCSを連覇したダイタクヘリオスの父・ビゼンニシキなどの名前が挙げられるが、そんな馬たちの中でも特に異彩を放つ経歴の持ち主なのが、88年のオークス馬・コスモドリームを輩出したブゼンダイオーだ。

 ブゼンダイオーの競走成績は10戦3勝。重賞は毎日杯に出走しての7着が最高と、言ってしまえば「並の馬」である。ではなぜこのような馬が種牡馬となり、GIホースを輩出するに至ったのであろうか。

 コスモドリームの母スイートドリームはとても気性が激しく、種付けしようとする種牡馬を毎回威嚇しては蹴り上げるという、とてつもない「暴れ馬」だった。そのため、種付け料の高い種牡馬は怖くて付けることができない有り様。そこで思案に暮れた牧場は、「もし蹴り飛ばされてしまっても損害は最小限」という理由で、主にアテ馬として繋養していたブゼンダイオーを急遽花婿に抜擢したのである。このような経緯からGIホースが出てしまうのだから、競馬というものは本当にわからない。

 GIを何勝も挙げたような実績馬を父に持つエリートたちが幅を利かせる競走馬の世界。しかし、ミラクルアドマイヤやブゼンダイオーのような、マイナー種牡馬の活躍がもっとあっても面白い。

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【マイルCS】カンパニーが有終V! - UMAJIN・レース結果(2009年11月22日)