日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみる
2009年11月21日18時45分 / 提供:Garbagenews.com
先に【全体の最新データでは10.2%、でも若年層は平均16.7%!…アメリカの属性別失業率をかいま見てみる】でアメリカにおける「学歴・年齢階層別失業率」のグラフを記事にしたところ、いくつかの意見をいただいた。その中でもっとも多かったのが「日本ではどのようなグラフとなるのか」というものだった。今回はその要望に応える形で、日本の学歴・年代別失業率をグラフ化してみることにする。まずおおもとのデータとしては、いつもの総務省統計局データページから「労働力調査(詳細集計)」の【2008年平均(速報結果)】を選び、そこから「第14表 教育、年齢階級別完全失業者数(卒業者)」のデータを抽出。「数」とあるがデータ内には完全失業率も併記されているので、それを利用する。2008年分だけでなく2004年以降年区切りでデータがおさめられているが、今回は最新の2008年のものを利用する。
このデータを用いて出来たのが次のグラフ。

学歴・年齢階層別失業率(2008年平均)
そもそも論として先のアメリカのグラフと年齢区分も学歴区分も違うし、対象期間も違うので単純比較はできない。しかし全体的な構造「高学歴ほど低失業率」「若年層ほど高失業率」という構造に変わりは無い。ただ、55歳以上の失業率が高めになっているのが気になる。
このグラフで終わりにすると、「2008年では無くもっと新しいデータが見たい」というリクエストもあるだろうから、それを先に答えてしまうことにする(笑)。直近データとしては【労働力調査(詳細集計)平成21年7〜9月期平均(速報)結果】から、【結果表・データベース(四半期平均)へ】を選択。そこで最新のデータである2009年7〜9月期、さらに表5の「年齢階級・教育、就業状態別15歳以上人口」を選び、データを取得する。
データ内には失業率そのものは掲載されておらず、15歳以上の就業者、完全失業者、非労働力人口などが年齢階層や学歴別に万人単位で記載されている。このうち学歴については上のグラフと合わせるために「卒業者」のみを選び、さらに
労働力人口:15歳以上の人口のうち、「就業者」と「完全失業者」を合わせたもの
完全失業率:「労働力人口」に占める「完全失業者」の割合
の定義(【用語の解説(PDF)】)に基づき、失業率を算出していく。そして出来たのが次のグラフ。せっかくなのでデータを少しさかのぼり、2007年夏の「サブプライムローン・ショック」でいわゆる金融(工学)危機が起き、その影響が出始めた2008年1月〜3月期のも併記しておく。

学歴・年齢階層別失業率(2008年1月〜3月)

学歴・年齢階層別失業率(2009年7月〜9月)
当然のことながら景気後退のさなかにあることもあわせ、直近データの方が各階層の値は高い。
●高学歴・高齢者の失業率急増の謎
上記グラフではどの階層も一律に上昇しているように見えるが、先の2008年平均グラフでも触れた「高学年・高年齢」の失業率が唯一異常な伸びを示しているのが分かる。
この「異常な伸び」が分かるのが次の図。上記2つのグラフの値の変移率を計算したものだが、「65歳以上・大学または大学院卒」の失業率だけ4倍近い上昇を見せている。

学歴・年齢階層別失業率(「2008年1月〜3月」から「2009年7〜9月」の変異率)
この急上昇の原因はいくつか考えられる。一つは元データが「万人」単位であること。元々「65歳以上」「大学・大学院卒」の、総人口に占める労働力人口は少なく、2009年7月〜9月においては
・総人口:236万人
・労働力人口:73万人
・完全失業者:4万人
・非労働力人口:164万人
でしかない。1万人単位でのカウントのため、それ以下の部分による調整で多少のぶれが生じてしまった可能性はある。とはいえ、この層「65歳以上」「大学・大学院卒」の各人口の推移を見ると、

65歳以上大卒・大学院卒における「2008年1月〜3月」から「2009年7〜9月」の主要属性人口変移率
のように、「労働力人口」はさほど増えていないのに、「完全失業者」と「非労働力人口中 就業希望者・就業内定者」が大きな伸びを示しているのが確認できる。ここからは推測でしかないが、この年齢層で「2008年1月〜3月」から「2009年7〜9月」の間に大規模な解雇、あるいは定年退職が行われ、職を失ってしまったものの、「それでもまだ(あるいは再度)働きたいという高学歴の人」が職を求めている可能性は多分に考えられる。
なお失業率の話が出ると必ず「日本の基準はラフだ」「国際基準に合致していない」などの話が寄せられる。日本の失業率はILO基準に沿ったものであり、さらに国によって失業に対する意識・文化・手当制度・雇用慣行その他もろもろの要素の違いがあり、「計算方式が違う」「あの国の方が大きい」などと語るのはあまり意味が無い。算出方法では「アメリカ定義で失業率を計算すると、かえって値が低くなる」場合もある(【算出事例:{平成14年版 労働経済の分析」第7章 過剰羅用と潜在失業 1 失業とは何か(アメリカ定義の失業率) 】)。
また少し前には、前政権下において実施された「雇用調整助成金」を批判し、「これが無ければ失業率は2倍近くなる」と計算し、この制度を揶揄し、批判する声が高らかに挙げられた。しかし良く考えれば「雇用調整助成金で失業を押さえ込こめている」のだから、それはそれで良しと見るべきではないだろうか。「海外と同じようにさっさと失業させるべきだ」という意見があるのなら、「日本における、一度失業したあとの再就職の困難さは、海外の比では無い。さらに企業において再雇用が出来る余力が生じた時の、再雇用のために費やす経営資源も並大抵のものではない」事実を知っておいてほしい。それら金銭的な問題だけでなく、該当する一人ひとりの心情まで考慮すれば、例え水増し雇用でも「ベストではないかもしれないがベターな手法」ではないかと思われるのだが、どうだろうか。
■関連記事:
【全体の最新データでは10.2%、でも若年層は平均16.7%!…アメリカの属性別失業率をかいま見てみる】
【日本における学歴と失業率との関係をグラフ化してみる】
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