眼光紙背[がんこうしはい]とは:「眼光紙背に徹する」で、行間にひそむ深い意味までよく理解すること。
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【赤木智弘の眼光紙背】やりがいの搾取
2009年11月19日11時00分 / 提供:眼光紙背
赤木智弘の眼光紙背:第108回
2007年、大阪府寝屋川市のコンビニで、万引き犯を捕まえようとしたアルバイト店員が、犯人ともみ合いになり刺殺された事件で、最高裁は一審二審での無期懲役判決を支持し、上告を棄却した。これにより、刺殺した当時19歳の男の無期懲役が確定となったという。(*1)「万引き犯を負いかけて、従業員が負傷」。わたしもかつては深夜のコンビニでアルバイトをしてたので、こうした事件を見聞きするたびに「いつかは我が身」と思っていた。
私は運良く、こうした事件に遭うことはなかったが、「万引き犯を発見したらどうしよう」ということは、常々意識していた。
普通、コンビニなどで万引き犯を見つけた時は、声をかけたり、速やかに責任者に伝えるのが、基本行動である。この時、犯人が逃げた場合には「追いかけない」ことが基本である。なぜなら、追いかけて捕まえようとした時に、店員が暴行を受ける可能性があるからだ。 また、逆に捕まえようとして相手を転ばせるなどして怪我を負わせてしまう危険性も忘れてはならない。
相手に怪我をさせれば最悪、訴訟などのリスクを負うことになってしまう。相手が実際に万引きをしたことが確認できればまだいいが、もし相手が万引きをしたという証拠が見つからないとなれば、一方的に暴行を加えた犯罪者として裁かれかねない。
こうしたことから、多くのコンビニでは、万引き犯や強盗などの危険に対して「極力逆らわず、身の安全を第一に考えるように」と指導されているはずである。
さて、元記事の中で、一審の大阪地裁が、店員が男を追いかけたことに対して「正義感に基づく行動」と評したことに対し、私は違和感を感じた。そして「セーフティステーション」という言葉を思い浮かべた。
セーフティーステーションとは、2005頃から社団法人日本フランチャイズチェーン協会に加盟するコンビニエンスストアで行われている「コンビニを安全安心の拠点として活用しよう」という活動のことである。(*2)
具体的には、酒やタバコ、成人向け雑誌などといった商品を未成年に売らないといったことはもちろん、コンビニが青少年のたまり場になることを防止したり、危険を感じた子供や女性などの駆け込み場所になるなど、24時間営業で、必ず誰かしら店員がいるコンビニの特性を活かした活動のことである。近くのコンビニの入り口ドアあたりを良く探すと、ゾウのキャラクターのポスターを発見することができるだろう。
私も、お店に困っている人が駆け込んでくればそれなりの対応はしたが、それはあくまでも社会人としての常識の範疇での行動である。
自分の経験でも、道路上でガス欠になった車があったので、押して駐車場にいれたり、交差点の事故で横転した車が駐車場に突っ込んできたので、救急車を呼んだりしたことがある。けれどもそれは、決してセーフティーステーションとしての活動ではなく、社会人として当然の行動である。
しかし、セーフティーステーションという枠組みをもって、コンビニを「防犯の拠点」として、警察機関の一部であるかのように扱うことは、「自分の身を第一に考える」という基本原則を超えて、「犯罪行為に立ち向かわなければならない」という過剰なメッセージを店員に伝えかねない。
今回、被害に遭い、命を落としてしまった店員も、その正義感が故に殺害されてしまった。そこには正義感の発露がコンビニ店員としての職務であるかのように思わせてしまうような、日本社会の変遷という問題も存在したのではないか。
そうした社会からの、店員に対する過剰な要求は、コンビニバイトを犯罪の矢面に立たせてしまう要求なのかもしれない。
*1:元少年の無期懲役確定へ=追跡のコンビニ店員刺殺−最高裁(時事通信)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091113-00000136-jij-soci
*2:SS広場(社団法人日本フランチャイズチェーン協会)http://jfa.jfa-fc.or.jp/ss/index.html
プロフィール
赤木智弘(あかぎ・ともひろ)…1975年生まれ。自身のウェブサイト「深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。近著:「「当たり前」をひっぱたく」。
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