ガンを切らずに治す 高齢者に増える注目の先進医療
2009年11月06日14時15分 / 提供:J-CASTニュース
高度な技術を使ってガンを治す「先進医療」が注目されている。重粒子線(炭素線治療)や陽子線といった放射線を当てて「切らずに治す」ことで体への負担を軽くし、社会復帰を容易にする。高齢者を中心に利用が増えているが、一般的な治療法として定着するには、高額の治療費など課題もある。
30歳代〜80歳代で日本人の死亡率第1位(厚生労働省調べ)といわれ、いまや国民病ともいわれる「ガン」。しかし、最近は早期発見で治癒するケースが増え、「ガンは治る病気」になりつつある。
なかでも、注目されているのが「切らずに治す」先進医療だ。
入院もせず、ふつうに生活しながら治せる
「先進医療」とは、厚労省が公的な医療保険が使える診療として認可する前段階の、最先端の医療技術を用いた治療をいう。ガンの先進医療には、がんワクチン療法やラジオ波焼灼療法、IMRT(強度変調放射線治療)やガンマーナイフなどによる定位放射線照射治療などがあって、重粒子線や陽子線を使った治療もその一つ。
これまでガン治療は、早期発見して手術で病巣を切除して治してきたが、発見が遅れたり、病巣を取りきれずに転移してしまったりというリスクがあったが、こうした放射線療法を使えば、体にメスを入れずに治療できる。いわば、「手術に頼らない」治療法だ。
筑波大学陽子線医学利用研究センター長で、同大大学院放射線腫よう学の櫻井英幸教授によると、「主に肝臓や肺、前立腺といった局所ガンで効果を上げています。体の負担や副作用が少なく、痛みもない。入院の必要もありません」という。
手術に耐えられる体力がない高齢者や女性にとっては、体を傷つけないので体力の回復が早い。ふだんの生活スタイルを崩さず、また仕事を休むことなく治せるメリットがある。治療期間も短縮できる。トータルでみれば医療費の削減効果も見込めないこともない。
重粒子線や陽子線は、さまざまな角度から放射線を集め、ピンポイントで局部に照射してガン細胞を殺す。「X線は人の体を通してしまいますが、陽子線は体に入ると一定の深さで止まるため、狙った病巣に集中させることができます。陽子線治療はさまざまな種類のガンを対象に、一般の放射線よりも副作用を軽減して治療することができるのが特徴であり、一方の重粒子線治療はX線などの放射線が効きにくいガンに有効です」と、櫻井教授は説明する。
放射線医学総合研究所重粒子医学センター(千葉県)を受診した患者は06年に延べ3000人を突破。また、陽子線医学利用研究センターも01年9月以降これまでに延べ2300人を超えている。
治療施設が少なく、自己負担も多額
課題もある。まず、先進医療の設備がある病院が少ないこと。陽子線治療を行う病院は全国に5か所、重粒子線治療は2か所しかない。そのため、「遠くは沖縄から(筑波まで)治療にやって来る」(櫻井教授)という。
陽子線をつくるには複雑で巨大なシステムが必要で、この装置を含めた施設の建設費は約60億円、ランニングコストは年間3億円かかる。重粒子線の設備はその2倍にもなるというから、民間病院では採算のめどが立たず、なかなか設置がむずかしいのが実情だ。
ガン治療の場合でおよそ300万円の費用がかかるとされる、多額の自己負担も先進医療の利用拡大を妨げている。櫻井教授は、「小児ガンは他の臓器に影響を与えることなく、病巣だけを狙って治療できるため、陽子線治療が適しています。しかし実際にはお子さんが小さく、若いご夫婦が多いため、お金の工面がむずかしいようなのです」と訴える。
そうした中で、最近は先進医療の自己負担分(診察や検査、投薬、入院などの基礎部分を除いた部分)をカバーするタイプの医療保険が続々登場。アリコジャパンやオリックス生命保険、アメリカンファミリー生命保険、損保ジャパンひまわり生命保険などが加入者数を伸ばしている。
お金の心配が解決すれば、先進医療の利用はもっと増えるはずだ。
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