食欲の秋を漫画で楽しもう第2弾は「きのう何食べた?」。モーニングで連載中の、よしながふみ氏による漫画である。

 弁護士「筧史朗」は大の料理好き。毎日18時には仕事を終え、スーパーに立ち寄って帰宅し、炊事にいそしむのが日課だ。同居している恋人「矢吹賢二」との食卓は、つつましくも幸福に包まれている。

 ゲイカップルの日常を料理をからめてつづる雑記的漫画。ゲイといってもあからさまな描写はないので安心してほしい。

 40代男2人の食卓は誰もが食べたことのあるメニューばかりが並んでいるが、どこかファンタジーの世界を思わせる非現実感がある。豪勢さはないものの、適度にてまひまのかかった手料理。これをイケメンゲイ筧が作るのは、下世話な感情もこみで十分においしく感じられる。

 筧の料理は、食材を仕入れるところからすでに始まっている。筧はそこそこの収入がありながら格安食材を探し求めることにえも言われぬ満足感を感じており、調理法や味付けがかぶらぬよう、食材が傷まないよう、使い切ることに心を注ぐ。高級食材をたくさん使ってうまさだけを追求する“男の料理”ではなく、完全なる主婦の手料理だ。ちなみに、筧は月の食費を2万5千円までと決めている。

 料理の場面は筧の独白でレシピが紹介されるのだが、これがよしなが氏の代表作「西洋骨董洋菓子店」で女性読者を釘づけにしたスイーツの解説を思わせる完成度。酢にはレンコンをパリッとさせる効果がある。ひじきの煮物は煮汁で味を見るなど、料理トリビアも満載である。さらには料理の絵が抜群にうまい。数あるグルメ漫画の中でも指折りではないだろうか。

 この作品に登場する料理は食べたくなるのはもちろん、作りたくなってしまうのが不思議。その上で考えれば材料が2人分なのは非常に高ポイントである。“彼ごはん”はもちろん、一人暮らしの食事としても作りやすい分量なのがありがたい。

 ゲイありきの作品ではないが、ゲイゆえの世間や家族との接し方なども描かれている。思い悩むことがあっても、料理を作って食べて少しだけ楽になる、痛快さはないが、すとんと心が落ち着く仕上がりとなっている。

 筧と賢二のほっこりとした睦まじさもいい。結婚という形にとらわれず、恋する相手と毎日食卓を囲む。複雑なバックボーンから生まれた、シンプルな幸せの形が非常にまぶしく感じられる。

 主婦からすれば料理はあまりにも日常的で、楽しさを見失いやすいものだ。しかしこの作品は、作ること、食べることの充足感を、そしてそれを共にできる存在のやさしさを、再び思い出させてくれる。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)

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