小雪(撮影:野原誠治)
 「お金の使い方」を通して浮かび上がる人間性、人と人との関係性を描き出す映画『わたし出すわ』。森田芳光監督が『(ハル)』以来、実に13年ぶりにオリジナル脚本で挑む話題作で主人公の山吹麻耶を演じたのは、本作が単独初主演となる女優・小雪。突然現れて、旧友に大金を渡すというミステリアスな難役を、圧倒的な透明感で演じあげた。「自分だけが豊かになるのは、本当の幸せじゃない」と話す小雪に、映画を通じて感じたことを聞いた。

――この『わたし出すわ』という映画は、観る人によって解釈が大きく異なる作品なのでは無いかと思います。小雪さんは、この摩耶という人物についてどう思いますか?

小雪:“何かを還元する”という行為に共感できました。自分だけが豊かになることは本当の幸せじゃないと思っているので。もちろん私はここまで太っ腹じゃないですよ(笑)。

――還元というと具体的には?

小雪:私もペットを飼っているので、動物愛護団体や、アンジョリーナ・ジョリーさんが立ち上げられている団体にも寄付しています。あとは、家族に贈り物を。両親に旅行を年に5回ほどはプレゼントするんですが、チケットを送って、後は行くか行かないかは本人達に決めてもらっています。

――森田芳光監督との初仕事はいかがでしたか?

小雪:絵が監督の中で完璧に構築されているので、その中に自分が入るというのは面白くもあり緊張でした。監督もこだわったと言う病室のシーンは、摩耶が自分を心から解放できる場なのですごく温かくて気に入っています。

――摩耶を演じる上で監督から具体的なアドバイスを受けたのでしょうか?

小雪:ガチガチに決められる事は無かったですね。摩耶というキャラクターは函館特有の空気感が作っているのだと思います。私自身も函館の街をすごく満喫しました。見る所もたくさんあって、空気も食べ物も美味しくて、人も優しくて。

――小雪さんは様々な映画に出演されていて、存在感が大きいので『わたし出すわ』が単独初主演ということに驚きました。

小雪:私も言われて気付きました。お仕事のお話をいただいた時は、主役かどうかは関係無くて、一緒にやりたいと思ったら、どんな小さな役でもいただきたいと思っていて。最初は摩耶という役を演じる時に、すごく悩みました。でも、函館の街を楽しみながら暮らして、食事をして、景色を見ているうちに監督に「あ、摩耶の顔になった」と言われたんですね。函館が私を摩耶にしてくれた。

――函館をどのように過ごしたのですか?

小雪:カヌーをしたり、馬に乗ったり。他のキャストの方が現地入りした時は私が函館をガイドしたんですよ。私はキッチン付きの部屋を借りて撮影の1ヶ月間暮らしていたので、あとはその土地の素材で自炊をしていましたね。ただ、好きな物を作って食べるだけでも、自分で料理を作るということは健康になれますよ。

――特によく作る料理は?

小雪:そうだなあ。ネバネバ系がすごく好きなんです。納豆とかオクラとかとろろとか。それを合えて、丼にしたり。