中川翔子(撮影:野原誠治)
 シングル「Brilliant Dream」でのデビューから3周年を迎えた今年7月、自身が“ネ申”と崇める作詞:松本隆&作曲:筒美京平のコラボレーションによるシングル「心のアンテナ」を発売した中川翔子。翌8月には「香港動漫電玩節」にて1万人を前に初の香港ライブを開催し、世界5大映画祭の一つ「ロカルノ映画祭」にて初のスイスライブを経験。10月24日には日本武道館ライブ“中川翔子 超貪欲☆まつり IN 日本武道館”を控える中、10月14日に発売した記念すべき10枚目のシングル「ありがとうの笑顔」がオリコン週間ランキング初登場6位を記録し、同ランキング・トップ10入りを8作連続に更新した。

――7月に発売した前作「心のアンテナ」からの間でいうと、8月には香港とスイスでライブをやられましたが、現地のお客さんの反応は如何でしたか?

中川翔子(以降、中川):アニメソングって、本当に私も人生でいっぱい助けてもらって、古いのも新しいのも大好きで、毎日すごく聴き続けてきたので。自分でも歌えてすごく嬉しかったんですけど、世界の人がそう思ってるというのがすごいですよね。水木一郎さんとかが世界の何万人の前で歌ってらっしゃると聞いて、改めて本当にすごいなって思いました。香港って本当にいつか住みたいと思ってるほど大好きで何十回と行ってる場所で、日本のテレビの仕事で行ったことはあったんですけど、香港でのイベントというのが念願中の念願で。昔、デビューしてすぐにジャッキー・チェンの事務所に入っていて、香港の映画に出たいと思ってたんですけど、事務所が無くなって辞めちゃったことがあって。広東語を習ってたからというのもあるんですけど、香港での仕事が夢だったので、アニメソングのおかげでライブがあって行けたのがすごく嬉しくて。

私のことは全然知らないはずだと思っていたんですけど、エッセンシャルのCMが香港でもやってたらしく、空港に着いたらファンの人がいっぱい迎えてくれて。「えっ!なんで知ってるんだろう?」って思ったんです。MCを全部広東語でやりたいから、ライブが始まる前まで現地の通訳さんに習ってて。「どうしよう?誰も知らなくてシーンとなって、まばらなんじゃないですかね」って言ったら、「まぁ頑張って下さい」みたいなことを言われて、「こりゃ、ヤバイな」ぐらいに思ってたんですけど。まず握手会の時に、もう割れんばかりの、「日本でこんなに囲まれたこと無いぞ」っていう大歓声と大熱狂で。みんな自由にめちゃくちゃカメラで撮るから、「なんだ、これは?」みたいになってて、私も日本から来たみんなも大混乱で。ライブが始まったらもうすごい盛り上がりで、歌ってる間もずっとフラッシュで撮りまくりで、全部日本語で一緒に歌ってくれて、もうすごく衝撃でした。楽しいまま、あっという間にステージが終わって。いつか香港でワンマンライブをやる人になりたいという夢が出来たので、また頑張ろうと思いました。

香港から帰ってすぐスイスで、すごくめまぐるしい夏だったんですけど、スイスは念願のポケモンの主題歌と共に。ロカルノ映画祭は結構広くて、他の出品映画の日本のスタッフとかには全然会えなくて。香港は日本から来てくれた子もいっぱいいたんですけど、スイスは日本人が一切いなくて。そんな面白いぐらい「誰もいないぞ」っていう中、1万人の前で歌うのはビックリしましたね。緊張しちゃって、歌詞を間違えました(笑)。だけど、後からロカルノ映画祭の60年の歴史で、歌を歌った人は初めてだと聞いて、すごく大きな体験でした。

――その後「Animelo Summer Live 2009 – RE:BRIDGE -」では、さいたまスーパーアリーナで約2万5千人を前に歌われましたが、普段の自分のライブとはまた違う客層でしたか?

中川:本当にアニメソングを愛している方々で、違う層ですね。言ってみたらもう“アニソンの紅白”みたいなステージだし、すごく憧れのアニソンの皆様もいっぱいいるステージの中でいきなり初登場だし、「怖いなぁ、絶対にアウェーだろうな」と思いつつ。でも自分もアニメソングが大好きで育ってきたのは嘘じゃないから、みんなと一緒に楽しみたいという気持ちを伝えようと思って、意気込んで行ったんです。だけど、前に歌ってた人が毎日聴いてる「マクロス」のMay’nちゃんで、イヤーモニターから聴こえてくる歌が上手すぎて泣きそうになってしまって。そうこうしてる内に出番で、階段を駆け上りながら、イントロで「アニサマ来たぜー!」みたいに言うことになってたんですけど、「アニャニャ…」ってなっちゃって全然言えなかったですね(笑)。始まっちゃうとやっぱり楽しいんで大丈夫なんですけど、もう人数が半端じゃないために、本当の宇宙の中に投げ込まれたみたいなスケールのでかさにすごくビックリして。また、これからも出られる人になりたいという想いも高まりました。

――では、最初の予想と反して、アウェーな空気ではなかったんですね。

中川:そうですね。スイスは分からないですけど、香港もアニサマもみんな温かかったです。

――ちなみに、なぜ今こうしてアニソンが売れてると思いますか?

中川:私にも分からないですけど(笑)。今びっくりするぐらい、オリコンがほとんどアニソンで埋まりますよね。やっぱり買うということは、グッズとして持ってないとおかしいぐらい、お祭りみたいに流行るムーブメントがありますもんね。