9月末に幕張で東京ゲームショウが開催された。以前よりも盛り上がりに欠けていたというのが全体的な印象だった。今回はこのゲームショウでの印象と業界の現状について考えてみたい。

■世界の中での東京ゲームショウの位置付けの低下

 今年のソニーのゲームをめぐる発表をみると、東京ゲームショウの地位が相対的に欧米と比較して低下したと考えられる。6月の米国におけるE3ではPSPgo、新しいモーションセンサーの発表、8月のドイツにおけるGamescomでは、新型PS3の発表と値下げ。そして、東京ゲームショウにおいては、PSP-3000の値下げのみというもので、新型ハードに関しては大きな発表はなかった。もちろん、新しいモーションセンサーについてはE3時よりもソフトのタイトル等の新しい情報が発表されたものの、想定の範囲内のものといえる。

 確かに、欧米と比較してPS3は日本での販売状況は出遅れているといえる。しかし、それ以上に日本のゲーム市場そのものがこの10年間のうちに成長した欧米市場に対して、相対的に成長が止まってしまった点がその背景として考えられよう。すなわち、世界の中でゲームビジネスを考慮した場合には、日本市場は従来よりも重視されなくなりつつあるのではないだろうか? 特に、プラットフォームホルダーからすれば、販売数量が多い地域により優先的に経営資源を投入するようになるのは合理的だろう。

 一方で、東京ゲームショウに出展していない任天堂がWiiの世界での値下げを発表した方がゲーム市場にとっては大きなニュースだったといえる。東京ゲームショウ前後に発表すると、ニュースとしてのインパクトが大きいことや他社の発表のインパクトを打ち消す可能性もあることを考えると、マーケティング戦略上は有効的だったといえよう。

■ヘビーユーザー向けイベント?

 この数年間、任天堂は東京ゲームショウには出展していない。その背景を推察すると、任天堂がターゲットとするユーザー層と東京ゲームショウに参加するユーザー層とは異なることから、東京ゲームショウがマーケティング戦略上、他社ほど効果がないからと考えられよう。確かに、一般公開日にゲームショウに参加するユーザーは休日にわざわざ行くくらいなので、ヘビーユーザー層といえる。任天堂の掲げる「ゲーム人口拡大」という視点からすると、東京ゲームショウはその対極ともいえる。
イメージ画像です。東京ゲームショウの写真ではありません。

 ところが、この数年のヘビーユーザー層向け新規タイトルで、日本でヒットしたタイトルはほとんどない状況だ。DSやWiiでヒットしたタイトルの傾向はライトユーザーや新規ユーザー層を取り込んだ「脳トレ」や「Wiiスポーツ」等のタイトルだ。確かに、DS向け「ドラゴンクエスト?」はシリーズの過去最高の出荷本数になる見込みではあるが、「ドラゴンクエスト」という看板の持つ意味が大きい。

 今回の東京ゲームショウでは、「ファイナルファンタジーXIII」の試遊が可能だった。ソフトの発売日はゲームショウ以前の9月8日に発表された。すなわち、発売日を東京ゲームショウの前に発売し、ゲームショウに参加するインセンティブを作り出し、実際に試遊することで購入につなげるという販売促進戦略の中で、東京ゲームショウが位置付けられているといえる。他社においても、年末商戦に向けての販売促進の場所と位置付けているようなケースが目立った。したがって、ゲームショウ当日にヘビーユーザーが求めるような発表がある可能性は低くなっている。


岡三証券シニアアナリスト 森田 正司[著]

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