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売上6倍、時価総額6割 - HPとAppleに学ぶ、デザインの力

一週間前の今日、AMN経由で日本HPの個人向けPC冬モデル発表会に行ってきた。



そして今日、Apple Store銀座に行ってきた。



いやでも理由がわかった。


なぜAppleの6倍以上PCを売っているHPの時価総額が、Appleの6割しかないか、が。




前四半期、HPは全世界で1612万台ものPCを売った。もちろん第一である。


同時期に売れたMacは、Apple Reports Third Quarter Resultsによると「わずか」260万台。上のレポートには、Othersにまぎれて出てこない程度の値でしかない。



AAPL vs HPQ,DELL,GOOG,MSFT; 1yr @2009.10.21

しかしこの印象は、時価総額を見ると逆転する。Appleの現時点における時価総額は1780億ドル。これは1756億ドルのGoogleをわずかながら上回り、1621億ドルのIBMをも上回る。HPのそれは1155億ドル。


なぜだろうか。HPにiPhoneとiPodがないから?


もちろんそれは大きい。しかし総売上で見ても、HPはAppleの三倍近くあるのだ。今やAppleの主力商品となったiPhoneとiPodだけみても、納得しがたい。


しかし、この二つの商品を比べてみれば、腑に落ちる。TouchSmart 600PCiMacだ。TouchSmartの上位機種600PCが、iMacの下位機種である21インチモデルと真っ向から対決する。


長らくMacユーザーの私の目から見ても、TouchSmartはなかなか魅力的だ。名前どおりタッチスクリーンを備えていて、iPhoneのようなマルチタッチにも対応している。



Windows 7も、少なくとも Vista よりはずっと軽く感じた。悪くない。iMacにはない地デジチューナーも備えている。しかし、「悪くない」で留まってしまっているのである。たとえば、タッチスクリーンを使うときにはボタンをはじめとするコントロールが大きくなるなど、Appleであれば必ずするであろう配慮がないのだ。


いや、配慮できないのだ。なぜならそれはOSの領分であり、Windows 7のなわばりだからだ。


このモデルに限らず、発表会での質疑応答に、自ら全てを采配することが出来ぬ悔しさがにじみでていた。たとえばネットブック。あいもかわらず標準搭載RAMが1GBしかないのは、「Windows免税点」がそこにあるからだ。2GB以上積めれば見違えるように魅力的になるのに、それを100も承知しているのに、HPは指をくわえているしかないのだ。


Appleはまさにその逆だ。ユーザーが触れる部分は、好き放題にデザインしている。今回タッチパッドの代わりに、「タッチマウス」を用意してきたことにこれは象徴される。Appleにとって「この美しい」画面を指紋でべたべたにされるのは気が済まないことであったのだろう。ユーザーの視点から見ても、袖で拭えるiPhoneならとにかく、小モデルでも21インチもある画面をしょっちゅう拭く羽目になるのは便利とは言えない。


AppleもHPも、100%自前で設計しているわけではない。今のパソコンは、MacもPCも「部品の寄せ集め」であることに変わりはない。しかしApple製品は--Apple製品だけが--そうであることを感じさせない。全てのデザインに責任を持っているからだ。


21 vs 27 on Twitpic

このことが、製品のPRのあり方にも反映される。HPの製品発表会は、「記者クラブ」に対して、Microsoftとの協賛--いや監視の元--行われるのに対し、Apple Storeはいつもより込んではいるものの、特別な催しはなかった。それでいて、ずっと快適に「取材」できるのだ。


右の写真は、21インチと27インチの大きさの差を把握するために妻に撮影してもらったものだが、実はこの時にApple Storeの人がとっさに人をよけてくれた。名刺を頂いたらなんとそこには「広報部長」とある。彼は私が「アルファブロガー」だのということは一切知らなかっただろう。知っていたとしても、そんなそぶりは一切見せなかった。ただ「こいつに写真を撮らせたら、Appleにとっていいことがありそうだ」と瞬時に判断し、瞬時に動いたのだ。それも私を「えこひいき」していると周囲の客に受け取られないようにすばやくさりげなく。


これもまた、Appleなりの User Experience に対する責任の果たし方の一貫なのだろう。


Appleほどではないが、Googleの株価回復も目覚ましいが、両社に共通しているのは、User Experienceに対して100%責任を負うという姿勢だろう。だからAppleはハードもソフトもつくり、Googleもまたそうしている。100%自前で制作しているわけではないが、100%自前でデザインしている。


会社の価値は、どれだけ自社製品のデザインに対して責任を負うかで決まる。


そしてデザインに対してソフトウェアが占める割合は、今後もますます高まり続ける。


いいかげんそろそろ Apple 以外のハードウェアベンダーで、ソフトウェアを自社デザインするところは表れないものか。何なら Microsoft だっていい。Xboxでやっているのだから出来ないとは言わせない。こうも Apple の一人勝ちが続いては、ユーザーとしても張り合いがないではないか。


Dan the Designer of His Own Life



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小飼弾

オープンソース開発者。ディーエイエヌ有限会社代表取締役。

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