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60年近く前の治水対策がいまでも有効なのだろうか

淀川といえば蛇行する姿が美しいのですが、かつては台風となると必ずその水位が報道されるほど、堤防決壊の恐れがあったところです。実際、子供の頃に台風の後にはいつも堤防に見に行ったものですが、普段の美しい淀川とは一変した光景がありました。
堤防間近まで水位があがり、ごうごうと濁流が流れる様を見て、河川の怖さを実感したものです。
実際、ジェーン台風だったでしょうか、住んでいた地域とは対岸が決壊したことがありました。しかし、その後は、川底の浚渫工事などの治水対策が進み、かつてあった堤防決壊の危険性はなくなり、台風の際の報道でも姿を消しました。
多くの河川はどんどん整備されてきています。なかにはその整備が行き過ぎだと感じるほど、自然が失われてしまったところもあります。つまり時代は大きく変わったということでしょう。

さて八ツ場ダムですが、治水という点では、カスリーン台風による水害もあって、利根川流域を守るということで最初の基本構想が発表されたのが1952年です。もう計画発表から57年も経っています。それからいろいろな経緯があったようですが、それほど昔に考えられた治水効果が現在でも有効かどうかは、専門家ではないので分かりませんが、疑ってみるのが普通でしょう。

だから、今回の建設中止で残された問題は住民の人たちが受けてきた理不尽さ、ダムに振り回されてきた歴史であり、また住民の人たちの感情と、これからの生活の展望です。報道が間違っているのかもしれませんが、すくなくとも国民には、ダムの必要性は薄れ、むしろ八ツ場ダムは住民問題だと映っているのが本当のところではないでしょうか。

そういった状況のなかで、八ツ場ダム建設中止をめぐって、1都5県の知事さんの人たちが、現地視察を行い、ずいぶん早々と反対の共同声明を出しましたが、ちょっとタイミングに対するセンス、状況を読む力が欠けているように感じます。

本来なら、逆ではないでしょうか。アピールしたいのなら、前原国交相の工事中止発言の後、すぐさま現地視察に行くべきだったし、工事継続の根拠をきちんと吟味せず、いきなり工事中止反対では国民のコンセンサスを得ることは難しいですね。

現地に行って、いきなり工事中止反対だと共同声明を行ったことは、感情でしか判断していない、あるいは住民感情に相乗りした大衆迎合主義に過ぎないという印象を受けてしまいます。

石原都知事は、異常気象が続いており、治水対策のためには八ツ場ダムが必要だとおっしゃっていたのですが、果たして50年以上も昔に想定された対策が、はたして今なお有効なのかの検証をされたことがあるのでしょうか。
それなら、東京都が考える治水対策の全貌を示し、八ツ場ダムの必然性を訴え、議論を巻き起こすべきですね。ばたばたと、ヘリで現地に行くパーファーマンスはかえってマイナスではないでしょうか。
新銀行東京の失敗、オリンピック招致の失敗、そして都議会は民主党が第一党。四面楚歌のなかで、石原都知事の立場も微妙になってきており、なんとか活路を見いだしたいという焦りなのかと穿った見方もしたくなります。

八ツ場ダム問題は、これまでの自民党と国土交通省が押し進めてきたハコモノ、コンクリート行政の負の遺産をどう処理するのかという問題でもあり、そういったハコモノ、コンクリート行政に国民はノーという答えを出したわけですから、よほどの効果が示されないないかぎり、今となっては工事再開は、民主党政権を揺るがしかねない問題でもあるので、ありえないのではないでしょうか。
知事さん達には悪いですが、なにか読みが浅く、戦術的にもどうかと疑問に感じてしまいました。民主党政権を生み出した国民の意識や感情ををもっと見た行動をしないと選挙も危ないかもしれません。、またそれはそっくり民主党にも言えることだとは思いますが。

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大西 宏のマーケティング・エッセンス

大西宏

コア・コンセプト研究所代表取締役、ビジネスラボ代表取締役。

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