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禁じ手・付録に頼る女性誌は、カルチャーを作ることを捨てたのか

2009年10月21日12時00分 / 提供:サイゾーウーマン

サイゾーウーマン
禁じ手・付録に頼る女性誌は、カルチャーを作ることを捨てたのか
[文化女子大教授×WWD編集長対談【第3回】]

【第1回はこちら】
【第2回はこちら】

 第1回、2回は"かわいいカルチャー"の変遷を紐解いてもらったが、第3回からは雑誌文化や女性誌の"活路"についての意見を伺った。

――業界のけん引役である「sweet」ですら、最近は誌面がカタログ化しているという指摘が多いようですが、女性誌が全般的に「カルチャーを作ること」を捨てているのでは、という危惧もあります。

山室 80年代〜90年代のころは、どのファッション誌も、スーパーモデルを起用したり、ビジュアルの精度を上げていこうという風潮があったんですよ。でも、その後、グッチやプラダなどラグジュアリーブランドが日本にどんどん支社を出してきた。彼らは、広告に金も出すけど、口も出すようになってきたんだよね。でもある時期までは、「赤文字系雑誌に広告を出すなんて、ブランドの格を考えたらダメ」という考え方があったから、雑誌の作り手の方も並行輸入のお店を取り上げてたと思うんだ。

 ところが「JJ」が作ったブランド攻略ブックを持った若い女の子たちが、パリやミラノの本店の前にずらーっと並んだのを見て、ブランド側としてもなにか利用できるんじゃないかと考え始めた。だからはじめは香水や化粧品の広告から始まって、いまやバックや服の貸し出しも可能でしょ? 雑誌側も効率性とステータスを考えれば、ブランド側の意見をのむこともあり、と思った瞬間から雑誌文化の劣化が始まった。広告ビジュアル以上の物をつくろうという志がなくなったんだよね。

古賀 私は雑誌のカタログ化は、ある意味では、しょうがないって思っています。情報量の多い社会の中で、雑誌の役割が変わって来たということでしょう。一過性の情報ならインターネットで済むんだし。

――ブランドムックについてはどう感じてらっしゃいますか?

古賀 ブランドムックというは会社の利益を確保するために作っているのだろうな、と思っています。あれは雑誌の進化系では決してない。

山室 あれは物販の新形態ですよね。

古賀 そうですね。付録が本体で、あくまで本という体裁を整えるためにムックが付いているという形。ただね、うちの大学のブックコーナーの人も言っていたんですけれど、「今、雑誌に付録がついているのが当たり前だから、付いていないと損をする気分になる」っていうんですって。

山室 昔は本を手にとって、クリッピングをしている人も多かった。でも今の若い子たちは、クリッピングなんてしないでしょ? 必要な情報はいつだってネットだから引き出せると思っている。その世代に、ネットじゃなく雑誌にしかない、何かを訴えるしかなくなった。その何かが付録だってことなんだけど。でもそれは本来、雑誌文化の敗北を認めることを意味するんだけどね。

古賀 そうなんですよね、自分の首を自分で締めているということ。「sweet」の付録を見ると、その品質が気になって。あまりにも付録の域を出てないですよね。付録として出している、ブランド側にも疑問を感じさせられました。

山室 付録だって、もともとは三方一両損というか、雑誌・ブランド・読者のwin-win-winの関係だったはずが、三者ともにルーズになってきている。

――雑誌がカタログ化する一方で、『ショップチャンネル』など、24時間買い物ができる番組も台頭しています。今後、女性誌と言うのはどこへ行くと思われますか?

古賀 今はWebもフリーペーパーも充実していて、雑誌という1000円近い値段のものの価値が問われていると思います。それは付録でいいのか、と言われればそれは違う気がしますね。むしろ禁じ手だと。実際の作り手になると大変だと思うけど、もうちょっと踏ん張ってほしいかな。

山室 Webといえば、今後、出版社が気にしなければいけないのは、広告を出稿していたクライアントが自社のWebですね。どこも、直接消費者にアプローチできるWebに相当の力を入れ始めている。極端にいえば、「雑誌なんていらないじゃん」という価値観が生まれ始めている。そんな時だからこそ、編集者のキャラクターやポリシーが問われていると思います。

――お二人が「この雑誌なら生き残れるんじゃないか」という雑誌は?

山室 僕は「HERS」に頑張ってほしいなあ。この分野をもっと研究すれば、今、元気がない百貨店さんは回復できるんじゃないかな。(雑誌キャラクターの)萬田久子さんが来た洋服には、問い合わせが来てるようだし。我々は想定している、ファッション誌の読者層というのが、この雑誌にきれいに収まっているような気がする。「25ans」がすごいなと思うのは、読者があの雑誌の世界観をそのままそっくり持っていること。パーティーにお邪魔すると、あの世界観の人がいっぱいいて、下手したら編集者よりも情報を持っている。

古賀 最近は以前ほどファッション誌を見なくなったのですけれど、何かを挙げるとすれば、ファッション誌というジャンルにいれてよいのか分かりませんが「I.D.」、それか「NYLON」あたりでしょうか。

山室 「commons&sense」や「Numero TOKYO」など、まだ志を持って頑張っている雑誌もいいですね。ティーン誌なら「Popteen」かな。"カワイイ"の次に来る"何か"の源流を持っているような気がするので、期待してみて行きたいですね。

古賀令子(こが・れいこ)
 東京都出身。お茶の水女子大学卒業後、ファッション情報分析および商品企画業務に携わり、フリーランスのファッション・ライター/翻訳者を経て、2002年より文化女子大学教授。ファッション誌を主資料に近・現代ファッションを研究。著書に、『コルセットの文化史』(青弓社)。

山室一幸(やまむろ・かずゆき)
 上智大学理工学部卒業。1985年より「ファッション通信」(BSジャパン)の番組プロデューサーとして、20年以上にわたってパリ、ミラノ、ニューヨークを中心に世界各国のファッションシーン最前線を取材。2006年より現職。

「かわいい」の帝国(青弓社、1995円)
 主に紙メディア(女性誌)から、「カワイイ」文化の誕生から衰退までを辿った書籍。中原淳一から「アンノン族」、ロリータやゴスロリ、「かわいい男」の誕生など、年代を追って、社会情勢や価値観の変化などを「かわいい」のフィルターを通して、解説していく。巻末の「『かわいい』関連年表」は、女性誌を語る上での重要な資料となりうる。

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