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河川からタミフル、薬剤耐性に懸念:京都大の研究

2009年10月05日11時14分 / 提供:WIRED VISION

WIRED VISION
河川からタミフル、薬剤耐性に懸念:京都大の研究

Janet Raloff


ベルギーにある下水処理場、画像はWikimedia Commons

インフルエンザ治療薬『タミフル』が、下水処理場で分解されずに河川を汚染しているという調査結果が日本で発表された。野鳥においてインフルエンザ・ウイルスの薬剤耐性化が起こり、これが伝播する可能性が懸念されている。

京都大学のGopal Ghosh氏[流域圏総合環境質研究センター博士課程在学]らの研究チームは、近隣の下水処理施設3ヵ所から河川に放流された排水と、放流先の2つの河川のいくつかの地点の水をサンプルとして採取した。サンプルを最初に採取したのは2008年の12月はじめ、インフルエンザの流行が始まったばかりの時期だ。その後、季節性インフルエンザの流行のピークである2月はじめにもサンプルを採取し、さらに感染率が下がってから、3度目の採取を行なった。

下水処理場の放流水からは、3回の採取のいずれの機会にも、インフルエンザ治療薬の『タミフル』の成分の活性代謝物であるオセルタミビル・カルボキシレート(OC)が検出された、と、研究チームは9月28日(米国時間)付で『Environmental Health Perspectives』(電子版)に発表した。その濃度は、1回目と3回目の採取の際には1リットル当たり数十ナノグラム程度だったが、流行のピーク時には、ある採取地点で1リットル当たり約300ナノグラムを記録するまでになった。この時期、京都市内では1週間に1738人のインフルエンザ患者を記録している。

下流の河川の水からOCが検出されたのは、2回目のサンプル採取のときだけだった――ほとんどの採取地点では1リットル当たり十数ナノグラムだったが、ある採取地点では、1リットル当たり190ナノグラムを記録した。この地点のある西高瀬川では、下水処理場からの放流水が流量の90%を占める。

OCが下水処理場では除去できないことはこれまでもコンピューター・モデルによって予測されており、京都大学のチームは今回初めてこれを実証したことになる、と語るのは、ドイツのマクデブルクにある公的研究機関ヘルムホルツ環境研究センターWolf von Tumpling Jr博士だ。

Von Tumpling博士の研究では、OCは日光に当たると分解されるが、それには時間がかかるという。濃度が半減するまでには最低でも3週間かかるだろう、と同博士は語る。

ひとたび服用されたタミフルは、事実上すべてが、活性化された状態で環境に排出される、とスウェーデンのウメオ大学のJerker Fick氏(環境化学)は指摘する。タミフルは体内でOCに代謝されて初めて活性化するもので、服用量のうち約80%がOCとなり、少しずつ体外に排出される。残りの20%はタミフルの成分であるリン酸オセルタミビル(OP)で、これはそのままの形で排出されるが、これも下水処理場に到達したら、すぐに活性化しOCに変化する――Fick氏はこのように説明する。

Fick氏らのチームは2年前に、ほとんどの下水処理技術で、除去できるOCは含有量のうち「0%」であると示すデータを発表している。[京都大学のチームによると、沈殿処理した下水を浄化する標準的処理を行なっている2処理場ではタミフルの40%以下しか除去できていなかったが、標準的処理に加えてオゾン処理もする処理場では90%以上除去できていたこともわかった]

下水処理場の放流水は温かく栄養も豊富なので、冬のインフルエンザ流行期には水鳥が集まりがちだ。昨年、OCの水中濃度を計測するためのサンプル採取を日本で行なった際に、「この目でそれを見た」と研究者は語る。

テネシー州にあるバンダービルド大学医学部の予防医学科長であるWilliam Schaffner教授によると、OCにさらされた鳥たちの体内で、ウイルスの一部の株がウイルス耐性をつける可能性があるとしたら、それはおそらく、毎年数千人の死者を出している通常の季節性インフルエンザや鳥インフルエンザのウイルスであって、新型のH1N1型インフルエンザ・ウイルスではないという。というのも、H1N1型インフルエンザは、ヒトの間で流行しているものの、鳥類には広がっていないようだからだという。同教授はさらに、米国では日本よりもタミフル処方の条件が厳しいとも指摘した。

[2009年1月の調査では、日本で分離されたH1N1型のうちの98%に、耐性を持つウイルスが検出されたという。耐性ウイルスは、2007年に北欧で増加傾向が確認されて以来、世界的に増加している。今シーズン分離されたH1N1型ウイルスのうち、米国では97%、EU諸国では95%、オーストラリアや中米、アフリカ諸国では80−100%がタミフル耐性だった。別の治療薬であるリレンザに対する耐性は確認されていないという。

2005年11月にFDAで報告された際には、タミフルの全世界での使用量のうちおよそ75%を日本が占めており、世界各国のうちで最も多く使用されている。同2位の米国と比べて子供への使用量は約13倍。幼児・小児など免疫力が弱い者にオセルタミビル(タミフル)を投与し続けた場合、ウイルスの淘汰に時間がかかるため、その間に体内のウイルスが耐性を持つ可能性があり、小児への投与は慎重に行なう必要があるとされている。

全米24の大都市圏で、飲料水から医薬品の成分が検出されたという日本語版記事はこちら。検出されたのは、抗うつ薬、心臓病の薬、性ホルモン、筋肉増強剤などで、人体から排出され、水処理施設で除去されずに素通りし、環境内に蓄積したものという。医薬品成分も分解できるという「下水を飲料水にする」浄水場についての日本語版記事はこちら]

WIRED NEWS 原文(English)

  • 全米24の大都市圏の飲用水から、医薬品成分が検出 2008年3月11日
  • 「下水を飲み水にする」世界最大のシステム:カリフォルニアからレポート2008年3月11日
  • 米環境保護局、薬品廃棄物による環境汚染に警鐘2003年1月7日
  • 「汚水の塩素消毒」に懸念――発ガン性や生態系への悪影響2005年3月24日
  • 香港の団地のSARS大規模感染、下水施設の不備が誘因 2003年4月23日
  • 家畜に乱用される抗生物質:制限法案に畜産業界は反発2009年8月4日
  • 新型インフルは「ヒト・鳥混合型ではない」+発生源をめぐる論争2009年4月30日
  • 関連ワード:
    タミフル  インフルエンザ  ウイルス  京都大学  鳥インフルエンザ  
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