「月光条例」からおとぎばなしつながりでなにか読もうとグーグル先生に尋ねてみれば、意外な作品がヒットした。「銀曜日のおとぎばなし」、アラフォー世代の女性が少女だったころ夢中になった名作漫画である。

 毛皮商の息子でありながら動物を慈しむ心を持つ青年「スコット・フェリー」。自らが住むロンドンから遠く離れた森の中で、小鳥の背に乗った小さな小さな少女「ポー」に出会う。

 ポーは森に暮らす一族の姫であり、この世に生を受けてから10年たらず、人間の存在を知らずに育ってきた。スコットとの会話で人間の世界に興味を持ち、別れ際にひとつの約束をする。『きっとあそびにいくわ』――その言葉どおりポーはロンドンにいるスコットの前に姿を現した。

 ポーがいなくなった森は大騒ぎ。『10歳の誕生日はちかい』『いけにえとなる人間をさがしに』『人間界へいかねば…』、村の長であるポーの母の美しい面差しに暗い影が落ちる。

 ポーの一族には言い伝えがあった。『新月の銀曜日に生まれた一千人目の女が死ぬとき それは 部族のたえるとき』、その一千人目の女こそがポーであるが、その事実は当人には明かされていない。なぜなら、一千人目の女であるポーが生きながらえるためには10年に一度、人間をいけにえにしなければならないから。呪わしい宿命をポーに知らせまいと、一族の者はやっきになる。

 同時に、一族の者は人間をいけにえにすることに少なからず抵抗を感じていた。しかしそれをやめるには「にじの玉」を見つけなければならない。目前に迫ったポーの誕生日までには到底無理だと考えたポーの母は、一族の安泰のためにいけにえとしてとある男に白羽の矢を立てる。

 森に暮らす小人の少女と心優しい青年とのふれあいから生まれるドラマは思いもよらぬ闇へ。しかしおとぎばなしの世界はきわめて優しく、誰一人不幸にならない結末がきちんと用意されている。それを欺瞞と感じるのならば、あなたにはきっとこの作品は必要ないのだ。

 一族の問題が解決された後、ロンドンでポーは“あいとへぇわのししゃ”として過ごすことに。ちょっとしたボタンのかけちがえですれ違ってしまった人々の心をほぐし、幸せを届けていく。その様は作品にも登場する童話「幸福な王子」のようであるが、あのツバメのような不幸はポーにも、周囲の人間にも一切に訪れない。本物のおとぎばなしよりもずっとずっと温かい、夢に満ちあふれた作品なのだ。

 なにより胸を打たれるのが、スコットの手のひらに乗るほどの大きさであるポーの可愛らしさ。連載されていたのが萌えだの擬人化(ポーは小人であるから当てはまらないかもしれないが)だのが定着するはるか昔で本当によかった。邪念のかけらもなくポーの健気さを楽しめる人にのみおすすめしたい、心洗われる作品である。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)
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