最新および将来の技術動向をゲーム開発者に向けて提供するため、社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が「CESA ゲーム開発技術ロードマップ」を公開しました。世界のゲーム開発現場に比べて日本のゲーム開発は遅れを取り始めていると言われて久しいですが、このロードマップを見ると、日本のゲーム開発はまだまだ発展の余地が考えようによっては山ほどあるとわかります。

ロードマップは5つのカテゴリ、「プログラミング」(プログラミング一般、コンピューターグラフィックス、AI、物理、アニメーション)・「ビジュアルアーツ」(レンダリング、アニメーション、グラフィックデザイン、オーサリング・プロダクション)・「ゲームデザイン」(ゲームシステム、生産性と品質の向上、気にしなければならない周辺技術)・「サウンド」(DSP (Digital Signal Processing)、シンセサイズ・波形生成・音声合成・音声解析、オーサリング環境・圧縮フォーマット)・「ネットワーク」(個人所有データの概念の拡大、P2P利用とリソース共有、WEB技術を取り入れたネットワーク環境の構築、ゲーム・コミュニティ統合)に分かれており、それぞれについて「最新」と「数年後」の状況が書かれています。

詳細は以下から。
CESA - Home
http://www.cesa.or.jp/


この技術開発ロードマップは、ゲーム開発にかかわる様々な技術における最新の動向と、近い将来に活用される可能性のある内容をロードマップとして公開するもので、ゲーム開発者、関連する業界関係者、研究者や学生の活動指針として役立ててもらうことを目的としているそうです。また、今回のロードマップは日本最大のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC(CESA デベロッパーズカンファレンス)」を主催するCESAの技術委員会およびCEDECアドバイザリーボードでの協議により作成したもので、今回が初めての公開となっています。

〜CESA ゲーム開発ロードマップ(プログラミング分野)〜


◆プログラミング一般
<最新>
- C/C++で作成。マルチコアCPUでAPIベースのスレッド制御

<数年後>
- メモリの共有・排他レベルの宣言とスレッド生成・同期の簡略化などをサポートする新言語もしくは言語拡張の登場。参考例としてCUDA/Axum/ATIstream/TBB/ OpenCL/OpenMPなどと、関数言語からのアプローチ
- LLVM/PGO などにみられる実行時最適化技術の向上
- ゲーム本体部分は、徐々にC#やJava などの言語に移行

◆コンピューターグラフィックス
<最新>
- ポリゴンベースのモデル+ マッピングのバリエーション、Deferred Renderingなど

<数年後>
- Voxel/Micro polygon/NURBS/Displacement Map/Tessellation/Fractalなどを使用した、スケーラブルなジオメトリの実現
- Global Illumination/Radiosityなどのリアルタイム化、もしくはポリゴンベースの手法とのハイブリッド化
- ABuffer/Alias-Free Shadow MapsなどのZ-bufferの諸問題の解決

◆AI
<最新>
- FSMのスクリプトベースの実装

<数年後>
- グラフベース、セッティングベースのビジュアルスクリプト
- コード上の条件分岐によらない得点計算、条件判定などによる行動選択。参考例としてGOAP/ Hierarchical Behavior Tree / Probability Based Search など
- 動画、画像、音声、構文解析による自動・半自動コンテント生成

◆物理
<最新>
- 剛体シミュレーション + Constraint Solver、Ragdoll 物理など

<数年後>
- セットアップに頼らない、マテリアルごとの破断面や壊れ、変形の表現
- ばねモデル/FEM を使用した破壊シミュレーション
- 流体シミュレーション/クロスシミュレーションなどで粒子法の一部適用

◆アニメーション
<最新>
- スケルトンベースのキーフレームアニメーション、IK+自動補完。

<数年後>
- 外力応答
- 筋肉シミュレーション
- モーションキャプチャーデータの動的解析と組み合わせによる生成/学習的手法によるアニメーションデータの作成などのプロシージャルなアニメーション

〜CESA ゲーム開発ロードマップ(ビジュアルアーツ分野)〜


◆レンダリング
<最新>
- プログラマブルシェーダの活用、HDR・AO・SH・PRT など
- 精細で表現力の高い、ロバストなシャドウイング

<数年後>
- 高スケーラビリティの実現
 ジオメトリシェーダ、ジオメトリックイメージなど
- インタラクティブレイトレーシング
- AR・立体視・高フレームレートなど、出力段の進化
- ベクタ表現、点群表現など形状表現の多様化

◆アニメーション
<最新>
- ハイレベルモーションキャプチャ
 パフォーマンスキャプチャ、フェーシャルキャプチャ
- 剛体物理シミュレーション、物理ベースモーション生成

<数年後>
- 高度DB 検索をベースにした、インタラクティブモーション
- AI ベースのモーション生成
- 高度な物理シミュレーション(破壊、流体、筋肉、軟体など)

◆グラフィックデザイン
<最新>
- FLASH の浸透
- モーショングラフィックスを活用したダイナミックな演出

<数年後>
- ビヘイビアベースのインタフェース演出
- 素朴なリストやアバター以外のネットワーク表現
- 解像度フリーなデザイン

◆オーサリング・プロダクション
<最新>
- プログラマブルシェーダの要求に応じた抽象データ生成
- 3D スキャン、3D ブラシツールなどの高効率手法の導入
- 大規模データの効率編集、分散環境
- 高効率なコンテントパイプライン
- アセット管理システムの浸透

<数年後>
- 多様な色空間・HDRI テクスチャのハンドリング
- ファインアート・実在物からのデータ構築
 インバースレンダリング
 シンタクス・ルール抽出からのプロシージャル化
- ファイル操作やバージョン管理を超えた、コンカレントオーサリング
- DCC ツールとゲームランタイムとの相互乗り入れ
- オープンコンテンツの積極的な利用

〜CESA ゲーム開発ロードマップ(ゲームデザイン分野)〜


◆ゲームシステム
アイデアの出し方、元になる要素、操作しやすいインターフェースの生かし方
<最新>
- カジュアルゲームとコアユーザーの2極化
- ダウンロード販売の普及
- UGC の増加と共存
- 専門者が監修するゲームの増加
- 据え置き機+携帯機のようなプレイ環境を意識したゲームデザイン
- 特定コミュニティーの顧客層に専用カスタマイズされたゲームデザイン

<数年後>
- 教育機関、リハビリや社員研修などへのゲームデザインの導入
- ユーザー層の年齢上昇を意識したゲームの増加
- 心理学に基づいたゲームデザイン
- ユーザーのプレイ情報を基に進化し続けるゲーム
- 常時ネット接続可能な携帯型情報端末を活用したクラウド型ゲーム
- UGC ゲームを適正に審査しパブリッシングを補助する流れの一般化

◆生産性と品質の向上
アイデアを生かすために生産性をあげる技術
<最新>
- 事前に行われるテスト及び市場に出てからの購入ユーザーによる評価
- Flash などによる短期間でのアイデア実現
- プロトタイピング、ホワイトボックス開発手法
- 手書きやツールによるスクリプト生成
- ローカライズが必要な国の増加

<数年後>
- データマイニングを利用したマーケティング
- 自動テスト(ゲームシステム、整合性)
- 難易度を自動調整するAI の搭載
- ゲーム開発に即した工程管理システムによる適切な進捗予測
- 高度なローカライズの必要性と自動化(翻訳と文字数調節、桁区切りや単位の自動変換、カルチャライズ)の発展

◆気にしなければならない周辺技術
アイデアの元になる未来に予想される技術
<最新>
- 深度を考慮した立体的な画像認識技術
- マルチタッチデバイスの増加
- カメラ及びGPS と電子コンパスなどによるAR 技術
- 加速度センサー

<数年後>
- 立体映像の普及
- 表情を読み取る技術の一般化
- 個人認識技術を使ったゲームデザイン
- 脳や皮膚からの微弱な信号を元に操作
- 環境を制御できるフォースフィードバック

〜CESA ゲーム開発ロードマップ(サウンド分野)〜


◆DSP (Digital Signal Processing)
<最新>
- サウンド処理が完全ソフトフェア駆動の時代へ突入
- DSP がプログラマブルになり、独自制御が可能になった
- 周波数ドメイン型音声処理の開始

<数年後>
- 独自DSP 開発が一般化。信号処理を扱える専門知識が必要になる。
- DSP など信号処理を簡単に行えるツールが普及し、ワークフローの一部となる
- VST のようなオーディオ入出力標準規格が、ゲームプラットフォーム上でも採用され、より一般化される

◆シンセサイズ・波形生成・音声合成・音声解析
<最新>
- 基礎的物理現象(遮蔽,回折,透過,ドップラーなど)の実装が始まる
- 事前準備された複数波形の音量制御/音質制御がより高度化
- 物体質量、形状、速度に応じた発音波形選択(フィジックスとの連携開始)
- 音声合成エンジンによる発声利用や、音声解析による自然語入力の実験段階

<数年後>
- 従来の波形合成技術の更なる進化(周波数ドメイン信号処理、波形モーフィング)
- 波形記憶型から、波形生成型へのアプローチ
- より高度な物理演算エンジンとの統合、AI エンジンの発音制御への応用
- 音響工学や建築音響など、空間音響の研究を元にしたシミュレートへの挑戦

◆オーサリング環境・圧縮フォーマット
<最新>
- ゲームエンジンと同化した音源配置などのオーサライズ環境を提供
- 楽器音サンプリング+楽譜データ(MIDI など)による楽曲作成から、生音取り込みへと移行が進行
- サラウンド対応コーデックが一般化
- 楽曲自動生成の試み(シーケンシャル技術の音楽分野への応用)

<数年後>
- CG オーサリングツールとの連動構築による作業効率化が加速
- DAW ソフトとの完全連携による作業の効率化、新規ワークフローの確立・DAW データをインポート、またはプラットフォーム上で動作する環境
- スクリプト言語による、インタラクティブ作曲/制御技術が実用化
- メタデータを含んだ音声フォーマットの普及と有効活用
- 音声伝達用のコーデック開発が加速(ボイスチャットがより普及)

〜CESA ゲーム開発ロードマップ(ネットワーク分野)〜


◆個人所有データの概念の拡大
<最新>
- サーバ上「個人情報」と「個人に関係の深いゲームデータ、アバター、個人が記録した日記・ブログ文章」が存在している
- サーバ運営者は法的な責任もあって「個人情報」を保護し、対象者の意思に基づいて取り扱いを行う

<数年後>
- 個人情報を超えて、個人が所有するとみなされるデータ範囲が拡大する。ゲームデータなども個人が所有しているものとして、サーバ運営者が保護責任を負う。
- 拡大された個人データでの所有権を実現するセキュリティ機構、プロトコルが実現される

◆P2P利用とリソース共有
<最新>
- 対戦ゲームなどのためにP2P 技術を利用している。
- データ転送効率の向上やサーバ負荷軽減のためにP2P によるデータ配信を行っている
- サーバ群をクラウドとして仮想化し、大規模コンピューティングリソースを提供している

<数年後>
- P2P を積極的に利用してゲームプレイ環境側からもゲーム世界構築のためのリソースを提供する。クライアントもサーバの一部となることで、サーバとクライアントの境界が曖昧となる
- 構成の変わるリソース群をゲーム空間提供リソースとして仮想化する技術が確立される

◆WEB技術を取り入れたネットワーク環境の構築
<最新>
- ステートレス特性をもつWEB 技術による大規模サイトの構築と運用が行われている
- ステートフルなサーバ=クライアントに基づくゲームプレイ環境を提供している

<数年後>
- WEB上で培われた多数接続・負荷分散技術を応用したゲームサーバ構築が進む
- 接続技術が標準・オープンであるものを使うためアクセス端末を選ばないゲームプレイ環境が実現される

◆ゲーム・コミュニティ統合
<最新>
- ゲームプレイ環境とそれを補完するWEB ベースのコミュニティが存在している
- WEB ベースのゲームと従来型ネットワークゲームとのゲーム企画的連動、一部データの連動を進めている
- ブラウザplugin を含むWEB 技術をベースとするカジュアルゲーム環境の提供している

<数年後>
- コミュニティ、WEB ベースゲーム、サーバ=クライアント型ゲーム、が同一のデータソースを共有する
- 端末によらない等価的なアクセス手段とプロトコルが確立される
- 端末の表現力に応じた複数ビューをもつゲーム環境が提供される

なお、CESAでは、CEDECの開催に併せて毎年1回このロードマップを更新し公開していく予定であり、分野は必要に応じて見直しを行う予定であるとしています。

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