私はこの【3分でわかる】漫画感想文シリーズの他に、お笑いについても少々筆を取らせてもらっている。今回は一お笑いウォッチャーとして漫画「べしゃり暮らし」で感じたつれづれを綴ってみよう。

 主人公「上妻圭右」は“学園の爆笑王”である。昼休みの校内放送はもちろんちょっとした日常でもボケまくり、校内ではスベリしらずだ。

 そんな上妻がはじめてアウェイの洗礼を受けたのは、漫才コンテスト「NMC」の一回戦。校内では大爆笑のトークやギャグがことごとくスベったのである。さらにフレーズあるあるでテレビに出だしているコンビ「るのあーる」が、自分はけっしておもしろいとは思わないのに周囲の客は大爆笑しているのを目の当たりにし、衝撃を受けた。『よく見る奴らだからこんなクソネタでも笑えるのか……!?』

 この感情はプロアマ問わず芸人なら、いやお笑い好きなら誰もが感じたことがあるはずだ。このやりきれなさを上妻はあろうことか『客がバカ』の一言で片づけてしまう。

 実際にこんなことを臆面もなく言う芸人がいたらひっぱたいてやりたいが、べしゃり暮らしはフィクションである。客がバカ論はとりあえず置いておき、“よく見る奴らだからクソネタでも笑える”現象について考えてみよう。

 お笑いは芸人だけでは成立しない。観る者あってこそのものだ。どんなにおもしろいネタを披露したところで観衆が笑わなければ成功とはいえない。観衆がお笑いを作っているといってもいいほどだ。

 そこで重要になってくるのが、作中でいうところの“笑える空気”。いかにしてこれを作り出すかが芸人にとっての課題となる。

 笑える空気を生み出すにはさまざまな角度からのアプローチがある。おもしろいネタがその筆頭であることはしかるべきだが、時としてそれを脅かすほどの力を持つのが共感性だ。

 共感は安心を生む。相手を選ぶことはままあるが、誰にも共感しない、誰からも共感されないことが快感であるという人はまずいない。隣で誰かが笑っていれば自分も笑いたくなるのは心情というよりも生理である。

 有名な芸人、有名なネタは、有名な分だけ共感性を持っている。安心して笑える空気がすでに存在しているわけだ。さらにいえば、多くの人が覚えやすいインパクトのあるフレーズにはとんでもない力がある。「なんでだろ〜」「あるある探検隊!」「武勇伝、武勇伝」「ラララライ」「そんなの関係ねぇ!」「ルネッサ〜ンス!」「スタッフゥー」「わかちこわかちこ」、ネタよりも空気先行で芸人が売れるメカニズムがここにある。

 さらに一歩進んで、共感を笑いに利用しているのがいわゆるあるあるネタ。このご時世でもいまだに、すでに100万回は言われたであろうあるあるネタを得意げに披露する芸人が消えないのは、あるあるネタの笑える空気を生み出すポテンシャルの高さゆえだ。しかしあるあるネタが禁断の果実であることは、芸人はおろか一般のお笑い好きの間でもすでに周知の事実である。ただのあるあるネタで誰もが笑える空気を作り出せた時代はもはや終わったのだ。

 漫画のテンションにつられたのか、私もついつい違う方向性で熱くなってしまった。【3分でわかる】を【お笑い峰打ちコラム】にすげ替えるか悩みつつ、もう少し続けることにする。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)

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