お笑い芸人を志す若者を描いた漫画「べしゃり暮らし」。作中の登場人物の言動から、現実のお笑いについてさまざまな思いが駆け巡る。

 主人公「上妻圭右」は人を笑わせるためならなんでもするが、笑われることは大嫌い。どんなにウケても意図しないところから生まれる笑いは受け入れられず、『ボケってのは計算がハマってこそ気持ちいいんだ』と豪語する。スベり笑いを認めないまっすぐさは清々しいが、実は上妻自体がかなりの天然であり、計算しない方がおもしろいと周囲からは認識されているのだ。しかし本人はそのことに気づいていない。このあたりの苦悩がこの先描かれるのであろうか。

 そんな上妻の父は、とある事件がきっかけで芸人を忌み嫌うようになってしまった。『人をバカにしたようなネタで笑いモンにする奴らなんか サイテーのクソヤロー共だ!』。これに胸が痛まない芸人はいない。そうであってほしい。

 そこまで父に言わせたのが、作中に登場する「ねずみ花火」。特定の人や店などをギリギリ認識できるレベルで毒づく芸風で人気を得たコンビである。しかし一方が誰かを傷つける可能性を含む笑いに苦悩を感じ、コンビは解散。その後、もう一方は「MCフラワー」というキャラクターで相変わらず毒舌ネタを続け、そこそこ名が知られるようになっていた。

 誰かを貶める笑いに疲れた芸人と、それを頑なに続ける芸人。それぞれの真意は実際に作品を読んで感じてもらいたい。身を切るほどの痛みを持って笑いを生む、お笑い芸人の因果について考えさせられる。

 さて、現実世界でまことしやかに囁かれるコンビ不仲説であるが、作中にも存在する。人気コンビ「デジタルきんぎょ」、一時はボケの「金本」に注目が集まりコンビ内格差が生まれていた。それを解消した後も、お互いの連絡先も知らない、仕事以外では顔も見たくないと豪語しており、その不仲ぶりはよくある業界の噂話として以上のもの。しかし本当は互いの才能を認め合っており、だからこそぶつかることが多いだけなのだ。金本の台詞、『妥協せんかわりに友情もいらん 笑いがすべてやねん』にはしびれた。実際に不仲説が流れているあのコンビもあのコンビもこういった心境なのであろうか。

 怒り、悲しみ、戸惑い、さまざまな感情を押し込めて笑いだけを排出するお笑い芸人。その熱い舞台裏をエンターテインメントに昇華させ、凝固したのがこの作品である。

 現実世界ではM-1グランプリの予選が始まったばかりだが、その裏にはどれだけのドラマが隠されているのだろう。上妻とその相方「辻本潤」のポスターを眺めながら、知ることのできない世界へ思いを馳せる。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)

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