ハリウッド女優・工藤夕貴、役者をやめられない理由とは?

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近年、ハリウッドで活躍する日本人俳優の草分け的存在として一目置かれている女優、工藤夕貴。アメリカ進出のきっかけとなった『ミステリー・トレイン』(89)以来、20年ぶりとなるジム・ジャームッシュ監督との仕事や、女優活動について話を聞いた。

悔し涙を流したこともあったという工藤夕貴

新作『リミッツ・オブ・コントロール』で工藤が演じるのは主人公“孤独な男”に接触する女性、コードネーム“分子(モレキュール)”。この名前からも察しがつくように、分子の話を淡々と男に語る何ともユニークな役柄だ。しかし、演じるのは想像以上に難しかったという。

「思想とか音楽とか映画の話は感情を込めやすいけれど、なにせ分子の話ですからね(笑)。しかも説明する感じではなく“今日、買い物に行ってこういう靴を見つけたの!”というように、軽い感じで楽しく話してほしいってジムは言うんです。ただでさえ文法的に難しいセリフなのに……でも、面白かったですよ」と、現場を振り返る。

最近は『インプリント ぼっけえ、きょうてえ』(06)、『ラッシュアワー3』(07)、『L change the WorLd』(08)などで意外な役柄に挑戦している彼女。「今はあらゆる役に挑戦してみたい、違う役をやってみたいと思うんです。新しい自分を表現する作業がおもしろくて。だから役者をやめられないんだなって思うんです」と語るが、そう思えるようになったのは、初めて悪役に挑戦した『SAYURI』(05)がきっかけだったと言う。

「いろいろなジレンマのある作品で、悔し涙を流したこともあったけれど、1人ぐらい日本人が芸者として出演するべきだと思って出演を決めたんです。でも、やって正解でしたね。そのおかげで当時抱えていたしがらみから解放されたし、今こうして人生を楽しめているのもそんな過去があるからだと思う」と笑う。現在は女優のほかに歌手としても活躍、さらに農業やカフェの経営もこなしている。確かにパワフルだ。

また、今回のジム・ジャームッシュ監督との仕事は「昔から知っているからこそのプレッシャーもあった」と話すが、それ以上に「彼に任せておけば自分の一番いいところを引き出してもらえる」と絶大な信頼を寄せ、監督が本作で挑んだ新しい試みについてこう代弁する。

「ジムは自分のなかに保ち続けていた思想、映画、音楽、分子、芸術に対する語りをキャラクターに託して自分の世界観を表現しているんです。この独特の感覚はジムの映画にしかないと思う。相変わらずやることがお洒落なんですよね」

英語を身に着けハリウッド映画界に挑み、悪役で幅を広げ、常に新しい自分を探し続ける工藤夕貴。彼女が次にどんな役を手にするのか気になるところだが、まずは分子という一風変わったキャラクターを演じた『リミッツ・オブ・コントロール』でその魅力を再確認してほしい。【取材・文/新谷里映】

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