田中良紹:真っ当な組閣
2009年09月17日11時58分 / 提供:THE JOURNAL
鳩山新政権が誕生した。新内閣の布陣を見ると、小泉政権以来続いてきた「奇をてらう」要素が微塵もなく、久しぶりに真っ当な人事を見せられた思いがする。これを鳩山総理が一人で考えたとしたら、鳩山氏に対する認識を改めなければならない。それほどに政治に熟達した知恵を感じさせる人事である。
人事は最高の権力行為であり、権力者の力量を余すところなく知ることが出来る。人事によってあっという間に求心力が衰える事もあれば、逆に求心力を高めて組織が生き返る場合もある。それは権力者が組織の中にどのような欲求と力関係とが存在しているかを読み解けるかにかかっている。その上で力関係と欲求との連立方程式を解かなければならない。人事は簡単なものではない。
池田内閣で総理主席秘書官を務めた伊藤昌哉氏から聞いた話だが、昭和37年に第二次改造内閣を組閣する際、伊藤氏は池田総理から組閣案の作成を依頼された。箱根に籠もって色々考えたがどうしても収まりが悪い。1週間経っても満足な案が出来なかった。山から下りて「こんな案しか出来なかった」と総理に謝ると、池田総理は「こんな案を持って来た奴が居る」と言って1枚の紙を見せた。そこに書かれた人事案は伊藤氏を驚かせるほど見事だった。作成したのは田中角栄衆議院議員で、角栄氏はそれによって自らを最年少の大蔵大臣として入閣させた。伊藤氏は政治家としての田中氏の力量を思い知ったと言う。
しかしいつの頃からか自民党の派閥政治は躍動感を失い、派閥順送りの人事が政治を停滞させた。それを壊したのが小泉純一郎氏である。党内力学を無視するためにメディアが喜ぶ「サプライズ人事」を行い、国民にアピールすることだけを考えた。人物の力量も資質も関係ない。とにかくメディアが喜ぶ人物を登用し、自民党と対決するパフォーマンスで支持率を高めようとした。
党と対立するならそれでも良いが、ポスト小泉の総理たちはそうではない。ところが党と対立もしないのにスタイルだけは小泉政治の真似をした。メディアが大きく扱えば国民に支持されるとの錯覚に陥り、党内力学も本人の資質も無視して、メディアを向いた人事ばかりを行った。「お友達内閣」や「論功行賞内閣」を見せられて、「権力者の資質ゼロ」と思わざるを得なかった。今回は久しぶりにそのうんざりから解放された。
人事の特徴の第一は党内力学への配慮である。ここまでしなくともと思うくらい党内グループに配慮をし、あらゆるグループから人材を抜擢した。第二は即戦力になりうる実力議員を配置した。女性を多く登用するとか知名度の高い民間人を抜擢するとかを一切やらなかった。民主党議員と連立相手の党首だけで組閣した点は、まさに小泉流に対するアンチテーゼである。
さらにアンチ小泉を強調し、小泉構造改革のキーマンであった竹中平蔵氏と同じポジションに、全くそれとは逆の役割で国民新党の亀井静香氏を起用した。まるで漫画のような対比である。小泉政治の消滅が目的だと思わせる組閣となった。これなら亀井氏は張り切らざるを得ない。一方、社民党の福島党首には、小渕優子少子化担当大臣と野田聖子消費者担当大臣の二人分の仕事を与えた。それなら文句はつけられない。自民党が分断工作を仕掛けても二人の党首は動く筈がなくなった。
そして鳩山・小沢体制に距離を置く人間には難しい仕事を与えた。前原国土交通大臣や岡田外務大臣には難問が山積している。仙谷行政刷新担当大臣は「脱官僚政治」を象徴するポジションで、これも鼎の軽重が問われる。長妻厚生労働大臣も同様である。攻める側では優秀でも本当に官僚を使いこなせるか。その真価が問われる。彼らはいずれもこの大役をやり遂げれば次代の民主党のリーダーになれる。いつまでも「反小沢」を叫ぶだけではいられないだろう。
人事は最高の権力行為であり、権力者の力量を余すところなく知ることが出来る。人事によってあっという間に求心力が衰える事もあれば、逆に求心力を高めて組織が生き返る場合もある。それは権力者が組織の中にどのような欲求と力関係とが存在しているかを読み解けるかにかかっている。その上で力関係と欲求との連立方程式を解かなければならない。人事は簡単なものではない。
池田内閣で総理主席秘書官を務めた伊藤昌哉氏から聞いた話だが、昭和37年に第二次改造内閣を組閣する際、伊藤氏は池田総理から組閣案の作成を依頼された。箱根に籠もって色々考えたがどうしても収まりが悪い。1週間経っても満足な案が出来なかった。山から下りて「こんな案しか出来なかった」と総理に謝ると、池田総理は「こんな案を持って来た奴が居る」と言って1枚の紙を見せた。そこに書かれた人事案は伊藤氏を驚かせるほど見事だった。作成したのは田中角栄衆議院議員で、角栄氏はそれによって自らを最年少の大蔵大臣として入閣させた。伊藤氏は政治家としての田中氏の力量を思い知ったと言う。
しかしいつの頃からか自民党の派閥政治は躍動感を失い、派閥順送りの人事が政治を停滞させた。それを壊したのが小泉純一郎氏である。党内力学を無視するためにメディアが喜ぶ「サプライズ人事」を行い、国民にアピールすることだけを考えた。人物の力量も資質も関係ない。とにかくメディアが喜ぶ人物を登用し、自民党と対決するパフォーマンスで支持率を高めようとした。
党と対立するならそれでも良いが、ポスト小泉の総理たちはそうではない。ところが党と対立もしないのにスタイルだけは小泉政治の真似をした。メディアが大きく扱えば国民に支持されるとの錯覚に陥り、党内力学も本人の資質も無視して、メディアを向いた人事ばかりを行った。「お友達内閣」や「論功行賞内閣」を見せられて、「権力者の資質ゼロ」と思わざるを得なかった。今回は久しぶりにそのうんざりから解放された。
人事の特徴の第一は党内力学への配慮である。ここまでしなくともと思うくらい党内グループに配慮をし、あらゆるグループから人材を抜擢した。第二は即戦力になりうる実力議員を配置した。女性を多く登用するとか知名度の高い民間人を抜擢するとかを一切やらなかった。民主党議員と連立相手の党首だけで組閣した点は、まさに小泉流に対するアンチテーゼである。
さらにアンチ小泉を強調し、小泉構造改革のキーマンであった竹中平蔵氏と同じポジションに、全くそれとは逆の役割で国民新党の亀井静香氏を起用した。まるで漫画のような対比である。小泉政治の消滅が目的だと思わせる組閣となった。これなら亀井氏は張り切らざるを得ない。一方、社民党の福島党首には、小渕優子少子化担当大臣と野田聖子消費者担当大臣の二人分の仕事を与えた。それなら文句はつけられない。自民党が分断工作を仕掛けても二人の党首は動く筈がなくなった。
そして鳩山・小沢体制に距離を置く人間には難しい仕事を与えた。前原国土交通大臣や岡田外務大臣には難問が山積している。仙谷行政刷新担当大臣は「脱官僚政治」を象徴するポジションで、これも鼎の軽重が問われる。長妻厚生労働大臣も同様である。攻める側では優秀でも本当に官僚を使いこなせるか。その真価が問われる。彼らはいずれもこの大役をやり遂げれば次代の民主党のリーダーになれる。いつまでも「反小沢」を叫ぶだけではいられないだろう。
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