アフリクションで完全復活を遂げたように見えたヴィトー・ベウフォート。だが、リッチ・フランクリンは厳しい相手だ

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9月19日(土・現地時間)テキサス州ダラスのアメリカンエアラインズ・センターで行なわれるUFC103『Franklin vs Belfort』。メインに登場するのは、イベントタイトルにもある通り、リッチ・フランクリンとヴィトー・ベウフォート。ベウフォートにとっては、実に4年7カ月ぶりのオクタゴンとなる。

97年2月に打撃を使いこなすグレイシー柔術家として、無差別級と呼んでもおかしくなかった当時のUFCヘビー級トーナメントを制し、鮮烈なデビューを果たしたベウフォート。19歳10カ月の超新星の誕生であった。

3カ月後には人気者タンク・アボットをTKOで葬り、同年10月にはランディ・クートゥアーを相手にUFC世界ヘビー級王座を賭けて戦うも、初黒星。その後も日本大会、ブラジル大会とUFC参戦を続け、99年4月には、MMAマーケットの中心であった日本=PRIDEに活躍の場を求めた。

しかし、そのPRIDE初戦で桜庭和志に敗北を喫し、それからの4試合はお茶を濁すような対戦で連勝を重ね、再び戦場をUFCに戻した。ライトヘビー級としてオクタゴンに戻ったベウフォートは、02年から05年にかけ、ランディ・クートゥアー、ティト・オーティズ、チャック・リデルとライトヘビー級四天王時代を形成し、UFCの顔として活躍。04年1月には偶然のカットとはいえ、クートゥアーを下しUFC世界ライトヘビー級王座に就いている。

ズッファ体制となったUFCで欠かせない存在となったベウフォートだったが、私生活でも有名モデルと結婚するなど、ブラジルでの知名度も抜群のものとなっていった。

その一方で愛する姉を誘拐事件で亡くすなど、人生の光と影を経験した彼は、所属するBTTの離脱を繰り返し、安定した練習環境や厳しいトレーニングに身を入れることができず、トラブルメーカーとして周囲の人間と距離を置くようになる。

結局のところ、ベウフォートは四天王時代の通算戦績は2勝3敗と負け越して終えることとなった。ボクシングでは五輪候補となり、テイクダウンにも強く、柔術を基礎としたグラップリングでもトップレベルの技量を誇りながらも、ベウフォートは一進一退の攻防が続くと、気持ちが続かない精神的な部分で弱さを露呈していた。

再びオクタゴンを離れた彼は、日本のPRIDE、英国ではケージレイジ、そして米国でもストライクフォースやPRIDE USAでキャリアを重ねるものの、デビュー当時の鮮烈なイメージを上回る輝きを見せることはできなかった。

そんなベウフォートが、エクストリーム・クートゥアーに合流後、アフリクションのリングに上がるようになり、再び輝き始めた。特に今年1月のマット・リンドランド戦の全体重を乗せたパウンドでのKO劇は、デビュー当時を上回る衝撃を見る者に与えたといってもいいだろう。

ジョルジ・サンチャゴとの注目の一番は流れてしまったが、最高のタイミングでUFCに2度目のカムバックを果たすことになったベウフォート。対戦相手フランクリンは、彼との試合でUFCの戦績が16戦目を迎えることとなる。来日経験は、03年大晦日のイノキボンバイエのみ。ある意味、北米MMAワールドで純粋培養されたファイターといえるだろう。

05年4月からベウフォートと入れ替わるようにUFCへ定着し、4年以上、ライトヘビー級とミドル級のトップとして活躍。ミドル級ではその頂点も極めている。その間、敗れた3試合の相手はダン・ヘンダーソンとアンデウソン・シウバのみ。ジェイソン・マクドナルド、マット・ハミルという北米系トップファイターを下し、岡見勇信やネイト・マーコート、ヴァンダレイ・シウバにも勝利を収めている。

対戦相手のバリューもあり、日本ではその実力のほどを認められているわけではないが、フランクリンは穴がなく、ベウフォートとは反対で凌ぎ合いに強いタイプといえる。