オランダ、ガーナと戦った2試合の欧州遠征でわかったことは、世界レベルとの差はまだまだ大きいという、当たり前のことだった。世界と差があることなどみんなが知っていることだけど、ドイツW杯後のチームとしては今回初めて肌で感じたことになる。その事実が悲しいね。ホーム開催の親善試合をルンルン気分で繰り返してきたツケだろう。これまでの3年間は何だったのだろうという思いを一層強くした。

現在のオランダは、ここ何年かでワーストチームだと思う。W杯出場権をいち早く獲得できたのも、恵まれたグループに入ったからだろう。あの守備では、W杯本大会で躍進は望めない。特に前半はひどい体たらくだったが、日本はそんな状態のオランダから1点も奪えなかった。オランダ代表DFマタイセンには、日本はまったく怖くなかったと言われる始末だ。

ガーナには逆転勝ちしたけど、3−1となってからのガーナは、明らかに運動量もモチベーションも落ちていた。本番で同じ状態にはなることはないだろう。3点を連取して逆転したのはよくやったと言えるかもしれないが、勝ってしまったことで抱えている問題がぼやけてしまうのは心配だ。

岡田監督は、世界との差を今回のように肌で感じてから目標値をつけるべきだった。今、W杯ベスト4という目標をはっきり口にできるだろうか。甘すぎるのか、真面目すぎるのか、それはよくわからないけれど、とにかくベスト4という言葉が雑音になっていることは間違いない。
今回の2試合で自分たちの現在地が改めてわかったのだから、まずはベスト4という目標を撤回し、もう一度プランを練り直し、現実的な戦略、目標を定めていくべきだよ。

今回の2試合は日本サッカー協会が主催し、試合開始時間も日本のゴールデンタイムに合わせて組んだものだ。オランダやガーナもよく付き合ってくれたというべきで、お金さえ出せばこういったことができるなら、今後ももっともっと海外遠征をすべきだ。今回のように負けたってかまわないんだ。常に世界レベルを体感しながら強化していかないと、一向に進歩していかない。
これからはどんどんお金を使って国外へ出て行くべき。国内開催での金儲けはもう終わりにしようよ。(了)
 


セルジオ越後 (サッカー解説者) 

18歳でサンパウロの名門クラブ「コリンチャンス」とプロ契約。ブラジル代表候補にも選ばれる。1972年来日。藤和(とうわ)不動産サッカー部(現:湘南ベルマーレ)でゲームメーカーとして貢献。魔術師のようなテクニックと戦術眼で日本のサッカーファンを魅了。1978年より(財)日本サッカー協会公認「さわやかサッカー教室」(現在:アクエリアスサッカークリニック)認定指導員として全国各地青少年のサッカー指導。現在までに1000回以上の教室で延べ60万人以上の 人々にサッカーの魅力を伝えてきた。辛辣で辛口な内容のユニークな話しぶり にファンも多く、各地の講演活動も好評。現在は日光アイスバックス シニアディレクターとしても精力的に活動中

●主な活動 テレビ朝日:サッカー日本代表戦解説出演「やべっちF.C.」「Get Sports」  日本テレビ:「ズームイン!!SUPER」出演中 日刊スポーツ:「ちゃんとサッカーしなさい」連載中 週刊サッカーダイジェスト:「天国と地獄」毎週火曜日発売 連 載中 週刊プレイボーイ:「一蹴両断!」連載中 モバイルサイト FOOTBALL@NIPPON:「越後録」連載中