フランス代表監督に対する批判が相次ぐ中、ドメネク批判にかけては右に出る者がいないといわれる男が口を開いた。ドメネク監督が就任して早々、その采配を批判し、2度と代表に招集されなくなってしまったロベール・ピレス(ビジャレアル)だ。フランスのサッカー専門サイト「フットボール365」が7日にインタビューを掲載した。

 ピレスは親友のティエリ・アンリが「チームを代表して」ドメネク監督に不満をぶつけたこと(アンリ自身は建設的な意見交換だったと振り返っている)について、「ティティ(アンリ)がこんなふうに口を出したからには、よほどのことがあったのだろう。ふだんはこういう場面で発言する男じゃないからね。5年前の僕なら同じことを言っていた。彼がそれを言ってくれてうれしいよ」と笑いながら語った。

 ピレスの前例があるだけに、代表メンバーにとって監督批判は御法度。ピレスによれば、それゆえアンリは主将として自分が言わなければならない、と感じたはずだという。最近もフロラン・マルダ(チェルシー)に“干された”時期があった。復帰はしたものの先日のルーマニア戦ではベンチにすら入れなかった。悔しい思いをしたはずだが、インタビューでは慎重に言葉を選んでいる。ASローマで5シーズンにわたりレギュラーを確保するフィリップ・メクセスも代表キャップがわずか13で止まっている。

 ピレスはこうしたことについて、「誰も何も言わない。こういうのはやめてほしいね」と心を痛める。ピレスがドメネク批判を繰り返すのは、もちろん記者の質問に正直に答えるとそうなるのもあるが、「これは単にドメネクとピレスの問題じゃない。ドメネクとほかの選手の問題なんだ」と言いたくても口にできない仲間の身代わりをしているという自覚もあるようだ。

 メンバーの名前だけ見れば世界最高レベルのチームであるはずのフランス。なぜ結果が出ないのかとたびたび論議になるが、ピレスはそれを不可解に感じている。というのもピレスにとって、苦戦の理由は「ドメネクが無能なだけ」と明快だからだ。監督としてどこが無能なのかという問いに対しては、「彼からはほとんど学ぶことがないね。どういう方向性で行くか、どのポジションでプレーしたらいいか、わからなくなるんだ。クラブで素晴らしい活躍をしても、代表に来るとわけがわからなくなる」と答えた。

 アンリがドメネク監督の指揮する「練習が退屈」と発言したとされる(本人は否定)が、これについてピレスは「もちろんそうだ」と全面的に同意する。「5年前、タクシーでクレールフォンテーヌ(代表の合宿所)に向かうとき、僕は行きたくないなと感じていた。ああ、これからイヤな思いをするんだ、ってね。だからティエリの発言には驚かない。僕が経験したことだったからね」と明かしている。

 インタビュアーから、ピレスがよく知る「有能」な監督の代表格であるアーセン・ヴェンゲル監督とドメネク監督の違いを問われると、吹き出しながら「ちょっとは敬意ってものがないと。ドメネクとアーセンは比べられないよ。ドメネクからは何も学ぶものがない。アーセンといれば、短く的確な言葉で何をしなければいけないかがわかる。ピッチに行くときの変な緊張もない。脳みそに何でもかんでも突っ込まれることもない」と説明した。

 監督の“無能”ぶりに苛立ちながらも、フランス代表にはことのほか愛着があるピレス。「選手の質そのものでいったら、セルビアを倒すことは十二分にできる。水曜日(9日)は勝つと信じているよ。選手たちは信頼できるから心配はしていない。その指揮がまずいとしてもね......。選手たちはこれまで以上にたくましく、結束していかないとね」とエールをおくった。