「脳トレゲームは効果なし」に反論、記憶の働き活性化で成績も向上?

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ニンテンドーDS向けソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」(任天堂)のヒット以降、脳トレゲームは世界的なブームとなっている。類似タイトルも続々登場し、ブームの拡大を後押ししているが、特に火付け役の「脳を鍛える大人のDSトレーニング」は、全世界で4,000万本近く(シリーズ累計)も販売されるなど、世界的な大ヒット作となった。

しかし、そうしたヒットとは裏腹に、ヨーロッパでは、その効果を疑問視する研究報告も出されている。今年1月には、フランス・レンヌ大学の教授が、「紙と鉛筆を使って勉強した子どもよりも、脳トレをした子どものほうが記憶力が落ちる」との実験結果を発表。「(脳トレゲームでは)ほとんど前向きな結果は得られなかった」(英紙タイムズより)として、「脳を鍛える大人のDSトレーニング」の監修を務めた東北大学未来科学技術共同研究センターの川島隆太教授(現:東北大学加齢医学研究所教授)を厳しく批判していた。

そうした中、新たに「効果のある脳トレゲームもある」という持論を唱える英国人研究者が現れ、「脳トレゲーム=効果なし」との見方に反論している。

この研究者は、英・スコットランドのスターリング大学で心理学を教えるトレーシー・アロウェイ博士。アロウェイ博士は、自身が監修を務める脳トレゲーム「ジャングル・メモリー」を使い、11歳から14歳までの学生を対象にした実験を行ったところ、識字や数学的能力を引き出し、IQが上昇する結果が得られたそうだ。

「ジャングル・メモリー」の紹介動画はYouTubeで公開されているが、「7歳用」「10歳用」「15歳用」との表示があることから、子どもが対象の脳トレゲームだと見られる。その中身は「脳を鍛える大人のDSトレーニング」の計算問題や瞬間記憶と同じようなものが確認でき、紹介動画を見る限りでは「脳を鍛える大人のDSトレーニング」とそう大差のある内容ではない。現在、「ジャングル・メモリー」は「ロンドンやエジンバラ、カナダの学校で使用されている」(英紙デイリー・メールより)そうで、教育ソフトとして活用されている模様だ。

アロウェイ博士が行った実験はこうだ。まず、11歳から14歳までの男女を2つのグループに分け、1つのグループには、8週間に渡って週3回20分ずつ「ジャングル・メモリー」を利用してもらい、もう1つのグループにはこのゲームを使わずに、家庭教師による計算問題や単語のつづりを学ぶ指導を行ったという。その結果、ゲームを利用したグループは「大幅な改善が見られた」とされ、平均でIQが10ポイントも増加したそうだ。

こうした改善のポイントを、アロウェイ博士は「記憶の働き方」と説明している。簡単に言うと、記憶をしまい込む能力ではなく、効率的に引き出す能力を指しているようだ。脳トレゲームで収納された記憶の稼働率を上げることが、記憶力向上に繋がるということらしい。

実生活の中で記憶が効率的に働いている例としては、「先生の指示に従う」「就職面接で答える」「過去の経験を思い起こす」などが上げられる。アロウェイ博士は「(そうしたことは)小さい子どもから大学教育、仕事などにおいて、IQよりも重要なもの」(デイリー・メール紙より)と説明。「記憶の働き方」を活性化する意義を強調している。

また、「記憶の働き」の能力は「IQと違って(親の)収入面から生じる差もない」ため、誰もが鍛えれば記憶力や思考力を伸ばす可能性があるという。そして、この効果は子どもの成績向上だけでなく、特に高年齢層の「記憶喪失予防や、認知症の兆候を遅らせる効果」に期待が持てるそうだ。

今回のアロウェイ博士の研究報告は自身が監修する脳トレゲームを使用したということで、やや眉唾に感じる人もいるだろう。しかし、まだまだ未知の領域が多く残る脳の世界。脳トレゲームについても、否定派と肯定派がそれぞれの主張をするにとどまり、どちらが正しいのかはまだ結論を見ていないのが現状だけに、今後もこうした“主張合戦”は続くことになりそうだ。

ちなみに、英放送局BBCは9月7日から、多くの一般市民の協力を得て、脳トレゲームを使った「過去最大級の脳に関する実験」を開始している。脳の認識力、情報管理能力などを探るというこの実験、結果は来年春に発表される予定だが、今までにない大がかりな検証だけに、こちらの研究報告も注目しておきたいところだ。