今季リーグ・アンの優勝候補と目されるマルセイユとボルドーが30日、早くも第4節で対決した。試合はマルセイユが押し気味で展開したが、終盤に強いボルドーが得意のセットプレーからロスタイム寸前に“決勝ゴール”。しかしそれがプレーと直接関係ないペナルティーエリア内での押し合いに主審が笛を吹いて“幻のゴール”となり、結局0―0の引き分けに終わった。

 試合前から、マルセイユのディディエ・デシャン監督とボルドーのローラン・ブラン監督という、フランスが98年W杯、ユーロ2000と連覇したときの主将と副主将が監督として初めて対決するということで注目を浴びた一戦。両者は7月21日のプレシーズンマッチですでに顔を合わせており、このときはボルドーが2―1でマルセイユを下したが、初の公式戦対決は息詰まる攻防で互いに譲らぬ結果となった。

 デシャン監督は試合後、カナルプリュス局のインタビューで、強豪同士の対決がしばしば膠着した試合展開になることを指摘し、「チャンピオンズリーグ(CL)級の試合だった」と振り返った。

 この一戦は、フランスのサッカーが迎えた新たな時代を象徴する試合だったと見ることもできる。フランスのW杯優勝から10年以上を経て、当時の主力選手だった2人がリーグのトップチームを率いて対決。昨年のドメネク代表監督辞任騒動のときに、後継候補として真っ先に名前が挙がったのがこの2人だった。同時に圧倒的な強さを誇ったリヨンの連覇が「7」で途絶え、新たな覇権争いが生じようとしているタイミングでもある。

 まさに2週間後には、CLのグループリーグがはじまる。ここ数年はCLでの活躍がいまひとつだったフランス勢だが、原因のひとつには、リヨンが国内で突出しすぎた存在だったことがあるかも知れない。マルセイユとボルドーにリヨンを加えた“3強”が国内でしのぎを削り、この日の試合のようなプレー、戦術ともにハイレベルの対戦を重ねて行くなら、欧州の強豪とも十分渡り合えるクラスになっていくはずだ。

 デシャン監督はすでに2004年にCL決勝進出を成し遂げている。リヨンのピュエル監督も中堅チームのリールを率いて、2007年のCL決勝Tでマンチェスター・ユナイテッドを相手に善戦した経験がある。ブラン監督もCL参戦2年目で戦い方を心得ているだろう。監督たちの資質もさることながら、3チームとも欧州レベルの選手を揃えて戦力を充実させており、今季のCLでダークホース的な存在となりそうな期待を抱かせる。