お笑いコラム【この芸人を見よ!45】 アンタッチャブルの「過剰なる気迫」がテレビサイズを突き抜ける
2009年08月29日08時00分 / 提供:日刊サイゾー
この本は、芸能界屈指の動物好きで知られる柴田が、ゾウ、キリン、ゴリラといった野生動物の知られざる意外な生態に激しいツッコミを入れていく、というもの。アンタッチャブルというコンビでは、相方の山崎弘也と比べると地味なイメージのあった柴田だが、持ち前のツッコミ技術を生かしてその存在感をアピールした形になった。
アンタッチャブルの山崎と言えば、気の向くまま好き勝手にボケ倒す問答無用の適当キャラとして、お笑い界ではすでに名の知れた存在となっている。6月18日放送の『アメトーーク』(テレビ朝日)でも、「後輩の山崎に憧れてる芸人」というテーマで、東野幸治、関根勤といった面々が、山崎の突き抜けた面白さの秘密に迫っていた。
確かに、山崎のキャラの強さはお笑い界でも突出している。だが、アンタッチャブルというコンビ単位で見た場合、柴田も山崎に劣らないくらい強烈な個性を備えていると言える。ここではあえて、柴田を軸にしてアンタッチャブルというコンビの魅力を分析してみたい。
アンタッチャブルは、2004年の「M-1グランプリ」を制した実績を持つ関東屈指の実力派漫才師である。彼らの漫才では、とぼけた態度の山崎が、悪ふざけのような調子で軽いボケを連発する。それに対して柴田が、終始いらだちながらハイテンションにつっこんでいく。どんどん加速度を増す2人のやりとりに、見る者は自然に巻き込まれていってしまう。
彼らの漫才の最大の特徴は、ボケとツッコミがどちらも過剰である、ということだ。山崎は適当キャラ全開で勝手にボケまくっているだけだし、柴田はやや長めの説明口調で最後までずっと怒り続けている。
いわば、アンタッチャブルとは、それぞれが別々の意味で「余分なことを言うやつ」同士のコンビなのである。テレビからはみ出しそうなこの圧倒的な過剰さが、彼らの掛け合いを魅力的なものにしている。
前述の『アメトーーク』にて東野は、山崎のボケは柴田がいなくても成立してしまう、という趣旨のことを言っていた。だが、ここで補足しておかなければならないのは、柴田のツッコミもまた、山崎無しでも成立するだけの強さと過剰さを持っている、ということなのだ。
「M-1」に出場したときにも、柴田はその風貌と芸風から「横山やすしの再来」と評されていた。確かに、漫才の中で見せる激しい口調とオーバーな動きから、ずり下がったメガネを直すしぐさまで、柴田の立ち振る舞いはあの伝説の漫才師とどこか重なるところがある。横山やすしもまた、型に収まらない過剰なものを内に秘め、それを原動力として生きた人物だった。
柴田も、その暴力的で説明的なツッコミによって、世の中にある妙なものを一つ残らず掘り返していこうという気迫に満ちた芸人である。そういう情熱があるからこそ、山崎の自由奔放なボケをつっこみ尽くせるのである。
アンタッチャブルの漫才では、ツッコミがボケに依存していない。ツッコミがただの引き立て役にとどまらず、それぞれが自立している。彼らのネタでは、いがみ合う2人の関係はどこまでも平行線をたどり、そのまま終わりを迎える。つまり、2人の人間の物語を同時進行で楽しめる構造になっているのだ。
2人で1つのものを作り上げるのではなく、2人がどこまでも2人に分かれたまま、それぞれがアクの強いキャラを持って激しい自己主張を続ける。彼らの漫才が爆笑を勝ち取る理由は、それぞれが圧倒的に過剰で面白いからなのである。
先輩芸人たちにも一目置かれる猛獣・山崎と、それを巧みに飼い慣らす猛獣使いの柴田。だが、彼らが他のコンビと決定的に異なるのは、そんな猛獣使いの柴田自身も、猛獣のように鋭い牙を隠し持っている、という点にあるのだ。
(お笑い評論家/ラリー遠田)
※画像は『アンタッチャブル柴田英嗣の日本一やかましい動物図鑑』講談社
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