衆議院選挙が近い。8月31日の投票で、政権が自民党から民主党に移るかもしれない大きな選挙だ。政治に関連して、今回は「スポーツ省」について話したい。
スポーツ省とは、国としてスポーツの振興や強化を図る行政機関になる。日本でも創設を求める声がちらほら聞こえるけど、今回の選挙でも、やはりどの党のマニフェストにも入っていないね。

本来的な意味でのスポーツ省が創設されるのであれば、マニフェストに入れるべきだと主張したいところなんだけど、現状の日本の文化を考えると、仮にスポーツ省ができたとしてもあまり意味のない組織になってしまう気がする。もう一つの天下り先ができるだけで、スポーツが逆に小さくなってしまう恐れすらある。

理由はたくさんあるけど、まず第一に日本のスポーツが完全なる種目別文化であることが大きい。日本では、スポーツは文部科学省の管轄で、教育の一環と位置づけられ、学校体育と企業の福利厚生によって成り立ってきた。ヨーロッパのように、たくさんの種目を抱えるクラブチームの中でスポーツを楽しんできたのではなく、学校の部活で、サッカー部と野球部がグラウンドを取り合ってきたわけだ。

つまり種目間の横のつながりがないし、それをまとめようとする人もいない。例えば森喜朗さん(ラグビー協会会長)はラグビーの人で、野球の人ではない。野球に首を突っ込んだら野球の人たちから反発がくるだろう。
日本のスポーツをひとまとめにして組織するのは、もしかしたら国をまとめるよりも大変かもしれないね。

また、日本人のスポーツに対する意識の問題もある。スポーツ省を作って、血税を使ってスポーツの振興に役立てよう、と思える人は少ないんじゃないかな。スポーツは単なるお遊び、別になくてもいいという意識があると思う。そもそも、スポーツにお金を出すという習慣がないんだ。

結局、国を運営している東大出身の学力優秀のエリートたちに体育会をどうこうしていこうという意欲はないだろうし、日本の政治家が大事にしているのは、「国」ではなく自分が出馬する「選挙区」。すべてがそういう状態なのだから、スポーツに横のつながりがないのも無理はないよね。

じゃあどうやって日本のスポーツ文化を成熟させていくか。当然一朝一夕に解決できる問題ではないけど、今後もこのコラムで触れていきたいと思う。(了)

セルジオ越後 (サッカー解説者) 

18歳でサンパウロの名門クラブ「コリンチャンス」とプロ契約。ブラジル代表候補にも選ばれる。1972年来日。藤和(とうわ)不動産サッカー部(現:湘南ベルマーレ)でゲームメーカーとして貢献。魔術師のようなテクニックと戦術眼で日本のサッカーファンを魅了。1978年より(財)日本サッカー協会公認「さわやかサッカー教室」(現在:アクエリアスサッカークリニック)認定指導員として全国各地青少年のサッカー指導。現在までに1000回以上の教室で延べ60万人以上の 人々にサッカーの魅力を伝えてきた。辛辣で辛口な内容のユニークな話しぶり にファンも多く、各地の講演活動も好評。現在は日光アイスバックス シニアディレクターとしても精力的に活動中

●主な活動 テレビ朝日:サッカー日本代表戦解説出演「やべっちF.C.」「Get Sports」  日本テレビ:「ズームイン!!SUPER」出演中 日刊スポーツ:「ちゃんとサッカーしなさい」連載中 週刊サッカーダイジェスト:「天国と地獄」毎週火曜日発売 連 載中 週刊プレイボーイ:「一蹴両断!」連載中 モバイルサイト FOOTBALL@NIPPON:「越後録」連載中