（これまでの マイケル・カネロスの「海外グリーンテック事情」はこちら）

米国の株式市場に上場する中国のソーラーパネルメーカーといえば、まず思い浮かぶのはサンテックパワー（Suntech Power/尚徳太陽能電力有限公司）だが、英利（Yingli Green Energy/英利緑色能源控股有限公司。以下、英利）という別のメーカーでも、中国を成長著しい太陽光エネルギーの市場に変えるこのレースで遅れをとりたくないと考えている。

英利は、複数の工場を新建設し、あわせて300メガワット（MW）の発電能力を持つ太陽光発電施設を建設する契約に調印したことを7月22日（米国時間）に明らかにした。同社のこの発表に先立って、先週にはサンテックパワーならびにレネソーラー（ReneSola/浙江��辉阳光能源有限公司)があわせて約2.3ギガワットの発電能力を持つソーラーファームを中国各地に建設する計画を発表している。

中国のソーラーパネル・メーカー各社は、中央政府からさまざまな名目で支給される補助金を、太陽光発電施設の建設費並びに運営費の一部にあてようとしている。中国政府は今年3月に、建物へのソーラーパネル導入コストのほぼ半分に相当する額を助成すると発表していた（助成対象となるプロジェクトの規模は最小で50キロワット）。

さらに7月21日（米国時間）には同政府が新たなインセンティブを発表したが、その内容は太陽光発電施設の建設にかかる費用の50〜70%を中央政府が助成するというものだ。ただしこのインセンティブを受けられる対象は、より大規模なプロジェクト（最小で300キロワット）となる。なお、このインセンティブの対象に、建築の屋上等への設置が含まれるどうかについては明らかにしなかった。

英利によると、同社は国有の海南省開発公社（Hainan Provincial Development Holding Co.）とジョイントベンチャーをつくり、海南省の海口（Haikou）に複数の工場を建設するという。これらの工場ではシリコン・インゴットから、ウェハー、セル、パネルまでを一貫製造し、100メガワット相当のソーラーパネルを生産することになるとしている。

同社はこのジョイントベンチャーの80%を保有する計画で、新会社の名称は海南省英利新エネルギー資源（Hainan Yingli New Energy Resources Co.）になるという。

また、英利では海南省開発公社と別のジョイントベンチャー（JV）をつくる契約も交わした。Hainan Green Island Power Co.という名称になるこのJVでは、同省にグリッドに連結するソーラーファームを建設・運営する計画で、同省の公益企業Hainan Provincial Water Conservancy & Power Group Co.もこのJVに出資する。

Hainan Green Island Power Co.への英利の出資比率は20%になる予定。Hainan Green Island Power Co.ではすでに、2009年〜2011年の間に最大で300メガワットの発電施設を建設するプロジェクトを進めていると英利は述べている。

英利ではさらに中国広東核電力公司（China Guangdong Nuclear Power Holding）の子会社と協力して、グリッドに連結するソーラーファームを中国や世界各地に建設する計画も進めていることを明らかにした。

[原文：Ucilia Wang（Greentech Media）/抄訳：坂和敏/原文公開：7月22日（米国時間）]

原文はこちら

訳者コメント：
グリーン・ニューディール関連分野に対する中国の力の入れ方については、『グリーン・ニューディール--環境投資は世界経済を救えるか』（寺島実郎、飯田哲也、NHK取材班著/NHK出版 生活人新書）に興味深いデータが載っています。同書117ページにある図（「景気刺激策に占めるグリーン・ニューディール関連予算の金額」）によると：

[景気刺激策の総予算/グリーン・ニューディール関連予算]
米国 9兆7200億円/1兆1230億円
中国 5兆8610億円/2兆2130億円
日本 4兆8590億円/1240億円
EU 3880億円/2280億円
韓国 3810億円/3070億円
（*HSBC & The Financial Times調べ 2008年3月2日）

この調査の実施時期が若干古く、ご存じのように、米国ではオバマ政権発足後グリーン・ニューディール関連予算の総額が1500億ドル（約15兆円）まで膨らんでいます。ただ、その点を差し引いても、上記の数字からこの分野にかける中国の意気込みのほどが感じ取れる点は間違いないと思います。なお、一部の中国企業名について、漢字名が見つけられなかったものについては英語のままとしています。ご了承下さい。