パンツやベルトの上にお腹がドッカリとのっている。ほかの体の部位はそんなに太っていないのに、お腹のぜい肉だけが増えて行く……。男性に多いこの体型のことを、みなさん「ビール腹」なんて呼びますよね。

この体つきは腸の周りに蓄積されていく、いわゆる内臓脂肪によるもので、お酒の飲み過ぎが内臓脂肪増加の一因になっていると思われることもしばしばでした。しかしヨーロッパで発表された論文によると、ビールとビール腹の間には、実は関連性がなかったというのです。

医療栄養学の専門誌「European Journal of Clinical Nutrition」に掲載された、ドイツとスウェーデンの研究者が共同で実施した実験では、20,000人以上の成人男女の飲酒パターンと体重増加、そしてヒップ・ウエストのサイズ比率の観測が行われました。そして、平均8年半分のデータを被疑者から集計して比較。すると、体型の変化で特にお腹まわりの増加が著しかった人は、ビールを沢山飲んだグループ(平均1日2パイント、1パイント=約570ミリリットル)と、あまり飲まなかったグループ、どちらにも同じ比率で現れたのです。

同じ量のビールを飲んでいても、ビール腹の傾向に「なった人」と「ならなかった人」が、どのグループにも同じような割合で観測され、これが「ビールを飲んだからビール腹」という定説(?)を覆した、ということの根拠となっています。ではビール腹の原因は何なのかというと、遺伝による体型の個人差というのが濃厚なのだとか。

ただし、ここで安心するのはちょっとまだ早いようです。同研究によると、体重増加に至っては、ビールを飲んだ量としっかり正比例したとの結果が出ています。それもそのはず、ビールのカロリーの3分の2はアルコールですが、残りの3分の1は糖質。アルコールは体内に蓄積しないものの、糖質は脂肪に変わって体内に蓄積されていくため、飲み過ぎればその分、体重に反映されていくわけです。また、ビールとともに食べるおつまみも、当然、体重増加の大きな要因となります。

今回の研究に従えば、お腹だけ太る(=ビール腹になる)心配はないけれど、やっぱり飲み過ぎれば太ってしまうビール。ビールが美味しい季節が近づいているのに、あまり嬉しくない話題でした。