混沌と秩序の入れ混じる国・中国へ行く(1)
2009年07月04日06時57分 / 提供:PJ
【PJニュース 2009年7月4日】5月の北京旅行に引き続き、今度は上海と蘇州に出掛けた。といって格別中国を訪問する理由があったわけではない。北京であれ上海であれ、この時期の海外旅行は実に格安。いずれもエヤー・ホテル・観光・全食事つき3泊わずかに(空港利用料他の雑費は含まず)2万円。このところの円高とサーチャージの撤廃で格安に異国が楽しめるのである。
中華人民共和国は、第2次世界大戦終結後の1949年に建国された社会主義国家。人口の94%を占める漢民族のほか、チワン、ウイグル、モンゴル、チベット、ミャオ、満、朝鮮など55の少数民族よりなる多民族国家でもある。公称人口は13億2800万人(2008年度)とされるが、カウントされない無籍人口がこのほか1億人前後存在するともいい、逆に二重国籍を取得するため出生児を2人として届けるため、それより少ないという説もある。
確実なことは、広大な国土と人口を抱えながら、一党独裁の政治体制を維持し、かつ民主主義が台頭する国際社会の中で、社会主義を護持し続ける矛盾がこの国の特徴だ。別の角度から見れば、(体制維持のため)厳しい報道管制などの反面、ルーズな規則と管理が横溢(おういつ)し、倣岸(ごうがん)な官吏が肩をいからせ、たくましく生きる人民の国でもある。短い旅でもこの国のカオス(混沌)とコスモス(秩序)を発見するのは、実に容易であった。
6月末のある日、午後7時30分出発予定の中国国際航空機は、「機体の整備」という理由で成田を飛び立ったのは9時近かった。空港内のすし屋でやった一杯が手ごろに利いて、上海浦東(プートン)国際空港まで熟睡できると思ったのはかなり甘かった。3時間半ほどのフライトで、幾度となく客室乗務員が体温検査に来たからである。新型ウイルスに敏感なのは理解できるが、繰り返しチェックをする意味が分からない。
検査の前に「アルコールを飲みすぎると体温が上昇し、発熱と診断される恐れがある」などのアナウンスがあったからなおさらだ。さらにその上、浦東空港に着いたと同時にいかめしい白衣の検査員が5、6名乗り込み、また何度も検査を繰り返したのだ。その光景はまさにSFの世界。このまま朝を迎える気にさせられたが、ようやく解放されたわたしたちが、ホテルに着いたのは午前2時過ぎ。安寧秩序を保つことに熱心なのは理解できても、そこまで徹底する必要はあるまい。この巨人国の衛生感覚について疑問を持ったのは翌日のことであった。
翌朝、わたしたちは上海から高速道路を西に約80キロの蘇州に向かった。「南船北馬」の国・中国でも、江蘇省の蘇州一帯は水郷地帯として有名だ。西暦885年、詩人白居易が蘇州知事として赴任直後、交易の便を図るため山塘川を掘削。以降、水利に恵まれた街には人と物資が集積し、乾隆年間には「中華第一街」の繁栄を見たというほど水運が庶民の生活に溶け込んでいる。同じ江蘇省の水郷烏鎮(ウーチン)が、観光地として完璧(かんぺき)に整備されているのに引き換え、こと山塘街の衛生事情となればこれはもう最悪というほかない。
遊覧船で水郷廻(まわ)りをするわたしたちの周辺には、驚くほど大量の水が流れ、運河に沿った民家や商家はいずれも水辺に出口を有している。そこは出入り口であり、洗濯場であり、子どもたちの遊び場となり、水辺に面した粗末なわが家のテラスで釣りに興じる人さえいた。ここにはどうやら上水と下水の区分がないらしい。ガイドの憑祥雲(ヒョウ・ショウウン)さんは、「さすがに若い女性は川で洗濯後、水道の水で洗いなおす」と説明するが、年配者からは「若いものは、もったいないことをする」と叱(しか)るとか。
途中で一時上陸し、旧市街を案内されたが、商店に並ぶ大きめの西瓜(すいか)1個が10元(約160円)。「四足は机、空を飛ぶのは飛行機以外」みな食い物にしてきたこの国の人々。ドジョウにカエル、手足を縛られたアヒル、狭いオリに押し込まれたウズラ、水槽の八つ目ウナギぐらいでは驚かないが、数十匹のヘビが絡まりあってうごめく姿には食欲を失う。おまけに狭い路地のそちこちには生ゴミが捨てられ、この世のものとも思えぬ悪臭を放つ。
日本が清潔になり過ぎたのか、中国では「衛生思想」にまで人民を教育できていないのか。ならば昨夜、空港で体験した徹底しすぎるほどの衛生管理体制との差を何で埋めればよいのか。発展途上国といっていいほど、カオスとコスモスが入れ乱れるのが、現代中国の現状に見えた。1日、イタリアのローマ市衛生当局が、中国系住民の密集する地区の中華料理店に衛生検査を行った結果、大部分の店が営業停止処分となったと外電は伝える。さもありなんと思うのはわたしだけではなかろう。巨大国家・中国の抱える課題は多くて深刻なのである。【つづく】
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中華人民共和国は、第2次世界大戦終結後の1949年に建国された社会主義国家。人口の94%を占める漢民族のほか、チワン、ウイグル、モンゴル、チベット、ミャオ、満、朝鮮など55の少数民族よりなる多民族国家でもある。公称人口は13億2800万人(2008年度)とされるが、カウントされない無籍人口がこのほか1億人前後存在するともいい、逆に二重国籍を取得するため出生児を2人として届けるため、それより少ないという説もある。
確実なことは、広大な国土と人口を抱えながら、一党独裁の政治体制を維持し、かつ民主主義が台頭する国際社会の中で、社会主義を護持し続ける矛盾がこの国の特徴だ。別の角度から見れば、(体制維持のため)厳しい報道管制などの反面、ルーズな規則と管理が横溢(おういつ)し、倣岸(ごうがん)な官吏が肩をいからせ、たくましく生きる人民の国でもある。短い旅でもこの国のカオス(混沌)とコスモス(秩序)を発見するのは、実に容易であった。
6月末のある日、午後7時30分出発予定の中国国際航空機は、「機体の整備」という理由で成田を飛び立ったのは9時近かった。空港内のすし屋でやった一杯が手ごろに利いて、上海浦東(プートン)国際空港まで熟睡できると思ったのはかなり甘かった。3時間半ほどのフライトで、幾度となく客室乗務員が体温検査に来たからである。新型ウイルスに敏感なのは理解できるが、繰り返しチェックをする意味が分からない。
検査の前に「アルコールを飲みすぎると体温が上昇し、発熱と診断される恐れがある」などのアナウンスがあったからなおさらだ。さらにその上、浦東空港に着いたと同時にいかめしい白衣の検査員が5、6名乗り込み、また何度も検査を繰り返したのだ。その光景はまさにSFの世界。このまま朝を迎える気にさせられたが、ようやく解放されたわたしたちが、ホテルに着いたのは午前2時過ぎ。安寧秩序を保つことに熱心なのは理解できても、そこまで徹底する必要はあるまい。この巨人国の衛生感覚について疑問を持ったのは翌日のことであった。
翌朝、わたしたちは上海から高速道路を西に約80キロの蘇州に向かった。「南船北馬」の国・中国でも、江蘇省の蘇州一帯は水郷地帯として有名だ。西暦885年、詩人白居易が蘇州知事として赴任直後、交易の便を図るため山塘川を掘削。以降、水利に恵まれた街には人と物資が集積し、乾隆年間には「中華第一街」の繁栄を見たというほど水運が庶民の生活に溶け込んでいる。同じ江蘇省の水郷烏鎮(ウーチン)が、観光地として完璧(かんぺき)に整備されているのに引き換え、こと山塘街の衛生事情となればこれはもう最悪というほかない。
遊覧船で水郷廻(まわ)りをするわたしたちの周辺には、驚くほど大量の水が流れ、運河に沿った民家や商家はいずれも水辺に出口を有している。そこは出入り口であり、洗濯場であり、子どもたちの遊び場となり、水辺に面した粗末なわが家のテラスで釣りに興じる人さえいた。ここにはどうやら上水と下水の区分がないらしい。ガイドの憑祥雲(ヒョウ・ショウウン)さんは、「さすがに若い女性は川で洗濯後、水道の水で洗いなおす」と説明するが、年配者からは「若いものは、もったいないことをする」と叱(しか)るとか。
途中で一時上陸し、旧市街を案内されたが、商店に並ぶ大きめの西瓜(すいか)1個が10元(約160円)。「四足は机、空を飛ぶのは飛行機以外」みな食い物にしてきたこの国の人々。ドジョウにカエル、手足を縛られたアヒル、狭いオリに押し込まれたウズラ、水槽の八つ目ウナギぐらいでは驚かないが、数十匹のヘビが絡まりあってうごめく姿には食欲を失う。おまけに狭い路地のそちこちには生ゴミが捨てられ、この世のものとも思えぬ悪臭を放つ。
日本が清潔になり過ぎたのか、中国では「衛生思想」にまで人民を教育できていないのか。ならば昨夜、空港で体験した徹底しすぎるほどの衛生管理体制との差を何で埋めればよいのか。発展途上国といっていいほど、カオスとコスモスが入れ乱れるのが、現代中国の現状に見えた。1日、イタリアのローマ市衛生当局が、中国系住民の密集する地区の中華料理店に衛生検査を行った結果、大部分の店が営業停止処分となったと外電は伝える。さもありなんと思うのはわたしだけではなかろう。巨大国家・中国の抱える課題は多くて深刻なのである。【つづく】
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パブリック・ジャーナリスト 今藤 泰資
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