リッチ・フランクリン戦で敗れるようなことがあれば、かつての同門で不仲が噂されるアンデウソン・シウバが王者に君臨するミドル級転向もありえるヴァンダレイ・シウバ

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ドイツのヴェストファーレン州ケルンのランクセス・アレーナで今週末13日(土・現地時間)に行われるUFC99『THE COMEBACK』。ドイツで行われる同大会だが、米国でPPV中継されることもあり、タイトル戦線に影響を与えるカードが組まれている。

その筆頭がメインのヴァンダレイ・シウバ×リッチ・フランクリンのライトヘビー級だ。豪快なファイトでUFCファンの心を掴んだものの、オクタゴン復帰後の戦績は1勝2敗。特に得意の打撃で、ディフェンス面に脆さが感じられるようになったヴァンダレイ。対して、ミドル級王座陥落と再挑戦失敗を経験してライトヘビー級に戻ったフランクリンは、今年1月にTUFシーズン9のコーチ役を賭けて戦ったダン・ヘンダーソン戦に敗れ、半年ぶりのオクタゴンとなる。

ともに勝てば、タイトル戦線にカムバックを果たすことになるが、敗北を喫した時のことを考えると、復活を賭けるというより、崖っぷち対戦という表現の方がしっくりくるかもしれないほど、両者のポジションは危うくなっている。

キャリア40戦を超えるダメージが蓄積してきた感のあるヴァンダレイだが、明るい材料はシュートボクセ時代の名参謀ハファエル・コルデイロが、彼の陣営に加わったことだろう。

シュートボクセ勢のアグレッシブさの裏には、コルデイロの緻密な技術が存在していた。その彼が再びヴァンダレイをバックアップすることで、フランクリンが苦手とするヒザ攻撃など、ヴァンダレイの攻撃に変化が加わる可能性もある。

また、文字通りUFCにカムバックを果たすのは、ヴァンダレイとともにPRIDE人気を支えたミルコ・クロコップだ。

PRIDE活動停止以前にUFC参戦を決め、07年2月のUFCデビュー戦こそエディ・サンチェスにパウンドの連打で勝利したものの、その後はガブリエル・ナパォンにKO負け、さらにはシーク・カンゴにも判定負けを喫するなど、オクタゴンの水になじめなかったミルコ。その彼が1年9ヶ月にUFCにカムバックを果たす。

この間、日本のリングで2勝1ノーコンテストという戦績で、対戦相手もアリスター・オーフレイム以外は、勝って然りの相手だった。ドイツにはユーゴスラビア紛争の際、移住してきたクロアチア系住民も少なくなく、UFCよりもPRIDE人気が高かった欧州、ドイツ国外からの集客力を持つミルコの人気は絶大なものだと予想される。

肝心なファイトだが、対戦相手のムスタファ・アルトゥルクは、トルコ系の英国人ファイター。通産MMA戦績は6勝4敗、05年ADCC欧州予選優勝というグラップラーで、UFCではチーク・カンゴに敗れている。

打撃に難のあるアルトゥルクを相手に、ミルコが遅れを取ることは想像しがたい。ドイツにはクロアチア系住民と比較にならないほどトルコ系住民がおり、会場ではどれだけアルトゥルクに声援が集まるのか。豪胆に見えて、実はセンシティブなミルコだけに、会場内の空気も微妙に影響を与えることになりそうだ。

そのミルコが復帰するヘビー級では、チーク・カンゴとケイン・バラスケスの対戦に注目したい。密かにUFC戦績7勝2敗を誇るカンゴ。未だにMMAファイターとして、グラウンドワークなど穴が目立つのも事実だが、突出したパワーと打撃の強さで、勝ち星を重ねてきた。

一方、MMA戦績5勝0敗、うちUFCで3勝というバラスケスは、レスリング出身でAKA仕込みの打撃の使い手。次代を担うヘビー級ファイターとして期待されているが、そのバランスの良さで一芸に秀でたカンゴを止めることができるか。まだまだタレント不足のヘビー級戦線だけに、この試合の勝者が大きくステップアップすることは間違いない。

もう一つ、地味に因縁の試合といえるのがマーカス・デイビスとダン・ハーディの一戦だ。米国在住アイルランド系ファイター=デイビスと、英国在住のハーディが、このところインタビューを通して舌戦を繰り返している。