【CINEMAコラム】1万枚の段ボールで建てた"夢の砦"男のロマンここにあり『築城せよ!』
2009年06月09日11時00分 / 提供:日刊サイゾー
タイトルを聞いただけで頭の中にホラ貝が鳴り響きわたり、本編を観ればアドレナリンが体中を駆け巡る。映画『築城せよ!』は、この夏どんな超大作映画よりも熱く、そしてどんなB級映画よりもバカバカしいエンターテイメント快作だと断言しよう。ダム萌え、工場萌え、団地萌えなど巨大建築物を愛でるマニアが近年増殖しているが、日本人ならやっぱり"お城萌え"でしょう! しかも、この映画は戦国時代の武将が現代に甦り、建築学専攻の女子大生と協力し合って、3日間で段ボールのお城を築いてしまうというファンキーなストーリー。萌え×ファンク=かつてない独自のグルーブ感を放っているのだ。
400年前の戦国武将にボディジャック(憑依)された役場職員・石崎を演じているのは、上方歌舞伎界のホープ・片岡愛之助。マイク・ミズノ監督の最後の監督作となったアクション大作『シベリア超特急5』(05)でインディジョーンズばりの大活躍を見せた当代随一の"カブキもの"である。伝統の舞台で培われた所作と面白い企画に単身で飛び込んでいく旺盛なチャレンジ精神で、下手すれば企画倒れになりかねなかったインディペンデント作品に、見事に"カブキもの"パワーを注入。1本の生きた映画へと成立させている。
舞台は愛知県豊田市に実在する猿投(さなげ)町。ご多分に漏れず、この地域も他の地方都市と同じようにシャッター通りと化している。400年前のお殿様が甦って「築城せよ!」と大号令を発し、地元の住民たちは一時的に活気づくものの、お金にならない仕事だとわかると、みんな放り出してしまう。現代人を束ねることができず、一度は挫折するお殿様だが、段ボールハウスで暮らすホームレスの生活を見て、奇天烈なアイデアが浮かんでしまう。そう、"三本の矢"ならぬ、表面・波状の芯・裏面の"三枚の古紙"によって構成された段ボール紙を使ってお城を建てようと。
思い付いたら、即行動に移す。お殿様が建築学を専攻する大学生のナツキ(海老瀬はな)に協力を求め、さらに地元の住民に頭を下げて、段ボールのお城を築き始めるくだりは胸を打つ。お城とはエラい人が住んでいた単なる歴史遺産ではなく、現代人が忘れかけていた夢や希望を具象化した、いわばロマンの結晶体なのだ。
愛知工業大学や地元の協力を得ることで3億円弱の予算で本作を完成させたのは、1973年生まれの古波津陽監督。これが長編第1作ということもあり、築城が始まるまでのテンポは正直まどろっこしい。しかし、それもまた段ボールで城を築くというホームメイド感を醸し出すのに一役買っている。観ている方が思わず「オレも城づくりに参加させろ!」といきり立ってしまうのだ。それすらも計算ずくだったなら、古波津監督は恐るべき知将である。
地元住民たちの理解と協力によって、段ボール製の天守閣は高さ25mの偉容を見せ、思わず客席からも歓声を上げずにはいられなくなる。とりわけ池の水面に映った"さかしま"の天守閣が美しい。古波津監督の「段ボール紙は太陽の光を浴びると黄金色に輝く」というこだわりが花開く瞬間だ。
学生たちを指導しながら段ボールの城を実際に築いたのは、美術監督の磯見俊裕氏。手塚眞監督の『白痴』(99)、石井聰亙監督の『五条霊戦記』(00)、崔洋一監督の『血と肉』(04)、三木聡監督の『インスタント沼』(09)など通好みの作品でクレイジーな世界観を生み出している人物だ。台風シーズンの2008年8〜10月、雨や風、スケジュールと戦いながら築城してみせた。磯見氏は「困難は予測できた。だから引き受けた。現場では自分が考えもしなかったようなことがいろいろ起きるが、その方が背伸びできるもの」と語っている。お金だけでは割り切れない、仕事の面白さを熟知しているベテラン職人ならではの言葉である。
400年前の戦国武将にボディジャック(憑依)された役場職員・石崎を演じているのは、上方歌舞伎界のホープ・片岡愛之助。マイク・ミズノ監督の最後の監督作となったアクション大作『シベリア超特急5』(05)でインディジョーンズばりの大活躍を見せた当代随一の"カブキもの"である。伝統の舞台で培われた所作と面白い企画に単身で飛び込んでいく旺盛なチャレンジ精神で、下手すれば企画倒れになりかねなかったインディペンデント作品に、見事に"カブキもの"パワーを注入。1本の生きた映画へと成立させている。
舞台は愛知県豊田市に実在する猿投(さなげ)町。ご多分に漏れず、この地域も他の地方都市と同じようにシャッター通りと化している。400年前のお殿様が甦って「築城せよ!」と大号令を発し、地元の住民たちは一時的に活気づくものの、お金にならない仕事だとわかると、みんな放り出してしまう。現代人を束ねることができず、一度は挫折するお殿様だが、段ボールハウスで暮らすホームレスの生活を見て、奇天烈なアイデアが浮かんでしまう。そう、"三本の矢"ならぬ、表面・波状の芯・裏面の"三枚の古紙"によって構成された段ボール紙を使ってお城を建てようと。
思い付いたら、即行動に移す。お殿様が建築学を専攻する大学生のナツキ(海老瀬はな)に協力を求め、さらに地元の住民に頭を下げて、段ボールのお城を築き始めるくだりは胸を打つ。お城とはエラい人が住んでいた単なる歴史遺産ではなく、現代人が忘れかけていた夢や希望を具象化した、いわばロマンの結晶体なのだ。
愛知工業大学や地元の協力を得ることで3億円弱の予算で本作を完成させたのは、1973年生まれの古波津陽監督。これが長編第1作ということもあり、築城が始まるまでのテンポは正直まどろっこしい。しかし、それもまた段ボールで城を築くというホームメイド感を醸し出すのに一役買っている。観ている方が思わず「オレも城づくりに参加させろ!」といきり立ってしまうのだ。それすらも計算ずくだったなら、古波津監督は恐るべき知将である。
地元住民たちの理解と協力によって、段ボール製の天守閣は高さ25mの偉容を見せ、思わず客席からも歓声を上げずにはいられなくなる。とりわけ池の水面に映った"さかしま"の天守閣が美しい。古波津監督の「段ボール紙は太陽の光を浴びると黄金色に輝く」というこだわりが花開く瞬間だ。
学生たちを指導しながら段ボールの城を実際に築いたのは、美術監督の磯見俊裕氏。手塚眞監督の『白痴』(99)、石井聰亙監督の『五条霊戦記』(00)、崔洋一監督の『血と肉』(04)、三木聡監督の『インスタント沼』(09)など通好みの作品でクレイジーな世界観を生み出している人物だ。台風シーズンの2008年8〜10月、雨や風、スケジュールと戦いながら築城してみせた。磯見氏は「困難は予測できた。だから引き受けた。現場では自分が考えもしなかったようなことがいろいろ起きるが、その方が背伸びできるもの」と語っている。お金だけでは割り切れない、仕事の面白さを熟知しているベテラン職人ならではの言葉である。
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