主演俳優の麻薬服用疑惑により黒い注目を集めてしまった「アンティーク〜西洋骨董洋菓子店〜」。よしながふみ氏の漫画「西洋骨董洋菓子店」を原作とした韓国映画である。同作品は2001年、日本でもドラマ化されているが、原作とは似て非なる仕上がりにファンの間では賛否両論あった。それに比べてこの映画は原作に忠実と評判が高かっただけに、俳優のプライベートな部分からケチがついてしまったのは非常に残念である。

 財閥の御曹司「橘圭一郎」が経営する洋菓子店「アンティーク」。従業員は橘の高校時代の同級生である天才パティシエ「小野裕介」に、元ボクサーでありながら製菓の才能も持ち合わせている見習いパティシエ「神田エイジ」、母親が橘の実家で住み込み家政婦をしていたギャルソン「小早川千影」の3人である。男4人の洋菓子店を舞台に、さまざまな人物の人生にスポットを当てる群像劇だ。

 設定だけを書き出すとほぼドラマと変わりないように思うが、漫画の記念すべき1話目の1コマ目は、小野が橘に告白するシーンである。小野は天才パティシエであると同時に魔性のゲイであり、その魔性を開花させたのが高校時代に橘にこっぴどくふられた経験なのだ。これを月9で再現するのは確かにきつい。

 小野がゲイであるように、橘、エイジ、千影もそれぞれなにかを抱えている。ストーリーは橘が幼少期に巻き込まれた事件を中心に進んでいき、最終話までに事件の謎はあらかた解かれるものの、その時に受けた橘のトラウマはきれいさっぱり解消されるわけではない。なにかを抱えながらも前を向いて生きなければならない、人間の当たり前の姿を描き出している。

 人間の当たり前の姿を描いているのに、作品自体は平凡どころか出色の出来である。いい男とおいしい洋菓子、女性の心をつかむ巧者であるよしなが氏の手にかかればこの2つの要素だけで作品は成り立つのだ。

 いい男は一見すれば納得であろう。原作はもちろん、ドラマでも、昨年夏に放送されたアニメでも、韓国映画でもいい男(声)がずらりと居並ぶ、この作品の絶対にぶれてはいけない軸である。おいしい洋菓子については映像も悪くはないが、ぜひとも原作をじっくりと読んでほしい。作中にたびたび出てくる橘の洋菓子の解説は珠玉の一言に尽きる。台詞を読むだけでイメージが増幅され、食べたくて食べたくてたまらなくなってしまうのだ。

 洋菓子の解説以外は台詞はけっして多くはなく、ついでに言えばエピソードは時間軸を無視してばらばらに配置されている。全体的に読むというよりはそれこそ味わうという表現がしっくりくる作品だ。それでいて洋菓子については目で活字を追う作業を読者に強いており、その描写の素晴らしさによって強要をも甘美に感じさせている。

 この作品は明らかに女性向けであり男性に太鼓判を押して薦めることはできないが、個人的にはぜひとも男性に読んでもらい、その感想を聞いてみたい。男女の違いについて少しでも理解するいい材料となりそうだ。

(編集部:三浦ヨーコ)


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