中卒で元ニートの23歳女性「クズ子」が「2ちゃんねる」に書いた長編がネット上で感動を呼んでいる。本当にダメな生活を送る「クズ子」が、超人的な「母ちゃん」や周辺の人々に支えられながら立ち直っていく。その姿に、ネットユーザーたちが共感しているようだ。

時給800円のパートから部長にまで上りつめる

   「2ちゃんねる」に「うちの母ちゃん凄いぞ」というスレッドが立ったのは2009年4月16日。「ちょっとお前らに母ちゃんを自慢したかったのでスレ立てた」として、「クズ子」が9歳だった頃から語りを始める。

   高収入だった「オヤジ」がバブル崩壊で借金を抱え、取り立てにおびえる日々が続く。そんな家の混乱に耐えられず、「クズ子」は無意識のうちに自殺未遂をしてしまう。妹は不登校になり、「オヤジ」と「母ちゃん」は離婚。こんな展開に2ちゃんねらーたちも、「怖え」「嫌な予感がしてきた」と、最初は暗い反応だった。

   そんな「葬式みたいな家」で「母ちゃん」は缶工場での仕事と家事を、「子どもを守る、という一心で」朝5時から深夜まで働いて切り盛りする。「寝るよりも出世したい」という頑張りで、時給800円のパートから部長にまで上りつめる姿が丹念に描かれている。その頑張りの理由を「母ちゃん」は「クズ子」にこう表現する。

「例えばそこに水があって、ここは砂漠で、この水を飲まなきゃ死んでしまう。でも水はひとつしかない。そんな時、母ちゃんという生き物は迷わず子供へその水を差しだすんだ」

そんな「母ちゃん」の子どもへの愛と、超人的な働きっぷりに、「とにかくすごい」「かっけぇ…」「俺も母の日になんかしよう」と徐々に2ちゃんねらーたちも心を動かされる。

   「クズ子」は、高校受験に失敗してニートになってしまう。ある時は兄の貯金箱に手をつけ、ある時は「数か月くらい」ひきこもるなど、酷い生活を繰り返す。頑張る「母ちゃん」とのコントラストで、「クズっぷりが見事」「あまりにクズで言葉を失うww」といった書き込みが相次ぐ。

「ゆとり世代」を育てる方法論のひとつ?

   ある日「クズ子」は「母ちゃん」と食べた寿司が「あまりに美味しかった」のをきっかけに、「お寿司食べたいから寿司屋で働いてみよう!」という単純思考でニート脱出を決意する。だが、いざ働き出すと勤務態度もいい加減で、遅刻癖もひどい。彼女を徐々に自立させるのは、「生きてる価値がないと思ったんなら、価値がある人間に変わればいいじゃない」と励まし続ける「母ちゃん」と、厳しくも優しく指導する寿司屋の「トレーナーさん」と同僚たち。ついには正社員となり、店の指揮を任されるまでに成長する。

   一家族の内実を赤裸々に語るストーリーは6スレッドにも及び、「クズ子」の書き込みが終わった09年4月25日には、「毎晩楽しみにしてた!ありがとう!」「こんなに何日も張り付いて見たスレは初めてだよ」「カーチャンに少し優しくなれそうな気がする」「人生が面白いってことを再確認できたよ」などと、思い思いに心を動かされたとする書き込みが相次いだ。

   このスレッドをまとめたサイト「無題のドキュメント」「ワラノート」にも合わせて700件以上のはてなブックマークがついており、好意的なコメントであふれている。「文章うまいなあ。心理描写が素直で的確だなあ」と「クズ子」の文章力を評価する声や、「自分から社会に出て行くのをひたすら「待つ」、そして励ます行程が描き出されている」と、「クズ子」の成長と、それを促す周りの人物の行動に言及するコメントも目立っている。

   一方、こんな見方も出ている。ブログ「ヌルめのつぶやき」は、すぐに折れやすく、やる気もない「クズ子」が寿司屋勤務を継続できたことに注目し、「人が何を動機に行動を起こすのか」に着目したマネジメントは「ゆとり世代」を育てる方法論のひとつなのではないかと分析している。その上で、こう指摘する。

「『使えない』と諦めてしまわず、今だからこそ、『人を育てる』というのがどういう事なのかを、考え直してみてもいいのかもしれない」

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