真っ暗闇の中で見知らぬ人と食事をする「暗闇ごはん」とは?【独女通信】
2009年04月27日14時00分 / 提供:独女通信
もし食事の最中に停電になって、懐中電灯もロウソクも使えないとしよう。真っ暗闇の中で私たちはいつも通りに食事を続けることができるものだろうか?
モノを食べるという行為に味覚はなくてはならないものだが、実は視覚や嗅覚、触覚がいかに重要であるかということを体感するイベントがある。浅草のお寺で毎月1回開催されている「暗闇ごはん」がそれだ。ヨーロッパで人気の「ブラインドレストラン」を日本の食文化に合わせてアレンジしたもので、その名の通り、まっ暗闇の中での食事会。料理の内容は精進料理風だが、出し汁に鰹節や鶏がらを使用しているので完全な精進料理というわけではない。
昨年からずっと行きたいと思っていたが毎回大変な人気で、開催日が決まったとたんに満席になってしまう。今回、たまたまキャンセルが出たというお知らせメールをもらってようやく参加することができた。果たしていったいどんな食事会なのか、暗闇の中で食事をするという経験がないだけに開催の日が待ち遠しくてたまらなかった。
15分ほど前に会場であるお寺に着くと、すでに12人が到着していた。受付を済ませるとかごの中から好きなアイマスクを選んで待合室に。今日は女性客に混じって中年の男性が2人いたが、主催者によると「いつもはもっと男性が多いんですよ」とのことだ。
全員が揃うと食事会の流れについて説明があり、アイマスクを着けた状態で一人ずつ手を引かれて別の部屋に通される。会場となる部屋は隅のほうにロウソクが2本灯されているだけらしい。
自分がどのくらいの大きさの部屋のどの場所に座っているのか、また目の前に誰がいるのか皆目わからない。どこからともなく参加者の話し声が聞こえてくるのだが、意識を集中しないとその方向さえもあいまいだ。料理以前の段階で、視覚を奪われた身の心もとなさを痛感した。
じゃんけんゲームや自己紹介をして参加者の緊張がほぐれた後、最初の料理が運ばれてきた。器が全員の前に並べられると、スタッフから、「いま運ばれた器には2種類の食べ物が入っています。柔らかいのでお箸よりスプーンのほうが食べやすいと思います」という説明があった。手探りで器を探していると、前に座っている人の手を握ってしまってお互い大笑い。
「テーブルの幅は狭いので、間違えて他の人の料理を食べないでくださいね。いままでに何人かいらっしゃいましたよ」とスタッフの女性。
ようやく自分の器を手に持ち、まずは嗅覚に頼ってみる。なんとなく青臭い。次に箸で食べ物をつまもうとするが、料理が器のどのあたりに乗っているのかわからないのでなかなかつまめないのだ。この際、行儀の悪さには目を瞑ってもらうとして、手づかみで食べた。感触はババロアに近いが味はというと検討もつかない。
そのうちあちこちから、「あ、これグリーンピースよね」、「枝豆じゃないかしら?」、「私はブロッコリーだと思うけど・・・」という声が聞こえてくる。参加者のほとんどが初対面で、しかも自分の隣や前に座っている人の顔もわからないのに、暗闇の食卓には和やかな話し声と笑い声が飛び交っている。これは予想外の展開だ。
次々と運ばれる料理は全部で8品。どれも素材を活かした薄味でシンプルな調理法だ。料理が運ばれるたびに使われている素材についてスタッフからヒントが出されるにもかかわらず、恥ずかしながら「この歯ごたえと味は記憶にあるんだけど、何だっけ?」状態。
暗闇での食事が終わると出されたのと同じ料理が並べられ、このお寺の副住職で料理僧の青江覚峰さんから一品ずつ素材と調理法についての解説があった。
「な〜んだ、さっきのはあの野菜だったのね」と思わず膝を打つ人もいて、私たちは日ごろ、色や形からその食材を判断していることが多いと気づかされた。
「完全に視覚を奪われた中で、残された嗅覚、味覚、聴覚、触覚をフル回転させるためには、ものを食べるという行為が大いに効果的です。お寺という非日常の空間で、顔の見えない相手とひとつの食卓を共にすることでも、この“暗闇ごはん”は人間の想像力を多分に刺激します」と青江さん。
たしかに食べることにこんなに意識を集中したのは初めての経験だった。まさに、“カラダ全体を使って食べた”という気がする。
非日常のお寺で非日常の体験ができる「暗闇ごはん」は、食というものを根底から見つめ直すには格好のイベントだ。食に関心の高い人はぜひ一度体験してみてほしい。(オフィスエムツー/柚原かおる)
■関連リンク
・暗闇ごはん
モノを食べるという行為に味覚はなくてはならないものだが、実は視覚や嗅覚、触覚がいかに重要であるかということを体感するイベントがある。浅草のお寺で毎月1回開催されている「暗闇ごはん」がそれだ。ヨーロッパで人気の「ブラインドレストラン」を日本の食文化に合わせてアレンジしたもので、その名の通り、まっ暗闇の中での食事会。料理の内容は精進料理風だが、出し汁に鰹節や鶏がらを使用しているので完全な精進料理というわけではない。
昨年からずっと行きたいと思っていたが毎回大変な人気で、開催日が決まったとたんに満席になってしまう。今回、たまたまキャンセルが出たというお知らせメールをもらってようやく参加することができた。果たしていったいどんな食事会なのか、暗闇の中で食事をするという経験がないだけに開催の日が待ち遠しくてたまらなかった。
15分ほど前に会場であるお寺に着くと、すでに12人が到着していた。受付を済ませるとかごの中から好きなアイマスクを選んで待合室に。今日は女性客に混じって中年の男性が2人いたが、主催者によると「いつもはもっと男性が多いんですよ」とのことだ。
全員が揃うと食事会の流れについて説明があり、アイマスクを着けた状態で一人ずつ手を引かれて別の部屋に通される。会場となる部屋は隅のほうにロウソクが2本灯されているだけらしい。
自分がどのくらいの大きさの部屋のどの場所に座っているのか、また目の前に誰がいるのか皆目わからない。どこからともなく参加者の話し声が聞こえてくるのだが、意識を集中しないとその方向さえもあいまいだ。料理以前の段階で、視覚を奪われた身の心もとなさを痛感した。
じゃんけんゲームや自己紹介をして参加者の緊張がほぐれた後、最初の料理が運ばれてきた。器が全員の前に並べられると、スタッフから、「いま運ばれた器には2種類の食べ物が入っています。柔らかいのでお箸よりスプーンのほうが食べやすいと思います」という説明があった。手探りで器を探していると、前に座っている人の手を握ってしまってお互い大笑い。
「テーブルの幅は狭いので、間違えて他の人の料理を食べないでくださいね。いままでに何人かいらっしゃいましたよ」とスタッフの女性。
ようやく自分の器を手に持ち、まずは嗅覚に頼ってみる。なんとなく青臭い。次に箸で食べ物をつまもうとするが、料理が器のどのあたりに乗っているのかわからないのでなかなかつまめないのだ。この際、行儀の悪さには目を瞑ってもらうとして、手づかみで食べた。感触はババロアに近いが味はというと検討もつかない。
そのうちあちこちから、「あ、これグリーンピースよね」、「枝豆じゃないかしら?」、「私はブロッコリーだと思うけど・・・」という声が聞こえてくる。参加者のほとんどが初対面で、しかも自分の隣や前に座っている人の顔もわからないのに、暗闇の食卓には和やかな話し声と笑い声が飛び交っている。これは予想外の展開だ。
次々と運ばれる料理は全部で8品。どれも素材を活かした薄味でシンプルな調理法だ。料理が運ばれるたびに使われている素材についてスタッフからヒントが出されるにもかかわらず、恥ずかしながら「この歯ごたえと味は記憶にあるんだけど、何だっけ?」状態。
暗闇での食事が終わると出されたのと同じ料理が並べられ、このお寺の副住職で料理僧の青江覚峰さんから一品ずつ素材と調理法についての解説があった。
「な〜んだ、さっきのはあの野菜だったのね」と思わず膝を打つ人もいて、私たちは日ごろ、色や形からその食材を判断していることが多いと気づかされた。
「完全に視覚を奪われた中で、残された嗅覚、味覚、聴覚、触覚をフル回転させるためには、ものを食べるという行為が大いに効果的です。お寺という非日常の空間で、顔の見えない相手とひとつの食卓を共にすることでも、この“暗闇ごはん”は人間の想像力を多分に刺激します」と青江さん。
たしかに食べることにこんなに意識を集中したのは初めての経験だった。まさに、“カラダ全体を使って食べた”という気がする。
非日常のお寺で非日常の体験ができる「暗闇ごはん」は、食というものを根底から見つめ直すには格好のイベントだ。食に関心の高い人はぜひ一度体験してみてほしい。(オフィスエムツー/柚原かおる)
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