極貧少女「牧野つくし」と世界有数のボンボン「道明寺司」の恋をつづった漫画「花より男子」。身分の違いゆえのさまざまな障害を乗り越え、ひたすらに相手を想うふたりに多くの読者が夢中になった。

 はじめに火がついたのは道明寺。誰もがかしずく立場であるはずの自分を平然と足蹴にするつくしの姿に、幼い頃から慕ってきた姉「椿」の姿を見た。しかし恋愛経験のほとんどない道明寺はつくしの気持ちをはかることができない。子供がおもちゃを欲しがるように、わがままな愛情をふりかざすだけだ。

 ドラマで松本潤が演じた道明寺は、俺様キャラならではのかっこよさを持っていた。が、原作漫画の、特に前半部分の道明寺はひどい。俺様も俺様、思い通りにならなければつくしにすら手をあげるのは当たり前で、まるで図体のでかい小学生である。しかしその小学生が時折見せる想いのまっすぐさに、ついつい胸が熱くなってしまうのだ。つくしも同様の思いだったのであろう。

 愛と金、どちらが大切か。花男ではこの恋愛における永遠のテーマはなんの意味もなさない。最終的につくしは道明寺を手に入れたことでどちらも満たされることになるのだから。しかしふと思う。道明寺が資産家の息子でなければ、ふたりの間に恋は生まれたであろうかと。そして私の出す答えは、否、である。

 つくしは金に目がくらんで道明寺に恋をしたのではない。彼女は何度となく道明寺が申し出た援助を断っているし、やむを得ず金を受け取った場合はなんらかの対価を払っている。しかし、つくしが恋した道明寺は、資産家の息子でなければあり得なかった強烈な個性を有しているのだ。

 常に自らを中心に置き、周囲の者をふり回す力。これこそが道明寺の魅力であり、つくしも惹かれた部分であろう。この力は生まれもっての環境によって培われたものにほかならない。もしも道明寺が中流家庭の息子であったならば、平々凡々とした顔がいいだけの男になっていた可能性は高い。そんな男につくしが興味を持つとは、私にはとても思えないのだ。

 そして道明寺の母「楓」により用意された数々の障害。楓は将来の道明寺家を背負って立つ息子につくしはふさわしくないと考え、あの手この手でふたりの仲を引き裂こうとする。自分が選んだ婚約者とつくしを引き合わせ、つくしの友人の家庭を崩壊させようとし、つくしの両親に手切れ金を持って別れるよう迫る。しかしそのたびにつくしは“雑草パワー”で立ち向かい、道明寺との絆を確固たるものにしていく。

 童話のシンデレラは王子に見初められてハッピーエンドを迎えた。魔法により美しくなった、ただそれだけのことで。しかしつくしはそうではない。自分の力で戦って未来を切り開いていくのだ。

 ドラマで花男を知った人は意外に思うかもしれないが、原作漫画ではつくしが道明寺との怒涛の恋に身を投じるまでに非常に長い年月がかけられている。それまでは道明寺とその親友「花沢類」との間で揺れ動いたり、道明寺に対して嫌いではないが素直になれないという少女漫画らしい葛藤の描写が中心だ。そんな時期を経て堰を切ったように走り出すつくしの背中に、読者は心からのエールを送る。そうしてやがて来るであろうハッピーエンドに、自らの恋の思い出と憧れとを重ね合わせるのだ。

(編集部:三浦ヨーコ)


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