3月31日、湖北省武漢のアニメ制作会社を視察した中国の温家宝首相が「私の孫が見る番組は『ウルトラマン』ばかり。もっと中国アニメを見るべき」と発言。これをきっかけにネットで“ウルトラマンたたき”が始まったと現地メディアが報じたのは、記憶に新しいところだ。このニュースは日本にも伝えられ話題を呼んだが、温首相の発言からは、中国がアニメ産業に力を注いでいる事実と、中国国内で国産アニメがなかなか浸透しない現実が垣間見える。

中国が本格的にアニメ・マンガ産業の育成に乗り出したのは、2006年4月のことだ。中国国務院が「関于推動我国動漫産業発展的若干意見」を公布し、国家としてアニメ・マンガ産業の支援を決定。そして、5〜10年の間にアニメ・マンガ産業によってGDPを1%増加させるという目標を打ち立てている。

政策として認められれば、さすが中国とでも言おうか、アクションは速かった。その5か月後の9月には、国産アニメの保護・発展を目的に、ゴールデンタイムの海外産アニメの放映が禁止となる。それは、海外と共同制作したアニメにも放映許可を必要とする厳しい内容となった。翌年、2007年5月には放映禁止枠がさらに拡大。17時から20時までとされていた放映禁止時間が21時まで延長された。また、中国各地にアニメ・マンガ産業発展基地が設立され、独自の知的財産権を持つアニメ・マンガ作品が数多く制作されるようになる。結果として、2007年の1年間に中国国内で制作されたアニメ作品は前年比23%増の10万1900分以上と、大きな結果を導いた。

しかし、ただ単純に作品数が増えるだけで満足するほど中国は“甘くない”ようだ。中国政府は今、日本やアメリカのアニメ・マンガに対抗できるような「ブランド力」を国産作品に求めている。いくら海外アニメを規制しようとも、現在の中国に「海賊版の横行」という問題が根付いている限り、海外アニメに占拠されている市場を獲得することはほぼ不可能だからだ。先の温首相の発言も、「ウルトラマンに対抗できる作品を作れ」という叱咤激励の意味が込められているのかもしれない。

とは言え、中国国産アニメが中国国内でまったく見向きもされていないかと言えば、そうでもない。今年1月16日に公開された中国国産アニメ「喜羊羊与灰太狼」(上海映画グループ)は、興行収入が約6000万元にも達した。その数日後に公開された「淘気包馬小跳」(中影アニメ)も「喜羊羊与灰太狼」ほどではないが、興行的に成功を収めている。同時期に公開されたアメリカの「マダガスカル2」や「ボルト」が上記2作品のようにヒットしなかったことを考慮すると、少しずつではあるが中国国産アニメに明るい兆しが見えてきたと言えよう。

2008年、中国で制作されたアニメ番組は前年比129本増の324本となり、アニメ・マンガ全体の市場規模は250億元に達した。また、中国には現在、約3.67億人の未成年者がいるとされており、今後のアニメ・マンガ産業発展の舞台としては好条件である。

日本の「オタク」たちから評価される中国産アニメ・マンガ作品。いつしかそんな作品が現れるかもしれない。